在宅形態労働

ILO新刊-在宅形態労働者に求められるより良い保護

記者発表 | 2021/01/13
報告書の内容を動画で紹介(英語・1分20秒)

 2020年に新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に大流行し始めた最初の数カ月間は就労者の5人に1人が自宅で働いていたと推定されます。したがって、2020年のデータが得られれば、前年より相当に増える可能性がありますが、コロナ禍以前の2019年のILOの推定では、自宅を拠点として働く人の数は世界全体で、就業者全体の7.9%に当たる2億6,000万人近くであったとみられます。この56%に当たる1億4,700万人が女性です。

 在宅形態の就労は私的領分で行われるため、目に見えないことが多く、例えば、低・中所得国ではその約9割が非公式(インフォーマル)な労働者です。在宅形態労働者はまた、高技能職でも通常、非在宅形態労働者よりも収入が低く、英国で平均13%、米国では22%、南アフリカでは25%、そしてアルゼンチンやインド、メキシコでは50%ほど低くなっています。

 在宅形態労働者が直面している安全・健康面のリスクもまた、非在宅形態労働者よりも高く、訓練の機会も少ないため、キャリア展望に影響する可能性があります。

 この度発表されたILOの新刊書『Working from home. From invisibility to decent work(在宅就労:目に見えない労働からディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)へ・英語)』はさらに、在宅形態労働者の社会的保護水準は他の労働者よりも低く、労働組合に加入することも労働協約が適用されることも少ない傾向があることを示しています。

 本書が対象とする在宅形態労働者は3種類に分類されます。大半が刺繍や手工芸、電子部品の組立といった自動化できない製品の生産に従事する工業的家内労働者です。2番目は継続的な遠隔勤務者であるテレワーカー、そして3番目が保険請求処理や編集、人工知能システム学習用のデータ・アノテーションなどといったサービスを提供するデジタル・プラットフォームの労働者です。報告書は、在宅形態労働の成長が今後も続く見通しを示し、在宅形態労働者とその使用者が直面している問題に取り組む必要性があらためて急務になっていると説いています。

 在宅形態の労働に対する規制は整っていない場合が多く、既存の法の遵守については依然として課題があります。在宅形態労働者は多くの場合、独立請負人に分類され、したがって労働法規の適用外になっています。

 報告書の著者の1人であるジャニン・バーグILO上級経済専門官は、世界中の多くの国に在宅形態労働に関連した様々なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の欠如に対処する法律があり、時には労働協約で補完されているにもかかわらず、在宅形態労働者とそれ以外の賃金労働者の均等待遇を促進する「1996年の在宅形態の労働条約(第177号)」の批准国は10カ国に過ぎず、在宅形態労働に関する包括的な政策がある国もほとんどないことを指摘しています。

 報告書は在宅形態労働のさらなる可視化を図り、より良い保護を目指す具体的な提案を示しています。工業分野の在宅形態労働者については、法的保護の拡大、法律等遵守の向上、契約文書化の一般化、社会保障の適用に道を開くこと、在宅形態労働者の権利意識の醸成を通じて、公式(フォーマル)経済への移行を円滑化することの重要性を強調しています。その活動が複数の国境を横断するために法律等の遵守の面で特別の課題が提起される在宅型のデジタル・プラットフォーム労働者に関しては、その活動から生成されたデータを用いた労働条件の監視、公正な賃金を設定するツールの必要性を唱えています。テレワーカーについては、心理社会的なリスクを緩和する具体的な行動の整備、私生活と労働生活の区分に対する尊重を確保するための「つながらない権利」の導入を政策策定に携わる人々に呼びかけています。

 在宅形態労働の重要性は、今後高まる可能性が高いと報告書は予想しています。インドネシアの籐編み細工であろうと、ガーナのシアバター生産であろうと、エジプトにおける写真のタグ付けであろうと、ウルグアイにおけるマスク縫製であろうと、フランスにおけるテレワークであろうと、政府は労使団体と協力の上、全ての在宅形態労働者が目に見えない存在からディーセント・ワークに至るよう確保するため、共に取り組むことが望まれます。

 本書は第177号条約の定義に該当する在宅形態の労働、すなわち、1)自宅または自ら選択する建物(使用者の作業場を除く)で行われる2)報酬のための労働で、3)使用される設備、材料または他の機材の提供者のいかんを問わず、使用者が特定する製品またはサービスをもたらす労働を扱っています。したがって、独立した労働者と見なされ得る程度の経済的独立性と自律性を備えた労働者や時々自宅でテレワークを行う被用者、無給の家族従業者は対象にしていません。ただし、在宅形態の就労者の総数には条約の定義に当てはまらない独立労働者も含まれています。

 7章構成の本書は、序章の第1章に続く第2章で在宅形態労働者の定義を示してその規模を推定した後、第3章で製品製造、第4章でサービス提供形態の在宅形態労働の状況を示しています。第5章で労働条件、第6章で法的保護の現状をまとめた上、第7章で在宅形態労働者のディーセント・ワークに向けた提案を行っています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。