ILO創立100周年

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」

 創立100周年を記念して、第1章「政労使三者構成原則と社会対話」から第9章「仕事の未来」まで9章構成でILOの過去、現在、未来を歴史的な映像資料や写真、音声ファイル、文書史料なども通じて探求できる対話型ウェブサイト(英語等6カ国語)を開設しました。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」

 創立100周年を記念してILOの過去、現在、未来を歴史的な映像資料や写真、音声ファイル、文書史料なども通じて探求できる対話型ウェブサイト「私たちの物語、あなたの物語」を開設しました。このサイトは9章で構成されており、1月9日から3月29日までほぼ1週間に1章ずつのペースでオープンしていきます。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第1章「政労使三者構成原則と社会対話」

 「社会正義の基礎を敷設する」と題する第1章は、ILOの根幹原則である「政労使三者構成原則と社会対話」を取り上げ、1919年当時の社会情勢から開始して、ILOが誕生した理由、ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領などのノーベル平和賞受賞者による社会正義を表現する言葉、ILOの歴史、「突飛な夢」とさえ評された三者構成原則の歩みなどが掲載されています。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第2章「権利と労働基準」

 「就労に係わるあなたの権利」と題する第2章では、「権利と労働基準」を取り上げ、ILOの活動の中心にある政府、使用者、労働者の三者による国際労働基準の設定と適用の仕組みを説明しています。結社の自由と団体交渉権、強制労働廃絶、児童労働撤廃、就労に係わる差別の撤廃といった、すべてのILO加盟国が尊重と促進を約している中核的な権利・原則に関連した条約・議定書の批准国一覧も掲載されています。聴覚障害があったために学校に行かせてもらえず児童労働者として働いていた青年、2年後の契約満了時に給与を全額支払うとの口約束に抗議すると1週間飲食を与えられずに部屋に閉じ込められた家事労働者。こういった権利の侵害をなくすため、ILOは国際労働基準を設定しています。労働は単なる商品ではありません。国際労働基準はILOが目指すディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に至る道なのです。ディーセント・ワークの確保によって人の生産性は上がり、成績も向上するため、これは労使双方の利益になるとミチェル・バチェレ国連高等人権弁務官は説いています。変化する環境の中で労使の保護と新たな権利を確立することによってILOは差別のない平等な世界に向けて戦い続けています。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第3章「平等と差別禁止」

 「自分自身になる自由」と題する第3章では、「平等と差別禁止」を取り上げています。先住民、障害者、移民、高齢者、女性、LGBTIと総称される性的少数者、HIV(エイズウイルス)感染者、家事労働者といった人々から差別体験を語ってもらった後、差別が社会にもたらす影響を説明し、ILOの取り組みを紹介しています。ケイティ・ペリーのミュージックビデオなどを制作している日系オーストラリア人のタニムラ・アヤ監督の、女性であるがゆえに映画・テレビ業界で被った差別に関する証言も掲載されています。差別は基本的人権の侵害であり、個人の機会を閉じるだけでなく、人間の才能を無駄にし、経済進歩を遅らせ、社会の緊張を高め、不平等を拡大します。差別が人の精神衛生に与える影響は周囲に波及するドミノ効果もあります。失われた経済成長の点で差別が世界に与える損失は4,000億ドルを超えると見られます。差別の撲滅は「全ての人にディーセント・ワーク」を目指すILOの取り組みの必要不可欠な一部です。差別のない世界は可能ですが、それを達成するには私たち皆に担うべき役割があります。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第4章「雇用」

 第4章「雇用」は、標題に「どんな仕事でもいいわけではない」と掲げ、平和、社会正義、社会的包摂、経済開発、個人の充足の基本的条件であるところのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に向けた取り組みを紹介しています。今日の世界が直面している様々な問題の根本原因である貧困問題の解決には、より多くのより良い仕事が必須です。このようなディーセント・ワークの実現を阻む障害としては、不平等や紛争・災害、若さ、農村から都市へと向かう集団的大移動、非公式(インフォーマル)な仕事、労働力移動などを挙げることができます。例えば、コロンビアで50年以上に及んだ紛争の根本原因は仕事と成長の機会の欠如でしたが、農村に収入の機会を創出することによって持続可能で確固とした平和が戻りつつあります。仕事の世界が急速に変化している時代においては、適正な技能や雇用創出に向けた投資、強固な制度機構が必要です。ディーセント・ワークを阻む問題が複雑であるように解決策もまた複雑であり、したがってILOは政労使の対話を通じて政策が策定・実施され、制度機構が構築されるよう加盟国を支援しています。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第5章「社会的保護」

 第5章は「独りではなく」と題し、「社会的保護」がテーマとなっています。病気になった時、障害を得た時、妊娠した時、失業した時、高齢で働けなくなった時といったリスクに対して人々を守り、貧困に陥るのを防いでくれるのは社会的保護(社会保障)です。これには医療給付、疾病給付、失業給付、老齢給付、業務災害給付、家族給付、母性給付、廃疾給付、遺族給付といった種類があります。世界人権宣言にも定められているように社会保障への権利は人権であり、この権利は誰にでも開かれています。にもかかわらず、十分な社会的保護が適用されているのは世界人口の29%に過ぎず、今日でも世界全体で40億人が社会的保護を受けていません。ILOは全ての人に社会的保護が提供される普遍的社会的保護に向けて加盟国を支援しています。老齢年金や保健医療制度の整備など、過去10年間に支援を提供した国は136カ国に及びます。普遍的社会的保護は国連の定める複数の持続可能な開発目標(SDGs)達成のカギを握っています。社会的保護なしに貧困の撲滅、不平等の縮小、男女平等の達成は不可能です。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第6章「仕事と統治」

 第6章は「仕事と統治(ガバナンス)」をテーマとし、「働く際に従うべきルール」と題しています。日々の仕事の中で法規やルールについて考えることはあまりないかもしれません。しかし、これは仕事を安全なものとし、まともな労働条件を全ての人に確保する上で決定的に重要です。

 過去100年の間にILOで採択された条約や勧告といった国際労働基準は、国内法や政策、官民機関の活動に取り入れられた包括的な法体系を形成しています。例えば、ILOが誕生した20世紀初頭は職場で命を落としたり、負傷する人が多く、労働者の安全と健康の保護は優先事項の一つとされ、最初の総会で採択された勧告10本中4本までが労働安全衛生に関するものでした。政府が労働法の遵守を確保する手段の一つとして、職場の労働監督などを通じたその効果的な実施が挙げられます。この任務を最前線で担っているのが労働監督官ですが、政府の予算が職場の増加や仕事の世界の変化に追いついておらず、全ての職場を監督してあらゆる状況に対応することがますます困難になってきています。ILOは労働法の適正実施及び労働関連機関の効率的な運営の確保に向けて、労働監督制度の整備や、労働行政制度の機能確保、労働法改革支援、政労使三者構成原則や社会対話、労使関係、斡旋や調停などの労働紛争防止策といった分野における支援を提供しています。

 法律が整備されれば、法による統治が直面する課題がなくなるわけではありません。例えば、ILOの「最悪の形態の児童労働条約(第182号)」は187加盟国中182カ国が批准していますが、それでもなお世界全体で1億5,200万人の児童労働者が存在しています。強制労働条約(第29号)の批准国も187カ国中178カ国を数えますが、いまだに強制労働被害者は2,500万人に及び、加害者が不当に得ている利益は年に1,500億ドルにも上ります。ILOは様々な活動を通じて加盟国の労働法実施を支援していますが、必要な場合には条約の更新も行います。強制労働条約に関しては、新しい形態の現代の奴隷制の登場に対応し、2014年に付属議定書が採択されました。また、移民労働者や低技能労働者が悪辣な仲介業者によって食い物にされるのを防ぐため、政労使その他と協力して、強制労働・人身取引の防止支援、労働者の権利保護、労働力移動の経費軽減などの措置を講じています。こういった様々な統治手段を駆使してILOは全ての人にディーセント・ワークが実現された世界を目指して世界中で労働条件向上を支援しています。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第7章「労働条件」

 第7章は「お疲れ様でした」と題し、「労働条件」をテーマとしています。産業革命時の工場から今日のグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)に至るまで、ILOは創立以来、適切な労働条件の確保を優先事項の一つに掲げてきました。働く人々は労働安全衛生、貧困対策として重要な最低賃金、過度の長時間労働の制限、母子の健康と福祉に不可欠な母性保護などといった適切な労働条件を享受する権利がありますが、職場における危害によって命を落とす人の数は今でも世界全体で278万人(1分当たり5人以上に相当)に上ると推定されます。業務関連の傷病は当事者及びその家族にとっての悲劇であり、使用者を含む直接的な当事者のみならず、経済全体が負担する経済的なコストも国内総生産(GDP)の世界合計の約4%と、相当なものに達すると見られます。ILOは労働安全衛生防止グローバル行動計画などを通じて、140カ国以上の加盟国に、災害防止策への投資奨励、労働監督官の研修、効果的な法の整備、安全衛生事項の教育への組み込みなど様々な支援を提供し、職場の安全と健康を高める加盟国政労使の能力育成を図っています。

 パートタイム労働、臨時労働、派遣・請負労働、ギグ労働などの非標準的な就労形態が先進国・途上国を問わず、世界中で増えてきています。この新しい働き方の柔軟性は就労の円滑化や仕事と生活の調和の向上をもたらす可能性があるものの、社会保障からの排除などの問題点も指摘されています。グローバル化がもたらしたグローバル・サプライチェーンの成長も雇用や経済・社会開発の機会を形成する一方で、劣悪な労働条件と雇用関係が悲惨な結果を招く事態も生じています。どのような働き方であろうと人間らしく働きがいのある仕事が望ましく、ILOでは国際労働基準の促進、法のより良い執行、社会対話の強化を提唱して、全ての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を目指しています。この章には週労働時間が35時間未満や48時間超の就業者の割合の国別データ(日本はなし)や日本の石綿症患者の証言動画なども掲載されています。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第8章「持続可能な企業」

 第8章「持続可能な企業」は、「地球と人々のためのビジネス」と題し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)とも関連があり、ILOが目指す「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を全ての人に」という目標の達成のためにも求められている「持続可能な企業」の促進に向けたILOの活動を紹介しています。自社のニーズ及び関心を従業員その他関係者及びより幅広い社会のニーズ及び関心と調和させた場合に企業は持続可能になります。ILOではこのような企業が存在できる環境作りを支援しています。実際の企業向け支援は、ILOの活動の根幹にある三者構成原則の下、政労使三者による話し合いを通じて生み出された世界唯一の企業向け指針である「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」が示す手引きに沿って提供されています。

 具体的な事業計画には、起業から事業改善まで企業家向けに提供される実践的な訓練プログラム「開業・事業改善計画(SIYB)」、若者向けのビジネス研修プログラムとして正規の履修課程に組み込んだ国もある「ビジネスについて知ろう(KAB)計画」、農業協同組合の運営研修プログラムであるMy.COOP、企業内カウンセリングと研修を組み合わせて生産性と労働条件の向上を図る「競争力と責任ある企業を支える(SCORE)計画」、女性のエンパワーメントを目指して訓練に加えて起業に必要な実際の支援も提供する「女性起業家育成(WED)計画」などが含まれています。国際労働基準に関連した活動としては、多国籍企業宣言をもとにして企業労使の具体的な相談に応じるヘルプデスクも存在します。

 近年、企業のあり方は再考を促されています。例えば欧州連合(EU)では全企業の約1割が協同組合を中心とした社会的企業・連帯経済の事業体であり、就業者の約6%がそのような事業体で働いているといったように、経済・社会目標を明確に掲げた事業体が増えてきています。このような動きの中で、「2002年の協同組合の促進勧告(第193号)」に従った協同組合の促進はILOの重要な活動の一部となっています。ILO企業局のビック・バン・ブーレン局長は、社会的サービスの欠如と環境問題という世界が直面している二大リスクに対処する解決策は持続可能な企業であると説いています。

ILO100周年記念サイト「私たちの物語、あなたの物語」第9章「仕事の未来」

 第9章は「未来を見据えて」と題し、「仕事の未来」を取り上げます。技術進歩や高齢化、気候変動など、仕事の世界に様々な影響を与えている大規模な変化は機会と不安をもたらしています。変化の方向とそれが仕事に与える影響は私たちの政策や行動にかかっています。未来の仕事を創出する可能性が高い分野としては、環境に優しいグリーン・ジョブ、ケア経済、ギグ経済、農山漁村経済、グローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)、ロボット時代の六つを挙げることができます。

 仕事の世界の変化は新たな技能を要請し、男女間格差を縮小する機会を提示してもいます。労働者協同組合などの新たな事業形態の成長が見られますが、ILOの「2002年の協同組合の促進勧告(第193号)」はそういった展開の指針になり得ます。不平等の拡大や人々の生活の中で仕事が占める役割の変化に応え、社会的保護制度の適応を図り、全ての人の保護に向けて近代化を進める必要があります。

 21世紀に社会正義を提供する分析的基盤を示すことを目指して検討を行ったILOの仕事の未来世界委員会は1月に出した報告書で、人と仕事を経済・社会政策と企業活動の中核に据えることによって社会契約を強化するという「人間中心アジェンダ」を提案しました。このアジェンダは人の能力、仕事に係わる制度機構、持続可能なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の三つの柱に対する投資の増大で構成されています。ILOは創立以来100年にわたり、国際労働基準を社会正義とディーセント・ワークの基盤としてきました。ILOの提唱する社会対話と政労使三者構成原則は経済成長を下支えしてきました。今後も共に力を合わせて将来の課題に対する解決策を探していくことが大事です。未来を見るに当たって最も大切なことは、未来は既に定まっているものではなく、私たちが望むように構築できるという点を忘れないことです、とガイ・ライダーILO事務局長は説いています。

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