社会的保護

ILO新着資料:基本的な社会的保護を保障するために途上国が必要な投資額は1.2兆ドル

記者発表 | 2020/09/17
概説資料の内容を説明するラザビILO社会的保護局長(英語・2分13秒)

 新型コロナウイルス(COVID-19)危機以前から、国際社会は2008年の金融危機というこの前の地球規模の大惨事を経て法及び政策を通じて行った社会的保護に向けた公約に応えておらず、少なくとも一つの社会的保護給付によって実効的に保護されている人は現在、世界人口の45%に過ぎず、残りの40億人以上は全く何の保護も受けていません。

 ILOはこの度発表した政策概説資料で、全ての人に少なくとも基本的な所得保障と必要不可欠な保健医療の機会を保障するには、2020年だけで途上国は国内総生産(GDP)の平均3.8%に当たる1.2兆ドル近くを投資する必要があるとの推計を示しています。『Financing gaps in social protection: Global estimate and strategies for developing countries in light of the COVID-19 crisis and beyond(社会的保護の財源ギャップ:新型コロナウイルス(COVID-19)危機以降の状況に照らし合わせた世界の推計と途上国の戦略・英語)』と題する社会的保護スポットライト・シリーズの概説資料は、新型コロナウイルス危機を原因とするGDPの減少と国土封鎖期間中に職を失った労働者に対する所得保障及び保健医療サービスの必要性の増大を受け、ウイルスの流行が始まってから社会的保護の財源ギャップが3割近く増大したと結論づけています。状況は低所得国で特に悲惨であり、このギャップを解消するにはGDPの16%近い約800億ドルの支出が必要と見られます。相対的な負担が特に大きな地域は、中央・西アジア、北アフリカ、サハラ以南アフリカで、いずれもGDPの8~9%の支出が必要です。

 新型コロナウイルス危機の経済的影響の低減に向けた各国及び国際的な措置を通じて、この財源に対する短期的な支援が提供されています。科学技術系大企業の取引に対する課税や多国籍企業に対する統一課税、航空券や金融取引に対する課税など、社会的保護の拡大に向けた財政的な余地を拡大するために革新的な財源を模索している国もあります。危機が続いている中でも既に緊縮措置が登場しつつあるため、こういった取り組みの必要性はかつてないほど切迫しています。

 各国の取り組みを補完するものとして、ILOは国際的な資金の動員を提案しています。既に国際金融機関や開発協力機関は途上国の政府が危機の様々な影響に取り組む助けになる包括的金融措置を複数導入していますが、とりわけ低所得国における財源ギャップを縮小するにはさらなる資金が求められています。

 資料をまとめたILO社会的保護局のシャハラ・ラザビ局長は、低所得国が全ての人に少なくとも基本的な所得保障を提供し、必要不可欠な保健医療の機会を開くために必要な800億ドル近い投資額を賄うには、国内資金だけでは全く不十分であることを強調し、「毎年の財源ギャップの縮小には地球規模の連帯を基盤とした国際資金」が求められると説いています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。