世界の雇用及び社会の見通し-動向編2019年版

ILO新刊:世界の雇用の主な課題は劣悪な労働条件

記者発表 | 2019/02/13
報告書の内容を著者らが2分弱で解説(英語・1分54秒)

 本日発表されたILOの年次刊行物『World employment and social outlook - Trends(世界の雇用及び社会の見通し-動向編・英語)』の2019年版は、2018年に世界の就業者33億人の大半が経済保障、物質的福祉、機会平等の点で不十分な状況にあったことを指摘して、世界の労働市場の主な問題は雇用の質の低さであり、不十分な労働条件を受け入れることを余儀なくされている人が数百万人に上る現状を示しています。2018年に世界の失業率は前年より0.1ポイント低下して5.0%、失業者数は1億7,200万人で、今後2年あまり、ほぼこの状況が続くと予測されています。報告書は、世界的に見られる失業問題の改善が労働の質の向上に反映されていないと記しています。そして、このようなディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の大きな不足の解消に向けた歩みの現状のペースでは、持続可能な開発目標(SDGs)、とりわけその8番目の目標に定められている「ディーセント・ワークを全ての人に」という目標の達成は多くの国で非現実的に見えると指摘しています。

 デボラ・グリーンフィールドILO政策担当事務局次長は、SDG8は単なる完全雇用だけでなく、雇用の質に関するものでもある点を挙げ、「平等とディーセント・ワーク」は、持続可能な開発を下支えする二つの柱であると説いています。

 報告書はまた、新技術によって可能になったものを含む、幾つかの新しいビジネスモデルについて、政策策定者による課題対処が行われない限り、公式(フォーマル)経済における就労の増加や雇用保障、社会的保護、労働基準における向上など、労働市場で達成された幾つかの進歩を損なう危険性をはらんでいると警鐘を発しています。

 報告書が光を当てた問題の一つとして、労働力率における男女間格差縮小の歩みのなさが挙げられます。男性の労働力率は75%であるのに対し、女性の労働力率は48%に過ぎず、その上、女性は潜在的不完全活用労働力のはるかに多くを占めています。このほかに、世界の労働力の61%に当たる20億人という驚異的な数の労働者が就業の場としている非公式(インフォーマル)経済問題における進歩の欠如、就労も就学も訓練受講もしていないニート状態にあり、将来的な雇用展望が脅かされている25歳未満の若者が5人に1人を上回っている状況などが懸念事項に挙げられています。

 散見される進展分野としては、世界経済が大幅な景気後退を回避できたとしたら多くの国で失業率がさらに下がると予測されること、中所得国を中心に過去30年間に達成された働く貧困層(ワーキング・プア)の激減、就学者または訓練受講者数の増大が指摘されています。

 報告書を作成したILO調査研究局のダミアン・グリムショー局長は「働いているからといって常にまともな暮らしが保障されるわけではありません」として、働いていても極度のあるいは中程度の貧困状態にある人が丸々7億人にも上ることを指摘しています。

 報告書が記す地域別の主な状況は次の通り。

◎アフリカ
失業率はわずか4.5%であり、生産年齢人口の6割が就業者であるものの、これは労働市場がうまく機能しているというよりはむしろ、安全保障や人並みの賃金、社会的保護を欠く質の低い仕事に就く以外の選択肢がない労働者が多い現状を示すものと言えます。今後、労働力は年に1,400万人以上のペースで増えていくと予想され、2020年までの予想経済成長率はこの急成長する労働力に対応する数の質の高い雇用を創出するには低すぎると見られます。

◎北米
2019年の失業率は最低水準の4.1%と予想されるものの、雇用成長も経済活動も2020年からは下降が予測されています。基礎教育を最終学歴とする人が失業する可能性は高等教育修了者の2倍以上に達しています。この地域はデジタル労働プラットフォームを主導しており、そのような労働の密接なモニタリングがますます政策関係者の関心事項になってきています。

◎中南米・カリブ
景気回復にもかかわらず、2019、20年の年間雇用成長率はわずか1.4%と予想され、域内諸国の労働市場の状況の違いを反映して地域の失業数値の改善は比較的鈍くなっています。就労形態を問わず、依然としてインフォーマル就労と雇用の質の低さが幅広く見られます。

◎アラブ諸国
地域の失業率は2020年まで7.3%と高止まりが予想されるものの、湾岸協力理事会(GCC)非加盟国の失業率は加盟国の約2倍に達しています。地域の就業者の41%を移民労働者が占めていますが、とりわけGCC加盟国では平均で半分以上が移民労働者です。女性の失業率(15.6%)は男性の3倍。若者の状況も不均衡に悪く、その失業率はより年長の人々の失業率の4倍に達しています。

◎アジア太平洋
過去よりはスローダウンしたものの経済成長は持続し、失業率は2020年まで世界平均を下回る3.6%前後で安定すると見られます。産業構造の変化によって農業を後にする労働者の動きがあるものの、これは雇用の質の大幅な改善にはつながらず、労働者の大きな割合が雇用保障や書面による契約、所得の安定性を欠いています。社会的保護が大幅に拡張された国もあるものの、貧困率が最も高い国々では適用率が極めて低い状況が続いています。
日本について報告書は失業率の継続的な低下傾向を予測していますが(2017年2.8%→2020年2.3%)、米国同様、失業者数の流入/流出量の低下に基づく近年のこの失業率の低下を労働市場の活力低下を指し示すものとして、理論上、労働市場のダイナミズムが高いほど労働者と仕事のマッチングも向上すると説いています。

◎欧州・中央アジア
北欧・南欧・西欧の失業率はこの10年来最も低く、2020年まで下がり続けると予想されます。東欧では2019、20年に就業者数は毎年0.7%ずつ低下すると予想されるものの、労働力人口も同時に低下するため、失業率は下がると見込まれます。しかし、長期失業率が4割を超える国もあり、中央・西アジアではインフォーマル経済で働く人が依然として多く、就業者の43%に達すると見られます。働く貧困層、雇用の質の悪さ、なかなか解消されない労働市場における不平等の諸問題が依然として地域の懸念事項です。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。