強制労働・児童労働

ウズベキスタンにおける強制労働・児童労働根絶に向けた進展を活動家らが歓迎

記者発表 | 2019/04/03

 ILOは2013年からウズベキスタンで綿花収穫における児童労働のモニタリングを実施し、2015年からは世界銀行との合意の一環として、モニタリング対象に強制労働も加えてきましたが、2019年4月1日にブリュッセルで発表された2018年のモニタリング結果からは、もはや政府による児童労働と強制労働の体系的な利用はないことが見出されました。このように政府の改革は一定の影響力を持っていますが、報告書は現地レベルではまだ多くの課題が残ると指摘しています。人権活動家らはこの進展を歓迎しつつもさらなる改革を求めました。

 『Third party monitoring of child labour and forced labour during the 2018 cotton harvest in Uzbekistan(ウズベキスタンの2018年綿花収穫期における児童労働・強制労働第三者モニタリング・英語)』によれば、2018年の収穫に携わった摘み手の93%が自発的な意思によるもので、学生・生徒や教員、医師、看護師の体系的な募集は過去のものとなったことが示されていますが、まだ現地レベルでは国の機関の職員による募集事例が見られ、206人の職員及び管理者が強制労働違反によって罰金や降格、解雇などの処分を受けたとされます。また、労働省と労働組合連合が運営するフィードバックの仕組みには2,500件以上の報告があり、調査が行われました。かつては深刻な問題であった収穫期の児童労働はもはや大きな懸念事項ではなくなっています。

 11年間の投獄の後、全面的な改革の一部としてようやく2017年末に解放され、2018年のモニタリングに参加した独立人権活動家のアザム・ファルマノフさんは、人々が実感できるほどに国が変わってきたことを挙げた上で、「まだ取り組むべき分野は多数あるものの、児童労働と強制労働に関して見られる大きな進展は、他の問題に関しても進展できるとの楽観的な思いを抱かせます」と評価しています。報告書の発表会に出席したウズベキスタンのタンジラ・ナルバエワ副首相も教育機関や地方自治体向けに様々な啓発プログラムや能力構築事業が導入され、フィードバックの仕組みが実行されたことを説明した上で、この分野での進展をさらに支えるために、ILO、世界銀行、市民社会との協力を続けたいとの希望を表明しました。発表会にはこのほかにも独立人権活動家や労使代表、欧州委員会、ILO、世界銀行の代表が参加し、報告書を巡る話し合いを行いました。

 報告書はウズベキスタンの木綿収穫作業従事者250万人の代表標本に対して調査員が単独で予告なく行った1万1,000件以上の聞き取り調査に基づいて作成されています。ハインツ・コラーILO欧州・中央アジア総局長は、政府機関のみならず、報道関係者や個別活動家の非常に重要な発言なども含む市民社会のあらゆる集団を網羅した取り組みは、ウズベキスタンの改革過程及び児童労働・強制労働に対する戦いの成功において「2018年の木綿収穫期を重要な里程標」にしたとして評価し、これは「結果の持続可能性を期待させる元気づけられる兆候」としつつも、いまだに少数ながら作業従事者のうち6.8%は参加を強制されており、これは17万人に相当することを指摘しています。

図:木綿収穫作業従事者の賃金と強制労働の推移(2015~18年)
青線はキロ当たり単価(スム建て)、赤線は木綿収穫作業従事者全体に占める強制労働者比率(%)

 ILOと世界銀行の勧告に従い、作業従事者の賃金は引き上げられました。ILOは政府が賃上げを続け、同時に自発的な参加を奨励するためにも、より幅広く労働条件全般の向上に取り組むことを提案しています。モニタリングからはまた、木綿収穫が多くの女性に自分が管理して家族の状況改善に使うことができる臨時収入を得るまたとない機会を与えていることから、賃上げがとりわけ農山村地帯の女性に利益をもたらしていることが示されました。木綿収穫作業に従事する平均期間は21日間で、得られる賃金は個人年間所得の39.9%を占めています。

 ウズベキスタンにおけるILOの第三者モニタリング・プロジェクトは、欧州連合や米国、スイスを大手出資者とする複数拠出国・機関が関与する信託基金を財源として実施されています。プロジェクトは今後、労働監督官や労働組合、地元の人権活動家、調査ジャーナリストへのモニタリング責任の漸進的な移管を中心とする残された課題に焦点を当てて進められます。ウズベキスタンの繊維・衣料産業への責任ある外国投資・貿易を可能にすることにも重点が置かれますが、これは強制労働の完全な根絶と同時に国内に多数の人間らしく働きがいのある仕事を創出する可能性を秘めています。


 以上はブリュッセル発英文記者発表の抄訳です。