ILO新刊:社会的保護

ILO新刊:基本的な水準の社会的保護を世界中で確保するには年間5,000億ドル以上が必要

記者発表 | 2019/11/25

 社会的保護は貧困や男女平等、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と経済成長など、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が定めるターゲットを2030年までに達成する取り組みの中心的な役割を演じていますが、ILOでこのたび発表された新刊書は世界134カ国の調査研究をもとに、社会的保護が現在適用されているのは上位中所得国では子どもの35%、高齢者の90%に上るのに対し、低所得国では子どもの8.5%、高齢者の15.3%に過ぎないことを示しています。その上で、「社会的保護の土台」と呼ばれる社会的保護措置の基本集合を2030年までに達成するには総額で年間5,000億ドルを超える投資が必要であると結論づけています。

 社会的保護措置の基本集合には、子どもに対する現金給付、新生児を抱える母親に対する出産給付、障害給付、老齢社会年金などが含まれます。『Measuring financing gaps in social protection for achieving SDG target 1.3: Global estimates and strategies for developing countries(SDGターゲット1.3の達成に必要な社会的保護財源の測定:グローバルな推計と途上国向けの戦略・英語)』と題する報告書は、この基本集合を全ての人に広げるには網羅率に対する支出を激増させる必要があることを指摘しています。

 中所得国または上位中所得国の多くが社会的保護の土台を全ての人に広げた場合の財源を国内で生み出す力があるのに対し、この調査研究が対象とした28の低所得国で2030年までに100%の網羅率を達成するために必要な財源と現在の財源のギャップを埋めるためには外国からの相当額の開発援助(ODA)が必要と本書は指摘しています。報告書によれば、財源ギャップの縮小には低所得国では年間で国内総生産(GDP)の5.6%に当たる270億ドル、下位中所得国ではGDPの1.9%相当額の1,360億ドル、上位中所得国ではGDPの1.4%相当額の3,650億ドルがそれぞれ必要とされます。

 報告書は必要な財源を生み出す政策選択肢として、税収増、社会保障の適用範囲及び拠出者の拡大、低所得国を優先させたODA増大、金銭の違法な流れの取り締まりなどを挙げています。

 報告書をまとめたILO社会的保護局のバレリー・シュミット次長は、「普遍的社会的保護は、低所得国への国際開発援助などを通じた巨額の投資を通じて達成できる目標」となり得ることを説いています。本書の執筆者チームを率いた同局公共財政・保険数理・統計ユニットのファビオ・デュラン=バルベルデ・ユニット長は、社会保険がまだ整備途上の国で非公式(インフォーマル)経済の労働者を対象とした拠出型社会保険の拡大を促進した場合、GDPの1.2%の追加収入がこれらの国で生まれる可能性を指摘しています。

 ILOは2019年11月25~28日にジュネーブの本部で開催するグローバル社会的保護週間でこのような社会的保護を全ての人に達成する道を描くことを目指しています。会議では今年のILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」の枠内で社会的保護の未来に向けた行程表について話し合いが行われます。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。