新刊:児童労働

ILO新刊-児童労働と人身取引は依然としてグローバル・サプライチェーンの重要な懸念事項

記者発表 | 2019/11/12

 持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット8.7は、2025年までに児童労働をなくし、2030年までに強制労働、現代の奴隷制、人身取引をなくす効果的な措置を整備することを世界中の政府に呼びかけています。この目標の達成に向けた活動を加速させる国際的なパートナーシップとして誕生した8.7連合からこのたび発表された新刊書は、グローバル・サプライチェーン(世界的な供給連鎖)における児童労働及び人身取引の相当割合が原材料の採取や農業などの連鎖下層で発生しており、相当な注意義務(デュー・ディリジェンス)や視認、追跡を難しくしていることを明らかにしています。

 グローバル・サプライチェーンにおける労働者の中核的な権利の侵害の評価を求める主要20カ国・地域(G20)の労働・雇用大臣会合の要請に応えて8.7連合の事務局を務めるILOが参加組織である経済協力開発機構(OECD)、国際移住機関(IOM)、国連児童基金(UNICEF)と共にまとめた報告書『Ending child labour, forced labour and human trafficking in global supply chains(グローバル・サプライチェーンにおける児童労働、強制労働、人身取引に終止符を・英語)』は、グローバル・サプライチェーンにおけるこの問題の規模を初めて推定したものとなっています。

 児童労働全体の中でグローバル・サプライチェーンに関係するものの割合は地域によって異なり、東・東南アジア26%、中南米・カリブ22%、中央・南アジア12%、サハラ以南アフリカ12%、北アフリカ・西アジア9%となっています。強制労働目的の人身取引についてはデータ入手が困難という性格上、推定には限界があり、問題が多く見られる建設産業や家事労働産業は国内向けの産業であるため、さらなる分析が必要であるものの、報告書は強制労働目的の人身取引全体の中で輸出に関連しているものの割合は東・東南アジアで17%、欧州16%、サハラ以南アフリカ9%、北米9%、北アフリカ・西アジア4%と推定しています。

 こういった人権侵害の原因と、政府、企業、労使の社会的パートナーの取り組み優先事項についてのユニークな機関横断的視点を示す報告書は、政府や企業によるさらなる取り組みの余地がある分野を複数示しています。政府に関しては、制定法やその執行、司法アクセスにおけるギャップに対処し、責任ある企業行動の枠組みを確立する上での国家の決定的に重要な役割を強調し、政府自身も商品やサービスの調達者、企業オーナー、信用貸付やローンの提供者として自らの活動にデュー・ディリジェンスの概念を組み込むことによって範を示す方法も検討しています。企業に関しては、サプライチェーンを丸ごと対象とした包括的なデュー・ディリジェンスの必要性が強調されています。デュー・ディリジェンスが独特なのは、従来の企業慣行を土台とし、その調整を図るだけでなく、サプライチェーン全体を通じた救済策提供の手続きなど、サプライチェーンではまだ比較的新しい手続きが導入されている点です。重要なこととして、児童労働、強制労働、人身取引に効果的なデュー・ディリジェンスは予防的であり、害悪の可能性や深刻度に応じて比例的に用い、優先順位を付けることができ、企業のリスク管理及び意思決定の一部をなしています。

 報告書はまた、とりわけグローバル・サプライチェーンが業務を外注している供給連鎖下層の、リスクが最大である非公式(インフォーマル)経済で働く家族や子どもの貧窮のような根本原因に焦点を当てた、より幅広い予防措置も示しています。
 ガイ・ライダーILO事務局長は、私たちが購入する商品やサービスは、世界中多くの国からの投入財で構成されており、その加工や組立、包装、輸送、消費は複数の国や市場を横断していることを指摘した上で、「報告書はサプライチェーンで発生している労働者の中核的な権利の侵害に効果的に取り組む行動が緊急に必要なことを示しています」と述べています。アンヘル・グリアOECD事務総長は、出席中のパリ平和フォーラムにおける演説の中で次のように述べました。「様々な経済、環境の文脈で適用されてきたOECDの方法論に則って見出されたこの事項は、企業が自社内及びサプライチェーンを通じて人権を尊重するよう確保する取り組みの政府によるスケールアップ及び強化の必要性を強く認識させるものです。企業が責任ある企業行動としてデュー・ディリジェンスを行える環境の形成を政府の重要な行動とすべきです」。

 アントニオ・ヴィトリーノIOM事務局長は、「この結果が明らかにしているのは、グローバル・サプライチェーンにおける人身取引対策は、直接の供給業者を越えて、原材料の採取や農業、他の産業に対する財の投入といった活動に従事している供給連鎖下層の活動主体を含まない限り、不十分であるということ」と指摘しています。ヘンリエッタ・フォアUNICEF事務局長は、児童労働は子どもから遊び学ぶ機会を奪うことによって、心身・社会的発達に生涯残る悪影響を与える可能性があることを指摘した上で、「貧困や暴力のような、子どもを労働に押しやる根本原因に取り組む必要があります。また、家族に代替的な収入源、子どもに良質の教育と保護サービスを受ける機会が確保されるような具体的な解決策が必要です」と説いています。

 2部構成の本書は、第1部「グローバル・サプライチェーンに関連した児童労働、強制労働、人身取引の理解:問題の規模とリスク要因に関する証拠の検証」で問題の実情を示した上で、第2部「グローバル・サプライチェーンにおける児童労働、強制労働、人身取引への対応:官民の活動検証」で様々な対応策を紹介しています。問題の規模は推定児童労働者数を国内及び国際的なバリューチェーン及び貿易フローのデータと組み合わせて推定されています。人身取引についても同じ手法が適用されています。方法論に関する詳しい資料は別途近日中に発表されます。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。