児童労働

専門家に聞く:全加盟国による最悪の形態の児童労働からの子どもの保護

 2020年8月4日、ILOの歴史上初めてのこととして全ての加盟国が批准する条約が誕生しました。187の全加盟国による「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」の批准は、全ての子どもに最悪の形態の児童労働に対する法的保護が適用されたことを意味します。児童労働撤廃国際年である2021年を前にILOの専門家ベラ・パケッチ=ペルヂゴンに児童労働とこの条約について尋ねました。

 2020年に2億4,600万人を数えた世界の児童労働者数が2016年には1億5,200万人に減少するなど、児童労働の問題については、過去20年間で多大な進展が見られました。しかしながら、この数はまだ非常に大きく、とりわけ全体の半分が最悪の形態の児童労働と定義される危険有害労働に従事しています。その上、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行がこの歩みを止めるか悪くすると逆転させる恐れがあります。子ども世代が危機に瀕しているのです。この重要な瞬間において、2025年までにあらゆる形態の児童労働に終止符を打つことを目指す持続可能な開発目標(SDG)のターゲット8.7の達成に向けたものを中心に、取り組みを倍加させる必要があります。この危機の間に子どもを守り、この状況について長く残る改善を達成するには、政策の選択が重要です。全ての子どもに無償教育の機会を開くこと、子どもを保護する仕組み、そして親や就労年齢に達した若者にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を確保することが、歩みを加速し、将来の危機に対抗する力を強める上でカギを握る要素であると言えます。

 「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」の全加盟国による批准は、私たちの社会に最悪の形態の児童労働の居場所がないという地球規模の合意を示すものです。これによって今や全ての子どもに最悪の形態の児童労働に対する法的保護が及びました。第182号条約は子どもの権利を守る国際法枠組みにおける重要なギャップを埋めるものです。しかし、これで問題が解決したわけではなく、そのためには世界中至る所で条約が完全に実施されることが必要です。

 最悪の形態の児童労働とは、子どもを身体的な危険や生涯残る可能性がある深い精神的なトラウマにさらすような児童労働のことを指しています。これには奴隷労働や類似の慣行、児童売春やポルノ製造、薬物取引などの違法な活動に子どもを利用すること、そして子どもの健康、安全、道徳を害する可能性が高い危険有害労働が含まれています。

 条約の批准は法律上及び実際に児童労働に取り組む活動を始動させます。批准国は国内の法や政策を条約規定に沿ったものにすることを公約します。少女に特に焦点を当てて最悪の形態の児童労働を防止し、子どもを児童労働から引き離し、必要なリハビリテーションとケアを提供する期限付きの措置を即座に講じることを約束するものです。この条約と就労の最低年齢に関する第138号条約を批准した多くの国で、政府の一丸となっての対応を動員するような児童労働に関する国内行動計画の策定に至りました。第182号条約が採択されてからの20年間で児童労働は4割近く減り、子どもを児童労働から守る法や事業計画が世界中で強化されました。

 SDGのターゲット8.7は国内外を通じた協働によって初めて達成できる野心的な目標です。8.7連合のようなパートナーシップは知識や経験、革新的な取り組みの共有を通じてこの目標に向けた諸国の歩みを推進する助けになっています。国連が2021年を児童労働撤廃国際年に宣言したことも児童労働に対する世界的な運動を強化し、第182号条約の全加盟国による批准によって示された公約を守る機会を提供します。2022年に南アフリカで開かれる予定の第5回児童労働撤廃世界会議は歩みを検証し、2025年までに児童労働のない世界を達成するためにまだ何が必要かを特定し、この目標を実現するために必要なあらゆる資金・資源の動員を図るもう一つの里程標となることでしょう。


 以上は2020年12月23日付の英文広報記事の抄訳です。