児童労働反対世界デー

ILO/UNICEF発表:新型コロナウイルスの影響によって児童労働に陥る子どもたちが数百万人増える可能性

記者発表 | 2020/06/12
報告書の内容を約1分で紹介(英語・1分14秒)

 この20年、児童労働に対する取り組みは進展し、最新の児童労働者数(2017年)は世界全体で2000年より9,400万人少ない1億5,200万人と推定されていたものの、2020年の児童労働反対世界デー(6月12日)に合わせて発表されたILOと国連児童基金(UNICEF)の新たな報告書は、新型コロナウイルス(COVID-19)危機によって数百万人の子どもたちが児童労働に陥る危険に瀕しており、結果、児童労働者数が20年ぶりに増加する見通しを示しています。『COVID-19 and child labour: A time of crisis, a time to act(新型コロナウイルスと児童労働:危機の時は行動の時・英語)』と題する新刊書はさらに、既に働いていた子どもたちの場合は、状況の悪化や労働時間の増加を経験している可能性があり、健康や安全を相当に害する可能性がある最悪の形態の児童労働を強いられている者も多いかもしれないと記しています。

 報告書は、新型コロナウイルスは貧困増を招き、家族が得られるあらゆる手段を尽くして生き残りを図る結果、児童労働が増える可能性を指摘しています。複数の研究が、幾つかの国では貧困率が1%ポイント上がる毎に児童労働が最低でも0.7%ポイント増加する可能性があることを示しています。

 非公式(インフォーマル)経済で働く人々や移民労働者などの脆弱な人口集団は、景気後退や非公式経済の拡大、失業増、生活水準の一般的な低下、健康ショック、不十分な社会的保護制度などのプレッシャーによって最も苦しむことになります。

 ウイルスの世界的大流行によって現在、世界130カ国以上で10億人以上の学習者が学校の一時閉鎖の影響を受けていますが、学校閉鎖と共に児童労働が増加していることを示す証拠が次第に増えてきています。学校が再開してももはや子どもを学校に通わせる余裕がない親がいることも考えられます。結果として、より多くの子どもたちが搾取的な仕事や危険有害労働を強いられる可能性があります。少女は農業や家事労働における搾取に特に弱く、男女不平等が一層激しくなる可能性もあります。

 このような見通しに対し、報告書は、より包括的な社会的保護、貧困世帯が信用貸付を受けられる機会の円滑化、大人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進といった児童労働増加の脅威に対抗する措置や、学費撤廃などの子どもを学校に復帰させる措置、そして労働監督や法執行機関に対する資金増などの数多くの措置を提案しています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、ウイルスの世界的大流行によって家族の収入が大混乱に陥り、支援なしには多くが児童労働に頼らざるを得なくなる可能性を指摘し、「危機の時代には、最も脆弱な人々を支援する社会的保護が決定的に重要」と強調し、教育、社会的保護、司法、労働市場、国際的な人権及び労働者の権利といった幅広い政策に児童労働に対する配慮を組み込むことが「決定的な違い」を引き起こす可能性を説いています。

 ヘンリエッタ・フォアUNICEF事務局長も、危機の時代には児童労働が多くの家族の対処メカニズムの一つとなることに注意を喚起し、「貧困率が上昇し、学校が閉鎖され、社会福祉事業が得られなくなる中、ますます多くの子どもたちが労働力に押しやられています。新型コロナウイルス後の世界を再想像するに当たり、子どもたちとその家族が将来的に同じような危機を乗り越えるために必要な手段を備えることを確実にする必要があります。質の高い教育、社会的保護事業、より良い経済機会が状況を変えるものとなり得ます」と説いています。

 ILOとUNICEFは現在、世界的に新型コロナウイルスの児童労働に対する影響を分析するためのシミュレーションモデルを開発中です。児童労働者数についての新たな推計は2021年に出す予定です。


 以上はジュネーブ及びニューヨーク発英文記者発表の抄訳です。