統計局ブログ記事:国際障害者デー

労働市場における結果に対する障害の影響

 障害者は世界人口の15%を占めていますが、世界中どの労働市場でもその割合を代表する姿は見られません。

ILO統計局バレンチナ・ストエフスカ上級統計官

 2006年12月に国連総会で採択された障害者権利条約は、労働及び雇用に関する第27条で「障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有すること」を定めています。これは障害者もそうでない人も雇用機会、報酬、労働者の権利の点で同じ機会を享受すべきことを意味します。2015年12月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」も、障害者をエンパワーメントが必要な脆弱な集団の一つに挙げています。アジェンダに含まれる持続可能な開発目標(SDGs)は労働市場に関連した複数の目標とそれに関連した指標において明確に障害に言及しています。

 このように仕事の世界において障害者の問題に相当の注意が払われているにも関わらず、障害者にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と生産的な完全雇用の目標が達成されるには、まだ多くのことが残されています。

 世界人口の15%を占めるとされる障害者は、全体として、そうでない人よりも労働力に参加する可能性は低く、失業率は高く、就業率は低くなる傾向があります。さらに、経済的な安定と社会給付を提供する雇用労働に就く割合も低くなっています。労働者を支え、その労働市場への関与を促進する、より障害に優しい政策が必要とされているのは明白です。

 障害者は労働力に参加する可能性が低く、生産年齢にある障害者の約3分の2が労働市場に参加していません。

図:障害の有無で見た非労働力率

出典:ILOSTAT。英語原文記事では、このグラフのデータと国名を見ることができます。データのダウンロードも可能です。

 データが得られる国のほぼ3分の2で、障害者の失業率はそうでない人々の失業率より高くなっています。ほとんどの先進国で失業率は障害者の方がそうでない人々より高く、多くの途上国ではその逆になっているのは、途上国では障害関連給付そしてより一般的に最低限の社会的保護がないか不十分であることから、多くの場合、障害者は端的に言って働かないでいる余裕がない可能性があります。

図:障害の有無で見た失業率

出典:ILOSTAT。英語原文記事では、このグラフのデータと国名を見ることができます。データのダウンロードも可能です。

 働いている障害者は平均で3人に1人に過ぎません。重要なこととして、その就業率は障害のない人の2分の1になっています。

障害の有無で見た就業率(%)

国名(年) 障害者 非障害者
サモア (2017) 8 38
パレスチナ被占領地 (2019) 11 34
ラオス (2017) 11 37
セーシェル (2019) 12 67
レバノン (2019) 12 45
トンガ(2018) 13 46
ザンビア (2018) 13 30
インドネシア(2019) 13 67
ミャンマー (2015) 14 65
ポーランド (2019) 14 58
エジプト (2018) 14 40
ルワンダ (2019) 16 45
セネガル (2015) 18 43
米国 (2019) 19 66
モンゴル (2019) 21 57
イラク (2012) 21 38
コスタリカ (2019) 21 55
イスラエル (2017) 22 67
バルバドス (2016) 25 54
キリバス (2015) 25 40
ジンバブエ (2019) 25 38
ナイジェリア (2013) 27 54
ガンビア (2018) 27 34
アフガニスタン (2017) 28 43
アルメニア (2018) 28 49
エスワティニ (2016) 31 41
ボリビア (2019) 31 69
ボツワナ (2019) 32 49
チリ (2017) 33 58
英国 (2019) 34 69
コートジボワール(2017) 34 55
ガーナ (2017) 36 55
フィジー (2016) 37 57
タンザニア(2014) 38 83
スリナム (2016) 40 53
バヌアツ (2009) 41 66
パプアニューギニア (2010) 42 48
ウガンダ (2017) 42 45
ペルー (2019) 47 76
カンボジア (2014) 49 81
トーゴ (2011) 49 77
シエラレオネ (2014) 50 55
スリランカ (2018) 50 データなし
エチオピア (2013) 54 81
リベリア (2010) 55 56
東チモール (2016) 64 64
カメルーン (2007) 68 80
出典:ILOSTAT。英語原文記事では、この表を図で見ることができます。データのダウンロードも可能です。

 

 得られる統計からは、障害者はそうでない人々よりも個人事業主や家族の事業を手伝う寄与的家族従業者といった自営形態で働く可能性が高いことが示されています。多くの国で、これは雇用労働を見つける機会が不足していることを反映しています。

障害の有無で見た就業者に占める雇用者の割合

国名(年) 障害者(%) 非障害者(%) 差違(ポイント)
タンザニア (2014) 7 13 6
エチオピア (2013) 8 12 3
シエラレオネ (2014) 9 11 1
バヌアツ (2009) 11 27 16
東チモール (2016) 13 28 15
トーゴ (2011) 17 20 3
カメルーン (2007) 17 18 2
リベリア (2010) 17 18 1
パプアニューギニア (2010) 17 19 2
コートジボワール (2017) 18 23 5
アフガニスタン (2017) 18 17 -1
ボリビア (2019) 20 36 16
ガーナ (2017) 22 34 12
カンボジア (2014) 24 44 20
ウガンダ (2017) 25 36 12
セネガル (2015) 26 33 8
ペルー (2019) 26 47 21
インドネシア(2019) 28 48 20
キリバス(2015) 37 57 20
モンゴル (2019) 40 60 20
フィジー (2016) 43 65 23
ガンビア (2018) 44 48 5
ミャンマー (2015) 44 38 -6
レバノン (2019) 45 71 26
ジンバブエ (2019) 46 50 4
アルメニア (2018) 49 59 10
エスワティニ (2016) 51 64 13
トンガ (2018) 52 56 4
イラク (2012) 60 70 10
コスタリカ (2019) 62 76 14
パレスチナ被占領地 (2019) 64 72 7
ルワンダ (2019) 64 67 3
エジプト(2018) 65 69 3
チリ (2017) 67 77 10
ボツワナ (2019) 68 75 7
スリナム (2016) 73 74 1
バルバドス (2016) 80 80 0
英国 (2019) 83 85 2
セーシェル (2019) 83 86 3
イスラエル (2017) 84 88 3
ポーランド (2019) 86 79 -6
米国 (2019) 90 94 4
出典:ILOSTAT。英語原文記事では、この表を図で見ることができます。データのダウンロードも可能です。

 

 データが得られる10カ国のサンプルデータからは、障害を有する就労者の平均教育水準はそうでない人々よりも低く、最終学歴が初等教育未満の人々が2倍になっています。このように小さなサンプルから信頼のおける全世界的な推定値を得ることはできませんが、この事実は障害者が一般に、生涯の早い段階における教育に対する障壁を含み、様々な障壁に直面していることを反映しています。先天的障害者や子ども時代に障害者となった人々の場合、特にそう言えます。

 障害を有する若者を教育の主流に組み込む適切な措置が講じられなかった場合、他の障壁と共にその後の労働市場における成果に相当の影響があります。

障害の有無で見た最終学歴が初等教育未満の就業者の割合(%)

国名(年) 障害者 非障害者
バングラデシュ(2011) 73 48
タンザニア(2012) 69 31
インドネシア(2010) 61 15
ザンビア(2010) 58 29
メキシコ(2010) 56 18
ケニア(2009) 56 30
ガーナ(2010) 53 37
パナマ(2010) 45 14
南アフリカ(2011) 42 15
ウルグアイ(2011) 39 10
出典:家計調査データをもとに著者が計算。英語原文記事では、この表を図で見ることができます。

 

 調査対象国の全てで女性障害者の就業率は障害のない男性のみならず、障害のない女性や男性障害者の就業率よりも低くなっています。これは世界中の労働市場における、なかなか解消されない男女間格差の存在を確認させるものです。

障害の有無で見た男女別就業率(%)

国名 (年) 女性障害者 男性障害者 女性非障害者 男性非障害者
パレスチナ被占領地 (2019) 2 18 11 56
イラク (2012) 4 33 11 68
レバノン (2019) 5 21 26 65
エジプト (2018) 5 21 15 65
インドネシア (2019) 9 18 53 80
ミャンマー (2015) 10 18 52 81
アフガニスタン (2017) 11 44 19 67
ザンビア (2018) 11 14 22 38
ポーランド (2019) 13 14 50 67
セーシェル (2019) 14 データなし 65 70
ルワンダ (2019) 14 19 37 53
コスタリカ (2019) 14 29 42 69
セネガル (2015) 15 20 33 55
ガンビア (2018) 16 36 23 46
米国 (2019) 17 23 61 72
モンゴル (2019) 18 24 51 64
イスラエル (2017) 18 25 62 73
ジンバブエ (2019) 20 33 31 47
キリバス (2015) 21 29 32 48
フィジー (2016) 22 51 38 77
バルバドス (2016) 23 26 51 57
アルメニア (2018) 23 33 39 61
ボリビア (2019) 26 37 59 79
チリ (2017) 26 42 48 70
コートジボワール (2017) 27 40 45 64
ナイジェリア (2013) 28 25 50 57
ボツワナ (2019) 29 37 46 52
エスワティニ (2016) 29 34 37 46
スリランカ (2018) 31 71 データなし データなし
タンザニア (2014) 31 47 79 87
スリナム (2016) 33 51 42 65
英国 (2019) 34 35 65 73
バヌアツ (2009) 35 46 57 75
ウガンダ (2017) 36 50 37 53
ガーナ (2017) 38 34 53 57
カンボジア (2014) 39 60 76 87
トーゴ (2011) 39 57 76 79
ペルー (2019) 41 53 69 84
パプアニューギニア (2010) 43 41 48 48
エチオピア (2013) 44 63 73 88
シエラレオネ (2014) 45 55 55 54
リベリア (2010) 48 62 54 59
東チモール (2016) 53 72 58 70
カメルーン (2007) 64 71 76 84
出典:ILOSTAT。英語原文記事では、この表を図で見ることができます。データのダウンロードも可能です。

 

 障害者率は国によって異なりますが、この多くが、障害を測定する際に用いられる定義が相当に異なることに起因しています。2004年に出されたILO統計局の刊行物『Statistics on the employment situation of people with disabilities: A compendium of national methodologies (障害者の就労状況統計:各国方法論概説集・英語)』では各国の定義が概説されています。

 障害者に関するデータの入手可能性と比較可能性の向上はSDGsに向けた各国の進捗状況や障害者権利条約に基づく義務の遵守度合いのモニタリングを円滑化すると思われますが、ILOはこのために労働力調査及び雇用に関するモジュールを特に大きく扱うその他の世帯調査において障害に関するワシントン・グループの質問を用いることを促進しています。

 しかしながら、労働市場における障害者とそうでない人々の特徴を比較するだけでは不十分です。結果指標の内訳を示すことはこの二つの集団の労働市場における経験の差異を特定する助けにはなりますが、この障壁及び格差を推進するその他の要素を明らかにするために必要な情報が提供されるわけではありません。このような情報こそ、労働市場における結果の格差是正を目指した政策設計に必要不可欠です。したがって、ILOは障害統計に関するワシントン・グループと協同で、障害者が労働市場で直面し、他の人々との平等を基礎として参加するのを妨げる様々な種類の障壁に関するデータの収集に用い得る労働力調査モジュールを開発しました。このような情報の分析は障害者を支える各国の政策や介入活動の設計、実施、見直しに相当に寄与する可能性があると考えられます。

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 以上はILO統計局のバレンチナ・ストエフスカ上級統計官による国際障害者デーの2020年12月3日付の英文投稿記事の抄訳です。ILOの労働統計データベースILOSTATには、データそのものに加え、データ生成に携わる人々向けの資料やイベント案内、ニュースレター、解説資料、ブログ記事なども掲載されています。