BRICS労働・雇用大臣会合

社会対話に向けたBRICS諸国の公約を評価-ILO事務局長

記者発表 | 2018/08/03
ダーバンで開かれた第4回BRICS労働・雇用大臣会合で演説するライダーILO事務局長

 2018年8月2~3日に南アフリカのダーバンで開かれたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の第4回労働・雇用大臣会合に出席したガイ・ライダーILO事務局長は、発表された共同宣言を歓迎する演説を行いました。この宣言は、仕事の未来とデジタル化によってもたらされた課題に応えるために、政府と社会的パートナー(労使団体)が社会対話に従事することを促進するBRICS諸国の公約です。宣言はまた、若者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に向けた機会の円滑化、職場における男女平等に向けた進歩の醸成、万人を対象とした持続可能な社会保障制度の促進も呼びかけています。

 ライダー事務局長は「仕事の変化がとりわけ奥深く加速する時代において社会対話に内在する価値」に光を当て、政労使の三者による協力が直面している課題と圧力に言及し、「最善の対応は、社会対話を機能させることによって、その付加価値を示すことではないかと思う」と説きました。また、若者に人間らしく働きがいのある生産的な仕事を確保する緊急の必要性に注意を喚起して、「課題の大きさ、需要側と供給側の介入措置を調和させる同時並列的な複数の取り組みが必要なこと、私たちの活動の中心に技能形成を置くべきこと」という既知の理解事項を挙げた上で、若者にとってのものを中心とした労働市場の今日及び今後の課題に取り組むために今年後半に雇用サミットを開く南アフリカの計画を歓迎しました。

 BRICS会合のテーマである「包摂的な成長と繁栄の分かち合い」に関連し、事務局長は「ほとんど未完の作業」としての「女性の参画と同一賃金」に注意を喚起し、ILOが主導して世界中で同一価値労働同一賃金を促進している「同一賃金国際連合(EPIC)」への参加をBRICS諸国に呼びかけました。さらに、女性の労働市場参加を妨げる最大の障壁として、育児や介護といった無償のケア労働を挙げ、BRICS諸国でも幼い子どものいる男性の就業率が88%であるのに対し、同じ立場の女性の就業率は42%に過ぎない事実を指摘して、世界中で非常に顕著に見られる「母親就労ハンディキャップ」に注意を喚起しました。また、ケアの職業化という正しい経済へ向かう道を歩むならば、BRICS諸国で新規に創出される雇用は1億5,900万人分をくだらないだろうとのILOの予測を示しました。

 近年、BRICS諸国は社会的保護制度の分野で大きな進展を示し、関連するILO条約の批准にもその事実は反映されていますが、これについて事務局長は「かつては保護されていなかった数百万人の人々が今は所得保障と保健医療の機会を高める給付を享受している」として評価しました。そして、仕事の世界における主な課題に取り組む重要な手段として、昨年発表されたBRICS諸国の社会保障枠組みとBRICS労働研究所ネットワークを挙げ、ダーバンで署名される予定の社会保障協力覚書及びネットワークのILO国際研修センターとのパートナーシップ強化の動きを歓迎しました。

 最後に、大臣らの今後の活動計画に関係するものとして、ラマポーザ南アフリカ大統領が共同委員長の1人を務める仕事の未来世界委員会の報告書が来年1月に発表されることを紹介しました。

 ILOは労働・雇用大臣会合の討議に資するよう、BRICS諸国の女性労働若者の就労社会対話社会保障についてまとめた資料を準備しました。

◎レソト、ナミビアでディーセント・ワーク国別計画に署名

 ライダー事務局長は南アフリカに加えて、レソトナミビアも訪れました。7月29~31日に初の公式訪問を行ったレソトでは、レツィエ三世国王やトーマス・タバネ首相、労使代表などと会談し、同国でディーセント・ワークを達成するための国別計画に署名しました。

ナミビアでディーセント・ワーク国別計画に署名したライダーILO事務局長と同国政労使その他関係者

 8月5~7日にナミビアを公式訪問したライダー事務局長は同国の政府及び労使団体代表と共に2018~23年のナミビアのディーセント・ワーク国別計画に署名しました。従来のものに置き換わる新しい計画は、児童労働や社会的保護、労使関係、雇用、家事労働、非公式(インフォーマル)経済、労働安全衛生、主要な集団への支援、男女平等といった介入が必要な幅広い分野を扱っています。ナミビアでは若者の失業率が高く、非公式経済が成長しているため、計画は雇用促進を優先事項としています。また、労使関係と社会対話の強化を目指し、最低賃金や育児、介護といったケア労働、母性保護、職場における暴力と嫌がらせ(ハラスメント)、労働安全衛生、職場におけるHIV(エイズウイルス)及びエイズへの対応を中心とする労働条件に焦点を当てることによって社会正義を促進しています。

 署名式典に出席したエルキ・ンギムチナ労働・労使関係・雇用創出大臣は、ライダー事務局長の来訪を歓迎した上で、「これまでに示されてきた政労使三者のチーム精神は、この国と将来世代のために、仕事の世界が直面している問題に取り組むことに焦点を当てるよう社会的パートナーを奨励しています」と説明して、共に取り組むことを呼びかけました。

 ナミビア使用者連盟(NEF)のティム・パークハウス事務局長は、これまでの計画同様今回のディーセント・ワーク国別計画についても実施する用意があることを再確認しました。署名式典にはナミビア労働者全国組合(NUNW)とナミビア労働組合会議(TUCNA)の二大労働組合の代表が出席しました。NUNWのジョブ・ムニアロ書記長代行はILOの支援に対する感謝の意を表明した上で、ディーセント・ワーク国別計画が開発の中心を占めることを強調しました。TUCNAのパウロス・ハンゴ会長はディーセント・ワーク国別計画に至った共同努力を認め、全国的最低賃金を最優先課題に掲げることを提案しました。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、仕事の世界の懸念事項に取り組むナミビア政労使の貢献を認め、このディーセント・ワーク国別計画は野心に不足がない計画であり、「これより野心的でなくするのは非現実的」とした上で、計画の署名は「物語の始まり」に過ぎないとして、その実施は、ナミビアの民に仕事の世界における社会正義の未来を確保するために、政労使三者の参加を要請する責任分担となることに注意を喚起しました。  式典に出席したレイチェル・オデデ国連常駐代表代理は現在の国連パートナーシップ枠組み(UNPAF)や国連が一体となって活動を提供するという考えの下でのディーセント・ワーク国別計画の重要性に言及しました。

 事務局長は滞在中、仕事の未来に関する講演も行いました。


 以上は次の3点の英文記者発表の抄訳です。