デジタル経済と障害者

ILO/ONCE財団新刊:新型コロナウイルス後のデジタル経済は障害者を包摂したものに

記者発表 | 2021/02/11

 ILOのビジネスと障害グローバル・ネットワークは2019年に『Making the future of work inclusive of people with disabilities(障害者を包摂した仕事の未来へ・英語)』と題する報告書を発表し、同年開かれたネットワークの仕事の未来に関する会合に提出し、障害者などの不利な立場の集団が仕事の世界で進行中の大きな変容から利益を得るためには、「新たな行程表が必要」と訴えましたが、この度これを土台としてまとめた新刊書を発表し、新型コロナウイルス(COVID-19)後の仕事の世界が障害者を包摂したものとなるよう確保するための活動を提案しています。

 前回同様、ビジネスと障害グローバル・ネットワークが欧州社会基金の共同資金によって展開されている「持続可能な成長と社会革新のための欧州障害中枢」事業の枠内で、同事業を率いるスペイン視覚障害者全国組織(ONCE)によって設立された「障害者の社会的包摂と協力のための財団(ONCE財団)」と共同で制作した新刊書は、新型コロナウイルスの世界的大流行によって大幅に加速されたデジタル経済における歩みは世界全体で10億人以上を数える障害者にとって、より包摂的な仕事の世界を構築する前代未聞の機会を形成している一方で、対象を定めた実効性のあるイニシアチブで対策を講じない限り、デジタルの壁が既に存在している不平等や排除をさらに悪化させる危険性があるとも指摘しています。

 『An inclusive digital economy for people with disabilities(障害者を包摂したデジタル経済・英語)』と題する新刊書は、新たな雇用の創出、現在の役割や就労モデルの変化、インターネットを通じた人材募集・採用のプロセスに対するデジタル革命の影響といった事項を取り上げると共に、デジタル産業、学界、政府、労使、障害者自身といった様々な利害関係者集団毎に取るべき主な行動分野に光を当てています。さらに、障害者にとって、より包摂的なデジタル労働市場を形成するための三つの主な梃子として、アクセス可能性の確保、デジタル・スキルの養成、デジタル雇用の促進を挙げています。

 デジタル労働の増加は必要な技能や機材をもたない人々には厳しい問題を形成しています。依然としてみられる排除のために、障害者は一般にそれ以外の人々よりも教育・訓練の水準が低く、したがって、報告書は、包摂的な仕事の未来を構築するカギを握るものとして、デジタル雇用を育み、関連する利害関係者間の共同活動を支援するイニシアチブと共に技能再形成や技能向上を挙げています。支援技術(AT)もまた、新たな職業や機会を開く可能性がありますが、障害者は支援技術なしには多くの必要不可欠なデジタル・ツールを利用できないため、アクセスできる支援技術の欠如は、新たな障壁を構成する可能性があると報告書は警鐘を鳴らしています。

 マヌエラ・トメイILO労働条件・平等局長は、新型コロナウイルスの世界的大流行がデジタル経済の拡大など、仕事の世界に既に存在していた趨勢を加速させたことを挙げ、「障害者の才能や技能が世界中の職場や社会の成功に寄与できるよう包摂的な仕事の未来を支えるような方向にこの動向を確実に導く必要があります」と説いています。

 ONCE財団が属するONCEソーシャル・グループのフェルナンド・リアニョ機関渉外・社会的責任部長は、「誰も置き去りにしないためには、コロナ禍によって加速した、私たちが現在生きている技術革命が障害者の障壁になるのを防ぐためにも、障害者を包摂するような設計を確保する必要があります」と強調しています。

 ますますデジタル化する仕事の世界が障害者に与えている影響の形について人々の意識を高め、より包摂的な仕事の未来を形作る方法を特定することを目的とする報告書は、2021年2月10日に開かれたゼロ・プロジェクトの会合で発表されました。ゼロ・プロジェクトは障害問題に特化した世界最大の年次会合ですが、今年は「雇用と情報通信技術(ICT)」のテーマの下、バーチャル形式で開かれました。

 5章構成の本書は第1章で障害者を巡る現状、第2章で仕事の世界のデジタル化の趨勢をまとめた上で、第3章でこの趨勢が障害者の仕事の世界にとって持つ意味を記した後、第4章で障害者のデジタル包摂に向かう道を示し、第5章で公共機関や労使団体、法人部門などの利害関係者別に具体的な行動の行程表を提案しています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。