ILO/日本フィリピン水道プロジェクト

コロナ禍の中で日本の支援によってフィリピンのバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域に届いた安全な水とディーセント・ワーク

 ILOと日本政府のパートナーシップの下で、地元住民と先住民が開設した水道設備を通じて、マギンダナオ州の世帯と学童には安全な水を得る、より良い機会が開かれます。

記者発表 | 2020/11/09
日本政府の任意資金拠出を受けて進められているILOの上下水道プロジェクトの下で建設された水道設備によって地域社会には雇用が創出されました。今度は世帯と学童に安全な水を利用できる、より良い機会が開かれます。

 ILOは2019年より日本の外務省の任意資金協力を得てフィリピンのバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)内で水道整備を通じて和平の確立を目指すプロジェクトを実施してきましたが、2020年11月9日に、完成した水道設備をマギンダナオ州南ウピ市のコミュニティーと地元自治体に引き渡す式典が開かれました。これによって同州の100以上の世帯と1,600人の学童に安全な水を得る、より良い機会が開かれました。

 「ミンダナオにおける和平の確立のための水道設備管理能力向上計画」の下で進められた水道工事は、地元で事業を請け負ったティマナン中央小学校PTA、地元住民、先住民に仕事を提供しました。アルトゥーロ・マグハノイPTA会長は、新型コロナウイルス(COVID-19)から安全であり続けるためには、きれいな水が得られることが決定的に重要であるにもかかわらず、子どもたちが学校で手洗いやトイレを流すために水を汲む必要があるといったように、水が日々の苦労の種となっていることを説明した上で、建設会社に依頼する代わりに、自分たち自身が研修を受け、水道の建設、管理、維持の作業を請け負ったことを説明しました。

 プロジェクトはディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の創出、安全な水の供給、そして自治地域における和平の促進に貢献しています。プロジェクトの仕事を請け負った地元住民は600日分の賃金、社会的保護給付、健康・傷害保険を受け取りました。地元自治体からも支援が提供され、市の技官の監督の下で建設、配管、石工技能の訓練が提供されました。また、景気回復の助けになるよう、地元資源を基盤とした資材や手法が用いられました。

 引き渡し式典に出席した在フィリピン日本大使館の中田昌宏経済公使は、日本が既に30年以上もフィリピン各地で上下水道整備を支援してきたことを紹介した上で、「本日引き渡す水道設備がバンサモロの諸共同体で感じられる平和のさらなる進展に向けた補足的な介入となること」への大いなる喜びを表明し、「このILOとのプロジェクトを通じて、水道工事に携わった方々の生活条件の向上及びディーセント・ワークの提供に資することができたのは心温まることです」と述べました。

 工事の安全と衛生を確保するため、自治地域の労働・雇用省が労働安全衛生研修を提供しました。業務を請け負った地域住民は個人用保護具を用い、物理的な距離を保ち、日々の健康チェックを行いました。

 今後、自治地域内11カ所に新たな水道設備が開設されます。既にマギンダナオ州の南ウピ市と北ウピ市、ラナオ・デル・スル州ワオ市の4カ所で地元共同体の参加を得て、地元の資源を基盤とした手法を用いた水道建設工事が進められています。

 ILOフィリピン国別事務所のカリド・ハッサン所長は、安全な水が得られないと新形コロナウイルスに感染する危険性が高まり、コロナ禍による命や生計への影響が貧困、失業、不平等につながる可能性があることを指摘し、「より良い立て直しのためには、地元、全国、国際の各レベルで協力を強め、ディーセント・ワークを促進することが決定的に重要」と訴えました。

 新型コロナウイルスの流行は自治地域でも失業増を引き起こしています。水道設備管理能力向上計画はさらに、労働・雇用省と協力し、コタバト市、マギンダナオ州、ラナオ・デル・スル州、北コタバト州で非公式(インフォーマル)経済に従事し、職を失った1,750人に臨時雇用を提供しました。業務を請け負った地元住民はまた、水へのアクセスや下水設備、衛生の向上を助けるため、手洗い設備の工事も行うことになっています。


 以上はILOフィリピン国別事務所によるマギンダナオ州発英文記者発表の抄訳です。