第108回ILO総会

第108回ILO総会10日目:現旧ILOトップが社会正義にスポットライト

記者発表 | 2019/06/20
左からアンセンヌ元事務局長、ライダー現事務局長、ソマビア前事務局長 写真録画動画もご覧になれます。

 2019年6月10日にジュネーブで開幕した第108回に当たる創立100周年記念ILO総会には、日本を含む187加盟国から参加した約5,700人の政府、使用者、労働者の代表に加え、30人以上の国家元首・政府首脳級のハイレベルゲストが出席し、ILOの創立100周年を祝し、この機関に付託されている社会正義の任務に対する公約を表明しました。

 総会10日目には歴代のILO事務局長の中で最も最近の3人が「平和を求めるならば、社会正義を培え」というILOの信条をベースに懇談する特別イベントが開かれました。イベントには10代目に当たるガイ・ライダー現事務局長に加え、1989~99年にILOを率いたミシェル・アンセンヌ第8代事務局長と1999~2012年に在任したフアン・ソマビア前事務局長が参加しました。現旧ILOトップは、ILOが今日でもなお通用し、今後もそうあり続けるであろう理由の一つとして、この機関の「変化適応力」を挙げました。

 アンセンヌ元事務局長は冷戦の終結、アパルトヘイトの終結、グローバル化の初期の時代などの、自らの在任中に世界に起こった奥深い変化にILOがいかに適応していったかを振り返り、指摘しておきたい重要なこととして、「社会正義の理想がいかに人々の心に錨を降ろした理想であり続けているかということ」を挙げ、「私たちが有する役割、使命、物事の進め方は資本」であるとして、「自らを信じるべき」と説きました。そして、「ILO、そしてこの総会の活動全体が、国際的な社会正義がなければ、平和はあり得ないということを国家に思い起こさせるに至っている」と評価しました。

 ソマビア前事務局長は在任中に打ち出した「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を全ての人へ」という政策課題について述べ、「先進国、途上国を問わず、どの国も雇用面で起こりつつあることを懸念していたため、権利や社会的保護、社会対話などを巡るILOの伝統的な活動を取り出し、労働の代償と労働の価値を区別すべきと唱えてそれをもっとグローバルな文脈に据えました」と説明しました。そして、ディーセント・ワークとは、「個人の尊厳の源、私たちの存在の必要不可欠な部分、家族の安定の源、地域社会における平和の一形態」であると表現しました。さらに、「私たちは自分たちを完全に信頼する必要があるが、信頼は変化できないことを意味するものではない」と説いて、仕事の世界を根底から変えつつある変化にILOが適応できることは疑いないと断言しました。

 ライダー現事務局長は、「この機関に対する信頼、自己信頼の素晴らしいメッセージ」を受け取ったことに対し、先輩方に感謝を表明し、その信頼というのは、「一つは価値の信奉、つまり社会正義の任務を信じていること、そして二つ目は100年にわたる業績の記録」といった二つの要素から導かれているとして、「かつては『突飛な夢』と表現されたものが成果を生み、機能することが分かりました。私たちの手元には成果を出すことができる手段があるのです」と結びました。

 総会最終日の21日にはアントニオ・グテーレス国連事務総長の演説が行われ、、職場における暴力・嫌がらせ(ハラスメント)対策に関する条約・勧告案が提出されて採決が行われます。また、仕事の未来に焦点を当てた画期的な創立100周年記念宣言の採否が検討されます。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。