第107回ILO総会

第107回ILO総会開幕:仕事の世界の課題に取り組む政労使三者構成の精神を新たにすることを呼びかけるILO事務局長/労働者側副議長に日本の郷野ILO理事

記者発表 | 2018/05/28
第107回ILO総会開会式模様(英語)

 日本を含む187の加盟国から政府、使用者、労働者の代表5,000人以上が参加して開かれるILOの年次総会として、2018年5月28日にジュネーブのパレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)において第107回ILO総会が開幕しました。2週間の日程の中では職場における暴力や働く女性、社会対話、国連改革の文脈から見たILOの開発協力基準適用委員会における世界各国の労働者の権利に係わる状況や加盟国の経験を反映した労働時間関連基準に関する総合調査の検討など、幅広い議題が審議されます。

 ガイ・ライダーILO事務局長は開会挨拶で「世界における緊張の高まり」に警鐘を発し、「この総会及びILOの成功の前提条件」として、「政労使三者構成原則、妥協、合意の精神」を示すことを呼びかけました。事務局長は多国間主義を通じた国際協力を阻むますます大きな課題として、世界に見られる「新たな残忍性」に触れ、「ILO及びその総会は、その行いと達成する結果を通じて、そのような悪影響に対する砦にならなくてはならない」との固い信念を示しました。そして、このような環境下においては、一般討議議題の社会対話に関する討議は「時宜を得たものであり、仕事の世界で起こりつつある変容に取り組む手段としてこれを研ぎ澄ます機会」であると説きました。

 今総会では職場における暴力と嫌がらせ(ハラスメント)と闘う新たな基準の制定に向けた最初の討議が行われますが、事務局長はこれに関し、「暴力とハラスメントから完全に自由な職場を保障する道」を開くことを参加者に呼びかけました。そして、「MeToo(私も)」キャンペーンで鋭い焦点が当てられているセクシュアル・ハラスメントを含む職場におけるあらゆる形態の暴力とハラスメントに反対する行動の必要性を強調し、「かつてないほど声高な行動を求める呼びかけに対する私たちの答えは『UsToo(私たちも)』でなければならない」と訴えて真の違いをもたらすような結果を生み出すことを出席者らに促しました。

 ライダー事務局長はまた、「仕事の未来とはILOにとっての未来も意味する」として、来年初めに仕事の未来世界委員会の大型報告書が発表される予定であることを明らかにしました。さらに、本総会に討議資料として提出している自らの報告書『働く女性100周年記念イニシアチブ:平等への一押し』とアラブ被占領地の労働者の状況に関する事務局長報告付録についても紹介しました。前者はなかなか解消しない男女格差を縮小するための革新的な行動を呼びかけており、労働事情に関して明るい報告がほとんど見られない後者においては、パレスチナの勤労者が直面している現実を幾らかでも改善できる潜在力を秘めたILOの活動を示しています。

 6月1日には2016年のノーベル平和賞の受賞者でもあるコロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領による特別演説が行われます。6月7日に開かれる仕事の世界サミットでは、危機や紛争、災害の影響から抜け出そうとしている国々において平和と安定性を確保する上で仕事やディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が果たす役割に関する話し合いが行われます。当日は、アイルランドのマイケル・D・ヒギンズ大統領、中央アフリカ共和国のフォースタン・アーシャンジュ・トゥアデラ大統領、イラクのハイダル・アル・アバーディー首相による特別演説も予定されています。

第107回ILO総会議長・副議長 © Crozet / Pouteau

 総会初日には総会役員の選出も行われ、議長として、ヨルダンのサミール・ムラド労働大臣、副議長として、スイスのジャン=ジャック・エルミジェー政府代表、アラブ首長国連邦のカリファ・カミス・マッタル使用者代表、そして日本の労働者代表代理である日本労働組合総連合会(連合)の郷野晶子参与(ILO理事)が選出されました。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。