ILO新刊

新型コロナウイルス危機の中で企業が直面している最大の問題は資金繰り

記者発表 | 2020/11/27

 この度発表された、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な大流行が企業に与えている影響に関する新刊書は、最大の課題は企業経営と社員を維持するには不十分なキャッシュフロー、供給業者の混乱、原材料入手であることを示しています。ILO事務局内で使用者側との直接かつ緊密な関係を維持している使用者活動局が世界各国の会員制使用者団体及び企業団体と協力して2020年5~6月に実施した世界45カ国4,500社以上の会員企業を対象としたグローバル調査の結果をまとめた『A global survey of enterprises: Managing the business disruptions of COVID-19(企業グローバル調査:新型コロナウイルスによる事業混乱の管理・英語)』からは、危機前から既に相当の競争圧力にさらされていた多くの企業が、新型コロナウイルスによってもたらされた政府による制限、健康上の課題、景気下降によって活動がさらに阻まれていることが明らかになっています。

 最大の問題はキャッシュフローの中断であり、回答企業の85%以上が事業に対する金融面の影響が大または中程度であるとし、回復に十分な資金があるとする企業は3分の1に留まっています。影響が最も厳しいのは従業員数99人以下の零細・小企業となっています。

 調査では企業に事業の継続性、金融健全性、労働力についての質問を行いましたが、調査時点では回答企業の78%が新型コロナウイルスから身を守るために事業に変更を加えたと回答しています。政府によって課された制限にもかかわらず、回答企業の4分の3が何らかの形で事業を継続できており、回答企業の85%は既に社員をウイルスから守る手立てを講じたと回答しています。

 8割近い企業は社員を維持する計画を示しており、企業の規模が大きいほどそのような傾向は強くなっています。一方で、回答企業の4分の1余りは、4割以上の人員削減を予定しています。

 将来に目を転じると、予期せぬ環境への備えと事業経営の混乱に関連したリスクの緩和が必要とされています。コロナ禍が襲来した時点で事業継続性計画(BCP)のあった企業は全体の半分を下回り、とりわけ零細・小企業はそのような備えを行っていない傾向があります。さらに十分な保険に入っている企業はわずか26%に過ぎず、全く保険に加入していない企業も51%に上ります。部分的あるいは十分な保険に加入している傾向が高いのは従業員数100~250人の中規模企業となっています。

 企業の回復にとって決定的に重要なものとしてはまた、政府の支援措置の強化が挙げられています。事業の回復を支援する資金が得られないとの回答は10社中4社、資金が不十分との回答は3社中2社に上ります。産業部門別では、資金問題を挙げる割合が高いのは観光・接客部門、次いで小売その他の販売業となっています。

 報告書はこのように世界中のあらゆる規模の企業に感じられている新型コロナウイルスの深刻な影響を詳しく示した上で、新型コロナウイルスのような危機の影響とその結果を理解する、より良い備えと従業員や資産、取引先、利害関係者へのリスクと脆弱性を評価する必要性を指摘しています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。