国際労働基準

ベネズエラに対する苦情に関するILO審査委員会の報告書発表

記者発表 | 2019/10/03

 2015年6月に開かれた第104回ILO総会の33人の使用者側代表からILO憲章第26条に基づき、1928年の最低賃金決定制度条約(第26号)1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)及び1976年の三者の間の協議(国際労働基準)条約(第144号)の適用状況に関する苦情が申し立てられたベネズエラについては、2018年3月に開かれた第332回ILO理事会で設置された審査委員会が、2019年7月に現地を訪れるなどして情報を収集して審査を進めていましたが、このたび委員会の報告書が発表になりました。

 この苦情はとりわけ、政府が使用者団体のベネズエラ商業会議所製造業者協会連盟(FEDECAMARAS)並びにその指導者及び加盟団体の評判をおとしめるキャンペーンを展開し、暴力行為その他の攻撃、迫害、嫌がらせ、当局による活動介入を行い、三者協議を行おうとせず、社会対話から同団体を排除しており、政府を支持しない労働者団体に対してもそのような行為が行われているというものでした。

 3人の独立した委員で構成される審査委員会は、ベネズエラの首都のみならず複数の都市を訪れて当事者その他の関係者に直接接触したほか、ジュネーブでも当事者代表に加えて公の機関や非政府部門の証人の参加を得て複数回のビデオ会議や聴聞会を開き、当該国政府、申立人、社会的パートナーである国内の複数の労使団体、その他提起された問題点に関して知識を有する個人や機関から受け取った200点以上の包括的な文書情報を含む幅広い資料を集め、ILO憲章第28条に従い、審査結果を詳記した上で、結論と提案を示す報告書をまとめました。

 暴力や脅迫、迫害、汚名きせ、威嚇、その他の形態の攻撃がない風土を確保するために必要な措置を講じるよう求める委員会の勧告は、◇政府を支持しない労使団体による合法的な団体活動または労働組合活動の行使に関連して個人または組織に対して行われているあらゆる暴力行為、脅迫、迫害、汚名きせ、威嚇、その他の形態の攻撃を即時に停止し、そのような行為が将来的に繰り返されないことを確保する措置を講じることや、◇全国的な和解、持続可能な経済発展、社会正義のための三者対話の基盤として結社の自由を尊重すること、◇合法的な労使団体活動を遂行した結果として、刑務所に収容された可能性がある使用者または労働組合活動家の即時の釈放、などを求めています。

 憲章規定に則り、ガイ・ライダーILO事務局長は審査委員会の報告書をベネズエラ政府に送付しました。政府は3カ月以内に勧告を受諾するか否かを、そして受諾しない場合には苦情を国際司法裁判所に付託する意図があるか否かをILO事務局長に通知することになっています。

 ILOの100年の歴史の中で、審査委員会が設置されたのは13件だけです。過去に設けられた審査委員会には、ミャンマーの強制労働、ジンバブエやベラルーシの結社の自由、団体交渉権を扱ったものなどがあります。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。