2019年労働安全衛生世界デー

ILO新刊:仕事の変化と共に登場してきた新たな安全・健康問題

記者発表 | 2019/04/18
2019年労働安全衛生世界デー報告書の内容を3分で紹介(英語・3分8秒)

 ILOは労働災害や職業病の防止/予防の大切さに注意を喚起するために4月28日を労働安全衛生世界デーと定め、毎年、世界的な啓発キャンペーンを実施しています。今年の世界デーは「安全衛生と仕事の未来」がテーマとなっています。

 2019年はILO創立100周年に当たることから、世界デーの報告書は『Safety and health at the heart of the future of work: Building on 100 years of experience(仕事の未来の中心に位置する安全と健康:土台となる100年の経験・英語)』と題し、労働安全衛生分野におけるILOの100年の活動を振り返ると共に仕事の世界に新たに登場してきた安全・健康問題に光を当てています。報告書は、就労形態や人口動態、科学技術、環境の変化によって、心理社会的リスクや労働関連ストレス、循環器疾患や呼吸器疾患を中心とした非伝染性疾患、がんなどの課題の増大を含み、労働安全衛生上の新たな懸念事項が発生している現状を示しています。

 変化の主な推進力として、報告書は次の4点を挙げ、課題のみならず改善の機会も提示していると記しています。

  • デジタル化、ロボット工学、ナノテクノロジーなどの科学技術は、心理社会的健康に影響を与え、計り知れない健康危害を秘めた新素材を導入する可能性がある一方で、正しく適用された場合には、危険有害要素への暴露を減らし、訓練や労働監督を円滑化する助けになる可能性も秘めています。
  • 若年労働者の職業上の負傷率が相当に高く、高齢労働者の安全な就労には機器や実務面での適応が必要であるため、人口構造の変化も重要です。労働力に加わる女性が増えてきていますが、女性は非標準的な就労取り決めの下で働き、筋骨格障害のリスクが高くなる傾向があります。
  • 開発や気候変動は大気汚染や熱ストレス、新しい疾患、天候・気温形態の変化による雇用喪失の可能性などのリスクをもたらす一方で、持続可能な開発や環境に優しいグリーン経済を通じて新たな仕事が生まれることにもなります。
  • 作業組織の変化は、より多くの人が労働力に加わることを可能にするような柔軟性をもたらす一方で、心理社会的問題(不安定性、プライバシーや休息時間が損なわれる危険性、不十分な労働安全衛生や社会的保護など)や長時間労働につながる可能性もあります。現在、週48時間超の長時間労働に従事する人は世界の労働力の36%近くに達しています。

 このような課題に照らし合わせて、報告書は政策策定に携わる人々その他の利害関係者が重点を置くべき分野として、◇労働安全衛生上の新たなリスクを予測する活動の強化、◇より多くの専門分野を巻き込んだ取り組みの採用、◇労働安全衛生問題に関する人々の理解の向上、◇公衆衛生活動とのつながりの強化、◇国際労働基準及び国内法制の強化、◇政府及び労使の社会的パートナーの協同活動の強化の六つを提案しています。

 報告書の中心的な著者であるマナル・アッジILO労働安全衛生技術専門官は、確立されたリスクに対するより効果的な予防活動が見られるようになっている現状を示しつつも、「現在見られる働く場所や働き方の大きな変化」を挙げて、責任の分かち合いを形成するような一般的な予防・防止文化に加えて、この変化を反映した安全衛生体制の必要性を指摘しています。

 毎年、世界全体で3億7,400万人を超える業務関連傷病者が発生しています。労働安全衛生に関連した原因による労働損失日数は、世界全体の国内総生産(GDP)の約4%に相当し、国によっては6%に上ると見られます。業務関連の原因で命を落とす人の多くが疾病によるものであり(死亡者全体の86%)、1日当たりにすると労働災害による死亡者が1,000人台であるのに対し、職業病による死亡者は6,500人台に上ります。三大死因は循環器疾患(全体の31%)、労働関連のがん(同26%)、呼吸器疾患(同17%)となっています。

 アッジ専門官は、経済的なコストに加え、このような疾病や災害がもたらす計り知れない人々の苦しみを認識する必要性を指摘した上で、「さらに一層悲劇的なことは、その多くが予防可能であること」と説いています。そして、1月に発表され、6月の総会で検討されることになっている仕事の未来世界委員会の報告書が、労働安全衛生を就労に関わる基本的な原則及び権利の一つとして認めるよう提案していることについて、「真剣に検討すべき」と訴えています。

 3章構成の報告書は、第1章で100年間に及ぶILOの労働安全衛生分野の取り組みをまとめ、続く第2章で科学技術、人口動態、持続可能な開発、作業組織の変化の4分野に分けて新たな課題と機会を示した上で、第3章でこのような仕事の未来の新たな課題と機会に対応する方法を示しています。ILO駐日事務所では、現在、報告書の日本語訳を準備中です(序章が完成しました)。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。