強制労働

ペルーで治安判事らと手を組んで強制労働に対抗

記者発表 | 2020/02/17
木材の伐採作業に従事する労働者

 ペルーは1960年2月1日にILOの強制労働条約(第29号)を批准しましたが、批准60周年となる今年、この日を「強制労働反対全国デー」に定めました。

 ILOは米国労働省の任意資金協力を受けて2015年からペルーを含む世界7カ国で公共政策の強化と予防につながる介入活動を通じて強制労働と戦う「議定書から実践へ:強制労働グローバル行動架け橋プロジェクト(橋プロジェクト)」を展開しています。この活動の一環として、ウカヤリ、サン・マルティン、ロレートといった強制労働のリスクが高いアマゾン地域の諸県に加え、クスコ、プーノといった高地地域の諸県の治安判事130人に訓練が提供されました。

 アマゾン地域では何十年も前から木材の違法な伐採が見られ、景観や環境に破滅的な影響を与えているだけでなく、強制労働に捕らえられた主として先住民共同体の暮らしを何世代にもわたって損なってきました。伐採作業に従事する労働者の多くは、仲介人にだまされて、前払い賃金や食料、木材と引き換えに債務奴隷に陥っています。やがて、債務と労役の悪循環から抜け出せなくなり、それは世代を越えて受け継がれます。

 ペルーには5,800人以上の治安判事が存在します。治安判事とは、地域社会の古くからの構成員で、地域住民によって選出されて当該地域の紛争の調停・解決に貢献する人々です。地元の問題を熟知しているため、とりわけ僻地の農山村地帯では強制労働に関する啓発を行うのに適した立場にあります。

 橋プロジェクトが国の司法機関に属する治安判事支援局及び同局ウカヤリ地方支部と共同で作成した指針を用いることによって、訓練を受けた治安判事は強制労働の事件を特定し、予防・介入活動を取ることができるようになると期待されています。

 ペルー中部密林地帯のウカヤリ県ネシュヤ地区のルドベル・ガスパル治安判事は次のように語っています。「私たちの理解では、治安判事は人々に良い態度を示すことによって選出されています。これは地域社会の紛争を解決し、不正行為に制裁を加える助けになります。これは強制労働の事件にも当てはまります」。今は強制労働の予防と被害者に対して講じるべき措置の特定は自分の職務の一部であると思うようになったと語る同じくウカヤリ県ヤリナコチャ地区のレイラ・シャウアノ治安判事は、このアマゾンの地域社会では女性が立ち上がり、意思決定を行う力をつけようと努力していることを報告した上で、「人々が強制労働に陥らないよう防止することは、治安判事の務めの一つであり、そのためには村の機関と協働する必要があります」と指摘しています。

 橋プロジェクトのテレサ・トレス調整官は、強制労働の犯罪化、労働監督規制枠組みの強化、司法現場向け訓練プログラムの開発などといった進展を挙げつつも、「まだ大きな課題が残っています」と指摘し、事件の予防、被害者の保護、司法利用、社会復帰に重点を置いた措置を定め、強制労働のリスクを増す要因に対処している「1930年の強制労働条約の2014年の議定書」のペルーによる批准に期待を寄せています。


 以上はウカヤリ県発英文記者発表の抄訳です。