第108回ILO総会

第108回ILO総会閉幕:画期的な条約、宣言などを採択

記者発表 | 2019/06/22
3分で振り返る第108回ILO総会(英語・3分16秒)。閉会式模様の写真もあります。

 2019年6月10日にジュネーブで開幕した第108回ILO総会は、21日に2週間の日程を終えて閉幕しました。日本を含む187加盟国中178カ国から約6,300人の政府、使用者、労働者の代表に加え、30人以上の国家元首・政府首脳級のハイレベルゲスト、多数の国内・国際非政府組織(NGO)のオブザーバーが出席しました。仕事の未来に関連する七つのテーマについて開かれたテーマ別フォーラムには、国連機関その他の多国間機関のトップや政労使のハイレベル代表が参加しました。

 総会は最終日に仕事の世界における暴力とハラスメント(嫌がらせ)と戦う、前例のない条約と付属する勧告、そして人間中心の仕事の未来に向かう道を描く宣言を採択しました。

 変化する仕事の世界の中でILOに付託された任務の重要性と妥当性を再確認する「2019年の仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」は、ILO自体の行動のための行程表であるだけでなく、動員を呼びかけ、その意図を強く表明する文書となっています。仕事の未来を人間中心のレンズを通して見るこの宣言は、全ての労働者の十分な保護の確保を目的とした仕事に係わる制度機構の強化、そして持続可能で包摂的かつ持続的な経済成長並びに生産的な完全雇用の促進を通じて、人々が仕事の世界における変化から利益を得られるようにすることに強く焦点を当てています。

 宣言が定める具体的な行動分野には以下のようなものが含まれています。◇機会及び待遇における男女平等の実効的な実現、◇実効的な生涯学習と全ての人への良質な教育、◇全ての人に開かれた包括的で持続可能な社会的保護の機会、◇労働者の基本的な権利の尊重、◇十分な最低賃金、◇労働時間の上限、◇労働安全衛生、◇ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進し、生産性を高める政策、◇適切なプライバシーと個人データの保護を確保し、プラットフォーム労働を含み、仕事のデジタル変容に関連した仕事の世界の機会と課題に対応する政策と措置。

 宣言について、ガイ・ライダーILO事務局長は、「仕事の未来とはすなわちこの組織の未来であるため、本日採択されたのはこの機関の未来を導く羅針盤、行程表」と表現しています。

 創立100周年の記念すべき年に当たる今年の総会には、アントニオ・グテーレス国連事務総長を始め、30人以上の世界のリーダーが出席し、ILO、そしてILOに付託された任務である社会正義を支持する強いメッセージを発しました。最終日に演説したグテーレス事務総長は、「100年前に点された、ILOが掲げ進んでいるたいまつは、政府、使用者、労働者が意思決定の卓に共につき、包摂性のモデルを土台とし、社会正義を基礎とした新たな世界を構築する助けになるもの」と評した上で、宣言について、「世界中の人々に、より明るい未来に至る扉を開く歴史的な機会を記念するもの」と評価しました。そして、ILOがその付託された任務を次の100年間に提供する基盤を定める100周年記念宣言について、「野心的ながら、希望や意図を表明する以上のものであり、開発についての私たちの見方のパラダイム転換」を提案する文書との理解を示しました。

 グテーレス事務総長はまた、「2019年の暴力・ハラスメント条約(第190号)」及び付随する同名の勧告(第206号)の採択を歓迎しました。仕事の世界における暴力とハラスメントは「人権侵害または虐待となり得、平等な機会に対する脅威であり、許容できず、ディーセント・ワークと相容れない」と認識する条約は、「暴力とハラスメント」について、「心身に対する危害あるいは性的・経済的に害を与えることを目的とするか、そのような危害に帰する、あるいは帰する可能性が高い」行動様式及び行為またはその脅威と定義し、加盟国に対しては「全く容赦しない一般的な環境」を促進する責任があることに改めて注意を喚起しています。新しい国際労働基準は、契約上の地位にかかわらず、あらゆる労働者及び従業員を保護することを目指しており、研修中の人やインターン、見習い実習生、雇用契約が終了した労働者、ボランティア、求職者、求人広告への応募者なども含むものとしています。さらに、「使用者の権限、義務、責任を行使している個人」も暴力やハラスメントの対象になり得ることを認めています。

 暴力やハラスメントの発生場所に関しては、職場内のみならず、支払いを受ける場所や休息・休憩の場所、食事休憩を取っている場所、洗浄・衛生設備や更衣設備を用いる場所、仕事に関連した出張中や研修中、行事・社交活動中、情報通信技術(ICT)経由の場合を含む、仕事に関連した通信・コミュニケーションの過程、使用者の提供する宿泊設備、通勤中も含むものと規定されています。また、第三者が関与する場合もあることを認めています。

 ライダー事務局長は次のように述べて、採択を歓迎しました。「新しい基準は、誰もが暴力とハラスメントから自由な仕事の世界を享受できる権利を認めています。次の段階は、男女双方に、より良い、より安全で働きがいのある人間らしい労働環境が形成されるように、この保護を実践に移すことです。この問題に関して見られた協力と連帯、そして行動を求める一般の人々からの要求に鑑みると、迅速で幅広い批准と実施のための行動が必ずや期待できると信じています」。

 条約は批准国を法的に拘束するのに対し、勧告は拘束力のない指針として用いられます。宣言とは、加盟国による決議であり、権威ある公式な声明を発するために用いられます。

 総会の基準適用委員会はカザフスタンにおける「1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)」の適用など、批准条約の適用に関連した問題を扱う24件の個別案件を取り上げ、結論を採択しました。

 また、現行予算を0.83%上回る総額7億9,064万ドルの2020/21年度の事業計画/予算を賛成328票、反対9票、棄権1票で採択しました(日本は政労使共に賛成)。事業計画の具体的な成果目標などは、今総会の議論を受けて、2019年10~11月に開かれる第337回理事会で決定されます。

 総会の議長を務めたスイス連邦経済省経済事務局のジャン=ジャック・エルミジェ国際労働局長は、総会の成果は「世界の平和を支え、社会正義に向けた公約を永続させる力をILOに与えるもの」と評価し、「この総会は歴史に名を刻むものになるであろうことを認めようではありませんか」と呼びかけました。副議長はアンゴラの政府代表、ケニアの使用者代表、ブルガリアの労働者代表が務めました。

ILO創設100周年記念宣言とは

グレッグ・バインズILO管理運営・改革担当副事務局長

 「仕事の未来に向けた2019年のILO創設100周年記念宣言」の宣言の意義について、事務局の責任者としてこの審議を見守ってきたグレッグ・バインズILO管理運営・改革担当副事務局長は次のように説明しています。

 宣言は科学技術から気候変動、人口構造の変化から新たな技能の必要性まで、仕事の未来の主な課題と機会を見据えた短いながら決定的に重要な声明です。こういった切迫した問題に取り組むための手引き、他の国際機関との協力の足場を提供すると共に、100年前にILOに付託された社会正義の任務に加え、社会対話と国際労働基準の決定的に重要な役割を力強く再言しています。要するにこの宣言は、過去の成功を認め、今いる位置を確かめ、そして最も重要なこととして、今後どこに向かう必要があるかを見据えています。

 公正で持続可能な未来の展望を形成し、これに向けて進むためには、人間を中心に据えた仕事の未来に向けた取り組みを通じて人に投資する必要があります。これは仕事と技能と社会的保護への投資を意味します。これはまた、男女平等を支えることや、適正な賃金、労働時間の制限、就労に関わる基本的な権利に加えて安全と健康が確保されるよう、労働市場関連の制度・機構に投資することも意味します。さらに、持続可能な企業、経済成長、そしてディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が全ての人に実現するような環境を促進する政策の策定を意味するものでもあります。

 ILOが創立100周年を迎えた今の時代は、仕事の未来とその性質、人々が存在する場所とその尊厳に奥深い影響を与えている技術革新や人口構造の変化、気候変動、グローバル化に推進されて、仕事の世界を変容させるような変化が進行しています。このような中で宣言は前に進む道をILOに指し示しています。完全雇用、生産的な雇用、職業の自由な選択、そして全ての人にディーセント・ワークが実現した公正で包摂的かつ安定した仕事の未来を形成しようと思うならば、機会を捉え、課題に取り組む行動を起こすことが急務です。

 宣言はガイ・ライダーILO事務局長が創立100周年に先だって開始した七つの特別事業の一つである仕事の未来100周年記念イニシアチブの枠組みの中で、数年に及ぶ活動の成果物として採択されました。この作業はまず、加盟国内における政労使三者による対話から開始されました。対話を通じて各国・国際レベルでの優先事項、課題、機会に関する話し合いがもたれ、その結果が仕事の未来世界委員会の活動に投入され、委員会の提案は総会で宣言案をまとめる助けになりました。

 宣言とは、正式の権威ある声明を発し、特定の原則や価値に対して加盟国政労使が付与する重要性を再確認するために用いられるILO総会の決議です。拘束力はなく、批准できる文書でもありませんが、加盟国による象徴的及び政治的な活動を含み、幅広く適用されることを意図しています。例えば、1944年に採択されたフィラデルフィア宣言は、ILOの目的を定めていますが、そこに記されている基本的な原則は今日でもなお十分に通用し、100周年記念宣言の中でも再言されています。

 第108回ILO総会の討議資料や議事録、採択文書、投票結果などは、総会のウェブサイトでご覧になれます。ハイレベルゲストの演説を含む本会議やテーマ別フォーラムの模様は録画動画でご覧になれます。


 以上は次の2点のジュネーブ発英文広報資料の抄訳です。