中南米・カリブの労働概観

ILO資料:新型コロナウイルス危機による中南米・カリブの失業者は3,400万人

記者発表 | 2020/10/01
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、グアテマラで実施されている食料救済 © amslerPIX

 ILOが9月に発表した、仕事の世界に対する新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を分析したモニタリング資料第6版は、労働時間と勤労所得のどちらの減少幅も中南米・カリブ地域が最も大きいことを示していましたが、ILO中南米・カリブ総局からこの度発表された資料は雇用、労働時間、所得の激減を明らかにしています。

 2020年7月に出された初版を最新の情報を盛り込んで改訂した『Labour overview in times of COVID-19: Impact on the labour market and income in Latin America and the Caribbean. Second edition(新型コロナウイルスの時代における労働概観:中南米・カリブの労働市場と所得に対する影響第2版・英語)』は、域内経済活動人口の8割以上を代表する9カ国から得られた情報に基づき、危機の間に3,400万人の労働者が職を失った(一時的な失業者も含む)ことを示しています。今年第1四半期の就業率は前年同期より5.4ポイント減少し、史上最低レベルの51.1%となっています。

 中南米・カリブ地域の2020年1~9月の労働時間の推定減少幅は、推定11.7%減の世界平均のほぼ2倍に当たる約20.9%減となっています。勤労所得も世界平均の10.7%減を遙かに上回る19.3%減の収縮を見せており、勤労所得が世帯合計所得の平均7~9割を占めることを考慮すると、多くの世帯にとってこれは相当規模の収入減に当たり、貧困率にかなりの影響が出るとみられます。危機の影響が最も激しい労働者は最貧困層、非公式(インフォーマル)な仕事に就いている人々、不利な立場の人々であり、女性や若者(24歳未満)が特に弱いことに鑑みると、この危機はウイルス流行前から存在していた不平等をさらに拡大する可能性があります。諸国はしたがって、地域の不平等の拡大を招く可能性があるこの労働危機に取り組む即時の戦略が求められています。

 本資料はまた、2020年第3四半期に経済活動水準が幾分改善し、雇用の回復と一部労働者の労働市場への復帰が見られ始めていることを示しています。しかし、ビニシウス・ピニェイロILO中南米・カリブ総局長は、「回復兆候の速報は良いニュースではあるものの、仕事と企業に対する新型コロナウイルスの影響は巨大であり、前途は長い」として、「事業運営とより多くのより良い仕事の創出に好ましい条件を確保しつつ、健康の安全保障を伴う経済再活性化のための基盤を再始動させることが必要不可欠」と指摘しています。

 ウイルス流行の影響に取り組むため、域内諸国は雇用、収入、企業の保護を目的とした様々な措置の組み合わせを採用しています。本資料は、この影響を緩和し続け、回復を下支えする戦略の早期採用がカギを握ること、そして積極的労働市場政策に関するものを中心に労働関連制度・機構の強化が必要不可欠と記しています。

 ピニェイロ総局長は、地域の労働市場の立て直しという、現在直面している前代未聞の課題は、「低生産性やインフォーマル率の高さ、所得やディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会における不平等などといったウイルスの流行と共に悪化した構造的な欠陥に立ち向かうことを意味します」と指摘した上で、「生産的な変容、公式(フォーマル)化、社会的保護の普遍化、そしてより持続可能で包摂的な開発モデルに向けた公正な移行を伴った回復の道を指し示す全国的な協定あるいは協約の締結に向けて社会対話機構の強化を図ることが必要不可欠」と説いています。


 以上はリマ発英文記者発表の抄訳です。