ILOブログ:新型コロナウイルス

新型コロナウイルスとの戦いはHIVと共に暮らす3,700万の人々を忘れ去ることを意味してはならない

 世界が新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行に注意を集中させる中、HIV(エイズウイルス)/エイズ対策において過去30年間に世界中で達成された成果を失うようなことがあってはならないとILOの専門家は訴えています。

アフサル・サイード・モハンマドILO上級技術専門官

 新型コロナウイルス(COVID-19)が隔離や都市封鎖、医薬品不足をもたらしている中、世界全体で3,700万人を超えるHIV(エイズウイルス)と共に暮らす人々は取り残されているだけでなく、さらに後ろに押し戻されています。アフリカやアジアの人々は、証言によれば、抗レトロウイルス療法の中断、失業、失業給付や健康保険が得られないといった非常に現実的な不安を抱えています。

 世界の中心的な目標は新型コロナウイルスとの戦いであり続けているものの、30年以上にわたり世界が戦ってきたエイズの流行を忘れてはいけません。両方の問題に同時に取り組むことが大切です。

 この手法はエイズとの戦いで得たものが失われないことを確保し、この保健非常事態時にHIVと共に暮らす人々が直面している問題に対処する助けになります。HIVと共に暮らす人々が抗レトロウイルス療法を受け続けられるか、保健医療の場で新型コロナウイルスの症状を示すHIVと共に暮らす人々は他の人々と同じ治療を受けることができるか、HIVと共に暮らす人々が新型コロナウイルスによって仕事と生計手段を失った場合に世話をしてもらえるか、状況が正常化した場合に仕事に復帰できるか、あるいは十分な社会的保護の機会が与えられているか。こういった質問に対処し、HIVと共に暮らす人々と協議の上で答えを見つける必要があります。加えて、HIVと共に暮らす人々への差別ゼロの目標がいまだに達成されていない中、新型コロナウイルスによって差別や不名誉な烙印が悪化することを許したり、悪化させる口実として新型コロナウイルスが用いられることがあってはなりません。全ての人の人権保護原則を中心として打ち立てられている「誰も置き去りにしない」という国連の「持続可能な開発目標」の誓いがコロナ禍の中で忘れ去られてはなりません。

 新型コロナウイルスと仕事の世界に関するILOのモニタリング資料最新版は、社会的保護など公式の仕事が通常提供する基本的な保護を欠く非公式(インフォーマル)経済で働く数百万人が既に新型コロナウイルスの影響を受けていることを示しています。HIVと共に暮らす人々の状況はさらに悪く、国連合同エイズ計画(UNAIDS)のギャップ報告によれば、ウイルスの流行以前から無職となる可能性は他の人々の3倍に達していました。

 インドのHIVと共に暮らす人々全国連合のダシャ・パテル会長は仕事と収入を失う現実的な不安、国際市場の閉鎖と買い手の不在が企業に生産減を強いていることへの懸念を抱いています。パテル会長はインフォーマル経済で働くあるいは日雇い労働者として働くHIVと共に暮らす人々が最も打撃を受けていると指摘します。

 今こそ国家の既存の雇用制度や社会的保護制度を再検討し、HIVと共に暮らす人々の経済的な生き残りや福祉に対処した措置が含まれるよう確保しなくてはなりません。

 全国、産業別、企業別の各レベルで、既に多数のHIV関連の職場ポリシーや公約が生まれています。これらは差別禁止と雇用継続の確保を約し、HIVの検査、治療、ケア、支援の諸サービスへのアクセス拡大における職場の役割に関する手引きを示しています。新型コロナウイルス危機を理由として、こういったポリシーが中断するようなことがあってはいけません。実際、ウイルスの世界的大流行はこういった政策の実施を加速させる必要性を増大させているのです。この好例として、ウガンダの労使団体による新型コロナウイルスと仕事の世界に関する共同声明を挙げることができます。

 この保健非常事態を脆弱な状況にある人々を忘れ去る口実に用いてはなりません。HIVの予防、検査、治療の諸サービスを減速させてはいけません。育むのに何十年もかかった差別と不名誉な烙印に対する措置の実施を途絶えさせず、HIVと共に暮らす人々を中心にこの危機の中で誰も置き去りにしていかないようにしなくてはなりません。

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 以上はILOジェンダー・平等・多様性及びHIV/エイズと仕事の世界部のアフサル・サイード・モハンマド上級技術専門官によるILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2020年5月19日付の英文投稿記事の抄訳です。