ILO/UN Women新刊

日本などアジア4カ国の外国人労働者に関する意識調査結果を発表:生産的な貢献は認めつつも、依然として好意的とは言えない状況

記者発表 | 2019/12/18

 国際移住者デー(12月18日)に合わせて発表されたILOと国連女性機関(UN Women)の新刊は、主要な外国人労働者受入国である日本、マレーシア、シンガポール、タイにおける一般の人々の外国人労働者に対する支持はなおも限定的であるとして、差別的な態度や行為の存在を指摘しています。「安全/公正:東南アジア諸国連合(ASEAN)地域における女性移民労働者の権利と機会の実現プロジェクト」及びASEANの公平かつ包摂的で安定した成長に対する労働力移動の貢献を最大化することを目指す「ASEANにおけるTRIANGLEプロジェクト」という2つの事業の活動の一環としてまとめられた『Public attitudes towards migrant workers in Japan, Malaysia, Singapore and Thailand(日本、マレーシア、シンガポール、タイの移民労働者に対する一般の人々の姿勢・英語)』はこの10年、移住者は全体的に増加したのに対し、移民労働者に対する好意的な姿勢は減少したことを示しています。

 本書は2010年に行われた同種の調査をフォローアップするものです。2010年の調査では韓国が含まれていましたが、今回の調査では同国に代えて、低技能移民労働者受入国として重要性が増してきた日本を対象にしました。4カ国4,099人の調査回答をもとにした本書はしたがって、日本以外の3カ国については、移民労働者に関連した知識、姿勢、行為の約10年間の変化を分析し、好意的な姿勢を促進する方法を提案し、排除や孤立、差別対策として、移民労働者ともっと交流することや、地域社会における関与の必要性を強調しています。

 最新の推定によれば、東南アジア・太平洋地域における登録移民労働者数は1,160万人に上り、うち520万人が女性であるとみられます。移民労働者は送出国と受入国の双方の経済と社会に決定的に重要な貢献を行っています。しかしながら、人手不足や労働力移動がもたらす経済的利益は明確であるにもかかわらず、国民誰もが移民労働者の必要性に納得しているわけではありません。マレーシアとタイでは調査回答者の半数以上、日本でも3分の1、シンガポールでは4分の1が自国における移民労働者の必要性を認めつつも、「移民労働者は経済にとっての負担である」と考える人は、シンガポールと日本では回答者の約3分の1、タイでは4割、マレーシアでは半数近くに達しています。

図表:自国経済に移民労働者が与える影響に関するタイ、マレーシア、シンガポール、日本の人々の認識

 調査回答者の高い割合が移住者の受入は犯罪率の上昇に寄与すると考えており、シンガポールと日本では回答者の半分以上、タイでは4分の3超、マレーシアではなんと83%がそのように考えていることが判明しました。しかし、世界銀行から最近発表された資料によれば、マレーシアでは逆に移民労働者10万人増に対し、犯罪率は9.9%低下したとのデータが示されており、移民労働者に対するマイナスイメージは事実に基づいているわけではないことが示されています。シンガポールのある非政府組織(NGO)の職員は次のように語っています。「外国人が犯罪を犯すことを示す証拠はありません。ほとんどの人は処罰されるためではなく、働くためにやって来ているわけですから。低技能職の移民に対しては地元の人々に偏見があり、そのために移民労働者が犯罪を犯していると考えるのです」。

 調査回答者の高い割合が移民労働者は自国の文化や遺産を脅かすと認識し、移民労働者は信用できないと考える人も多くなっています。

図表:移民労働者は社会と文化にとっての脅威であると考えるタイ、マレーシア、シンガポール、日本の人々の割合

 多くの人が移民労働者について全体としては否定的な見解を持っているものの、家事労働関連や女性に対する暴力廃絶に関連したものを中心に女性移民労働者の支援を目的とした政策イニシアチブは支持されています。とりわけ、暴力にあった女性移民労働者を支援するシェルターや暴力取り締まりの強化、家事労働者の状況改善に対しては支持が表明されています。これは特定の移民労働者集団や特定の問題に注目を集めると、それが共有の経験を強調するものである場合には特に、一般的な支持を得る助けになり得ることを示しています。

図表:移民家事労働者の労働条件改善に対する支持を表明するタイ、マレーシア、シンガポール、日本の人々の割合

 2010年の調査の時と同様、移民労働者についての人々の意識に影響を与え、強める最も顕著な情報源は報道機関、とりわけソーシャルメディアであることが示されています。報道機関による移民労働者のマイナスイメージの伝達は、人々が移民労働者を集団として認識する方法をゆがめる可能性があることを考えると、マスコミやソーシャルメディアを通じて伝えられるメッセージは人々に移民労働者に関する正確かつ中立的な情報を伝える決定的に重要な手段であると言えます。ILOのニリム・バルア・アジア太平洋地域移住専門官は次のように語っています。「移民労働者が送出国と受入国の両方の経済において実際に果たしている貢献に対応したプラスのイメージをもって否定的な認識を打ち消す必要があります。そうでなくては、全ての労働者は平等に尊厳をもって処遇されるという、権利を基盤とした移住の統治についての受入国社会からの支持が減ることになってしまいます」。

 調査結果はまた、移民労働者に対する一般の人々の支持は個人や地域社会が移民労働者の共同体と育む関係やつながりに推進されることが多い事実を確認させるものとなっています。移民労働者を個人的に知っており、関与している人はその権利を支持し、危機の時に支援する傾向が高くなっています。

 調査結果をもとに、報告書は包摂的な政策立案から、観測された否定的傾向を打ち消すための啓発活動に至る一連の協同取り組みの必要性を強調しています。差別的な意見を変え、移民労働者の肯定的な社会的包摂を奨励するに当たり、政府、労働組合、使用者団体、市民団体にはそれぞれに果たすべき役割があります。

 約10年前の調査結果を更新し、調査対象4カ国における移民労働者に対する一般の人々の意識についての知識基盤を確立したこの調査研究は、移民労働者のためになるより包摂的で支援的な環境を促進するキャンペーンの展開や政策策定のための証拠を提示するものとなっています。女性移民労働者の問題に関する部分では、入り口として活用できそうな、人々の支持が高いテーマを明らかにしています。暴力に対する取り組みや家事労働者の労働条件引き上げに対する一般の人々の支持が高いところでは、女性移民労働者の移住結果がプラスとなることを確実にできる改革を伴う政策変更が容易になる可能性があります。

 4章構成の本書は、序章となる1章で調査対象4カ国における移民労働者の状況を簡単にまとめ、2章で調査研究の手法を詳しく説明した後、3章で調査結果を記し、最後の4章で結論と提案事項を示しています。


 以上はバンコク発英文記者発表の抄訳です。