アジア太平洋の衣料品部門

衣料品産業に対する新型コロナウイルスの影響が女性に与えている深刻な打撃を示す新着資料

記者発表 | 2020/11/20
資料の内容を1分弱で紹介(英語・41秒)

 アジア太平洋地域の衣料品産業の就業者は世界全体の75%に当たる6,500万人(2019年)に上ると推定されます。ILOが10月に発表した調査研究結果は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を理由としてアジアの衣料品輸出国からの主な輸入国の購入額は2020年前半に最大7割減となり、労働者の一時的あるいは完全な解雇が急増し、営業を再開した工場でも人員を減らして操業している場合が多いことを明らかにしましたが、この度出された概況資料は、新型コロナウイルスがこの産業で働く女性に与える影響がますます悪くなっており、これは差別やハラスメント、女性の声の代表性の低さ、賃金格差、無償のケアや家庭内の義務の不均等な分担といった根底にある課題に由来していると指摘しています。

 新型コロナウイルスの現実が性によって異なることについての啓発と衣料品産業の男女労働者に対するコロナ禍の影響の概要を示すことを目的としてまとめられた『Gendered impacts of COVID-19 on the garment sector(衣料品産業に対する新型コロナウイルスの影響の性による違い・英語)』と題する概況資料は、女性労働者に対する危機の短・中・長期的影響に光を当てた上で、より公平で強靱な産業の構築と男女平等の促進を手助けするような一連の提案を示しています。これには、◇実際の事業の閉鎖や縮小により強く焦点を当てるのみならず、工場が操業を再開した時に女性が仕事に復帰できるよう女性が不均衡に重く担っている無償のケア義務に対処すること、◇コロナ禍への取り組みは職場、自宅、地域社会でウイルスが男女それぞれに与えている特有の影響を考慮に入れるべきこと、◇新型コロナウイルスが性差に基づく暴力の危険を高めていることを示すデータが得られるようになってきていることから、職場における暴力・ハラスメント対策を強化することの重要性、◇公正かつ完全なコロナ禍からの回復を確保するカギを握ると見られる対話及び意思決定における女性の発言力、代表性、リーダーシップを確保する必要性、などが含まれています。

 ILOアジア太平洋総局のジョニー・シンプソン上級ジェンダー専門官は、衣料品産業就業者の8割近くを女性が占める以上、女性が最初からコロナ禍の様々な影響を激しく受けているのは当然であるものの、女性はまた、職場で直面している従来からの課題や自宅における女性の義務に関する期待を理由として追加的な影響も経験していると指摘しています。ベターワーク(より良い仕事)計画のジェシカ・ワン・ジェンダー専門官も、「政府、企業その他の利害関係者が男女両方の労働者に対するコロナ禍の多次元的な影響を理解し、性差に対応したスマートで持続可能な回復を可能にするような政策を設計することが決定的に重要」と指摘し、そうしなかったとしたら、「新型コロナウイルス危機は以前からあった不平等を悪化させる恐れがあり、衣料品産業の社会的・経済的持続可能性が妨げられるでしょう」との見通しを示しています。

 本書はスウェーデン国際開発協力庁(SIDA)の任意資金協力を得てILOが実施している「アジアの衣料品サプライチェーン(供給網)におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)プロジェクト」、そしてILOが国際金融公社(IFC)と共同で実施しているベターワーク計画によってまとめられた資料です。


 以上はILOアジア太平洋総局によるバンコク発英文記者発表の抄訳です。