ILO統計局ブログ:労働力率における男女間格差

女性の労働市場参加を妨げるのは結婚よりも子ども

 新たな世帯構成別データは、世界中で性別社会規範が男女の労働力率に影響を与え続けていることを示しています。

ロシーナ・ガンマラーノ経済専門官

 生産年齢人口に占める就業者と失業者の割合、つまり、労働市場に参加している人の割合を示す労働力率は労働条件や雇用の質の違いを示せないために一定の限界がありますが、それでもなお、重要な指標の一つです。労働力率の男女差は労働市場への参加に関する決定における性による違いを明らかにする可能性があるため、とりわけ興味深いものであり、労働力率における男女間格差と呼ばれることの多いこの違いは、社会規範における性差と男女の典型的な役割がいかに根深いかに密接につながっています。

 

25~54歳層の労働力率
  女性(%) 男性(%)
世界全体 51.6 94.6
西アジア及び北アフリカ 29.2 92.8
中央・南アジア 29.4 96.8
大洋州(オーストラリアとニュージーランドを除く) 54.9 58.7
中南米・カリブ 64.5 94.1
東南アジア 72 94.5
サハラ以南アフリカ 77.1 92.1
北米・欧州 77.5 92.1

 

 ILOと国連女性機関(UN Women)は世界84カ国の世帯種別労働力率データにおける男女の違いを分析し、25~54歳の壮年男性のほぼ全員に当たる95%が労働市場に参加しているのに対し、同年代の女性の労働力率は52%に過ぎないことを見出しました。この結果は43ポイントというかなり衝撃的な男女間格差を示すものとなっています。

 労働力率における男女間格差は地域による違いが大きく、この主な理由は女性の労働力率の差です。男性の労働力率はどの地域でも非常に高いのに対し、女性の労働力率は最も低い西アジア及び北アフリカと中央・南アジアでは29%に過ぎません。

 ILOとUN Womenは、家庭生活が労働力率に与える影響を調べることのできる新たな指標を伴う新しい国際データベースの開発に向けて力を合わせています。このデータはとりわけ、25~54歳の男女の労働力率は、単身世帯であるか、パートナーあるいは子どもと同居しているかによって異なることを示しています。

 

家族状況別で見た25~54歳層の労働力率
  女性(%) 男性(%)
合計 51.6 94.6
単身世帯 82.4 90
近親者以外との同居 74.5 92.3
子どものいる単親世帯 69 90.9
パートナーと同居 64.3 94.2
パートナー及び子どもと同居 48.2 96.6
拡大家族と同居 45.1 92.4

 

 労働市場における機会平等、均等待遇はディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の重要な側面ですが、残念なことに差別的な社会規範や典型的な性別役割の存在は、一般に女性には男性と同じディーセント・ワークの機会が開かれていないことを意味しています。固定的な性別役割が女性の労働力率にマイナスの影響を与えることは常に推測されてきたものの、ここに至るまで、それを示す一貫した信頼のおける国際的なデータは得られませんでした。

 労働力率における男女の違いは、家族状況で分類すると、とりわけ顕著になるため、この分析は労働市場の参加に関する人々の決定の背景に、どれだけ性別社会規範が存在するかを明らかにすることができます。実際、単身壮年世代では女性の労働力率は男性と同じくらい高くなる傾向があり、労働力率における男女の違いは比較的小さくなります。パートナーと暮らすとこの差は大きくなり、パートナー及び子どもと暮らすと差はさらに広がります。ここでも男女間格差の大きさは、主として女性の労働力率の違いに基づいています。男性の労働力率は世帯種別にかかわらず一貫して高く、家族の状況による違いがほとんどなく、その上、女性と逆の動きを示します。これは世界中で少なくともある程度は、固定的な性別役割が家事や育児の分担や世帯内のどの構成員が就業するかといったような経済的な決定や世帯内の決定を依然として司っていることを推測させます。

 

家族状況・地域別で見た25~54歳層の労働力率
    女性(%) 男性(%)
世界全体 単身世帯 82.4 90
パートナーと同居 64.3 94.2
パートナー及び子どもと同居 48.2 96.6
サハラ以南アフリカ 単身世帯 91.8 93.9
パートナーと同居 77 96.2
パートナー及び子どもと同居 80.1 95.9
北米・欧州 単身世帯 85 87.3
パートナーと同居 82.8 92.4
パートナー及び子どもと同居 74.6 95.2
東南アジア 単身世帯 89.3 94.1
パートナーと同居 79.7 97
パートナー及び子どもと同居 67.5 96.4
中南米・カリブ 単身世帯 84.4 92.6
パートナーと同居 68.6 94.2
パートナー及び子どもと同居 58.4 96
大洋州(オーストラリアとニュージーランドを除く) 単身世帯 51.2 66.6
パートナーと同居 56.1 68.2
パートナー及び子どもと同居 54.2 59.7
中央・南アジア 単身世帯 67 91.6
パートナーと同居 34.2 96.5
パートナー及び子どもと同居 27.5 98.1
西アジア及び北アフリカ 単身世帯 48.2 89.2
パートナーと同居 35.5 90.4
パートナー及び子どもと同居 27 94.2

 

 このように壮年世代の男女の労働力率に関しては、世界中で明確な一般的パターンが観測されています。独居女性の労働力率は独居男性と同じくらい高いものの、パートナーと暮らすと、この差が広がり、子どもと暮らすとさらに広がることが示されています。結婚から出産に向けて女性の労働力率は漸進的かつ相当に低下するのに対し、男性の動きは逆に徐々に増加するというこの傾向は、全ての地域で発生していますが、例外は大洋州(オーストラリア及びニュージーランドを除く)とサハラ以南アフリカです。前者では独居女性の労働力率がパートナーや子どもと暮らす女性の労働力率より低く、後者ではどちらも独居女性の労働力率よりは低いものの、子ども及びパートナーと暮らす女性の労働力率はパートナーだけと暮らす女性の労働力率より若干高くなっています。

 つまり、家庭内における子どもの存在は女性の労働市場参加を妨げるのに対し、男性の参加を後押しし、この効果は子どもが6歳未満の学齢期前の場合に一層強く見られます。ほとんどを女性が占める単親世帯の場合は状況が若干異なり、シングルマザーの労働力率は子どもの年齢にかかわらず、他の女性よりも高く、これは一人親であることに関連した経済的重圧に起因しており、このような女性は労働市場に参加して有償の仕事を確保する必要があることを推測させるものとなっています。

 女性の労働市場への参加は今日に至るまで家庭責任や育児・介護といったケア責任によって形成され続けていますが、男性の場合にはそのような状況は見られません。実際、ケア労働に関するILOの刊行物『Care work and care jobs for the future of decent work(ディーセント・ワークの未来に向けたケア労働と職業としてのケア・英語)』は、女性が労働市場に参加しない主な理由は無償のケア労働であると記しています。地域にかかわらず、結婚・出産は男性よりも女性に雇用を中断させる可能性が高くなっています。家庭構造は一定の影響があり、時にこれは女性に対する追加的な負担となります。とりわけシングルマザー世帯の場合は、扶養家族の世話や金銭的なニーズが女性の肩に掛かります。

 

家族状況・子どもの年齢別で見た25~54歳層の労働力率
  女性(%) 男性(%)
合計 51.6 94.6
単身世帯 82.4 90
パートナーと同居 64.3 94.2
パートナー及び子ども(少なくとも1人が6歳未満)と同居 48.7 97.2
パートナー及び子ども(全て6歳以上)と同居 47.9 96.2
子ども(少なくとも1人が6歳未満)のいる単親世帯 65.8 90.1
子ども(全て6歳以上)のいる単親世帯 70.1 91

 

 新たなデータは労働市場の状況を分析・評価するに際し、総合的なジェンダーの視点が必要であることを指摘しています。これには無償のケアや家事責任が女性の労働市場への参加を制約する上で演じている役割を理解する、より一層の努力も含まれます。結婚や出産が労働市場を含む社会への女性の全面的な参加を制限したり、差別のもととなるべきではありません。同時に、親、男女、そして社会全体が分担して担うべき育児責任を一層認識する必要があります。

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ILO統計局データ生成・分析班のロシーナ・ガンマラーノ経済専門官は、ILOの労働統計データベースILOSTATの2020年3月3日付英文ブログ記事で、ILOとUN Womenの新刊書『Spotlight on SDG 8: The impact of marriage and children on labour market participation(持続可能な開発目標(SDG)8に焦点を当てる:労働市場参加に対する結婚と子どもの影響・英語)』の主な分析結果を以上のように紹介しています。

 世帯種別主要労働指標に関する新しいデータベースには、ILOの調和ミクロデータ・コレクションで得られる84カ国の労働力調査その他の種類の世帯調査データが含まれています。本論文で示されている世界全体及び地域別の集計値はこの84カ国調査から得られたデータであり、現在はまだデータベースに含まれていません。一部の指標を生成する基礎となるデータが得られない国があるため、指標毎に集計の対象が異なる可能性があります。世界全体と地域別の集計値は世帯構成が男女の労働力率に与える影響を分析する目的で生成されたものであり、対象となっている全ての指標について一貫した方法論が用いられているILOモデル推計との比較はできません。