造船・船舶修繕産業

造船・船舶修繕における安全衛生向上に向けてILO専門家会議が新たな実務規程を採択

記者発表 | 2018/02/06

 政府、使用者、労働者側の代表が出席し、2018年1月22~26日にジュネーブのILO本部で開かれた専門家会合は、造船と船舶修繕における安全衛生に関する新たな実務規程を採択しました。

 1974年刊行の現在の実務規程を改訂する新しい規程は、ロボットシステムの利用などといった、この43年間にこの業界で起こった多くの変化を反映し、とりわけ労働安全衛生マネジメントシステム、変革管理、安全作業計画を基盤とした予防的取り組みの必要性に焦点を当てています。造船・船舶修繕施設におけるロボット利用の増加から労働安全衛生マネジメントシステムの実施に至るこの産業の大きな前進を捕捉するよう更新された新しい実務規程は、自らが直面しているリスクを知り、このリスクに取り組む安全衛生活動に全面的に参加し、危険で有害な状況から身を離す労働者の権利など、この産業の労働安全衛生向上に向けた詳細かつ包括的な手引きを含んでいます。

 会議の参加者からは造船・船舶修繕における労働安全衛生向上の重要性を強調する声が聞かれました。労働安全衛生の成績向上は負傷率や死亡災害を減らし、被災者の家族や社会が被る関連する経済的コストを低下させるだけでなく、生産性と企業成長のより高い伸び、より安全で環境に優しい産業部門の形成に寄与し、労働安全衛生関連の出来事の発生に係わる人々の苦しみを減らすことになります。

 会議のセザル・ゴメス議長は、この業界で25年以上の経験を有するベテランとして個人的に証言できることとして、「実務規程改訂版の採択は、造船及び船舶修繕産業における里程標」と評し、この産業の安全衛生向上に向けた過去の努力が慣行の改善につながったのは確かなものの、いまだに多くの危険があって完全な排除・制御はできていないことに注意を喚起した上で、今回の交渉における政労使の協力の精神を「誇らしい」と評価し、「労働者の保護がこの産業で大いに必要とされている投資を保護することになる点が十分に認識されている」と語りました。ウォーリック・ウィリアムズ使用者側副議長も、「造船場に働きに来る労働者が安全で健康的な作業環境の中で働くことは私たち皆の関心事項」と声を揃えました。デボラ・バランス労働者側副議長は、この産業が直面している労働安全衛生分野における課題は巨大で、あまりにもしばしば人命の喪失が目撃されてきたことを挙げた上で、「次に私たちが共有する責任は、この包括的でしっかりとした実務規程の適用確保」と呼びかけました。ウェンフイ・フェイ政府代表とテニオラ・ファイェミ政府代表は、「政労使の素晴らしい貢献のおかげで成立したこの安全衛生に関する実務規程をもって、私たちは今や、より良い明日を迎えるために造船・船舶修繕産業が必要とする労働安全衛生に関する最新のツールと手法を備えたと言えます」と語っています。

 世界全体で約190万人の労働者が従事する造船・船舶修繕産業ですが、景気循環に依存するところが大きいため、近年は極めて困難な情勢にあります。ILO部門別政策局のアレッテ・バン・ルール局長は、今は調子が良くないように見えるこの産業に改善の見通しが兆し始めたことを指摘して、産業が持ち直せば、この造船と船舶修繕に関して採択された改訂版実務規程が国や企業の労働安全衛生マネジメントシステムを作る際の基盤となり、この基幹的産業の全体的な労働条件改善に寄与することへの期待を述べています。

 採択された実務規程は理事会で承認された後に正式に発行されます。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。