同一賃金国際連合

アジア太平洋における男女同一賃金を後押しする国際連合をILO、UN Women、OECDが開始

記者発表 | 2018/02/01

 国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が定める持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット8.5は、2030年までに同一価値労働同一賃金を達成することを呼びかけています。このターゲット8.5を中心としたSDGsの達成に向けた直接的な動きの一つとして、2017年9月にニューヨークの国連本部において、ILO、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)、経済協力開発機構(OECD)が主導して「同一賃金国際連合(EPIC)」が発足しましたが、2018年1月31日~2月1日にバンコクで開かれた「アジア太平洋における女性と仕事の未来地域会議」のサイドイベントとしてアジア太平洋地域版EPICが誕生しました。

 地域版EPICの下、アジア太平洋地域全体にわたり、各国及び地域レベルで、様々な行動主体が力を合わせ、政府、使用者、労働者、労使団体その他の利害関係者が男女同一価値労働同一賃金を現実のものとするための取り組みを支援することになります。発足式典において、韓国政府はEPICのグローバル運営委員会に加わることを明らかにしました。活動を進めるに当たって優先される分野として、関係者相互の政策・ポリシー交流、知識交換、調査研究の相互点検、データと統計の整備が挙げられています。格差縮小に向けた解決策や同一賃金政策・ポリシーの適用及び導入においては、使用者、労働組合その他の主要な利害関係者が中心的な役割を担うこととなります。

 昨年発表されたILOとギャラップ社の共同報告書は、142カ国・地域の代表調査を元に、女性も男性も同じように女性が有償の職に就くのを望んでいることを示したものの、働く女性には依然として、不平等な賃金や仕事上の責任と家庭責任の両立、手頃な料金で利用できる保育・介護サービスの不足、不公正な待遇など幅広い課題が残っています。新たに設けられたEPICの革新的な活動は、報告書でも式典のハイレベルパネル討議でも強調された、賃金不平等の強化に寄与している幾つかの主な前提に対する取り組みに大きく貢献することが期待されます。

 「主要20カ国・地域(G20)及びOECD諸国の月収中央値で見た男女賃金格差は女性が男性を平均17%下回るというものですが、韓国(37%)や日本(25%)ではこの格差はもっと大きくなっています。この男女賃金格差には、採用やキャリアの積み方、労働市場における機会の違いが寄与しています。この問題に取り組むには、法規定、公正な職場慣行、人々の意識を賢く組み合わせることが決定的に重要です。EPICと協働することによって我々は賃金における男女平等の達成に成功を収めることを目指します」。アンヘル・グリア事務総長を代理して地域会議及び発足式典に出席したOECD東京センターの村上由美子所長はこう語りました。

 UN Womenの加藤美和アジア太平洋地域部長は次のように語っています。「この地域は教育における男女均等に関しては大幅な進歩を成し遂げましたが、これは女性の平等な経済機会の享受につながっていません。公式の仕事に就く女性の収入は男性の半分に過ぎません。経験や訓練、健康、教育などにおける男女の違い、産業種別、職種、勤務地などといった違いを考慮に入れてもなお、この男女賃金格差は『説明がつかない』ままです。この不明の違いはしばしば、深く根ざした社会規範や慣行、男女についての固定観念、職場における女性差別を反映しています。同一価値労働同一賃金に取り組むには、女性が力を付けて組織化し、より幅広い社会的文脈で声を上げることも必要です」。

 西本供子ILOアジア太平洋総局長は、同一価値労働同一賃金の原則は1919年に制定されたILO憲章に掲げられているにもかかわらず、この地域の全産業部門平均で約20%と、男女賃金格差はなかなか解消されない現実であることを紹介した上で、「しかもこれは氷山の一角に過ぎない」ことに注意を喚起し、「女性労働者は男性労働者よりも脆弱で非公式な仕事に就く場合が多く、社会的保護給付を得られない場合も多いといったように、これは労働市場のあらゆる指標」に見られることを挙げ、「同一賃金の促進には全体的な男女平等政策が不可欠であるものの、同一価値労働同一賃金なしに男女平等は達成できない」と説き、そういった理由からILOが進めている「働く女性100周年記念イニシアチブ」でもこれが重点分野の一つになっていることを説明しました。

 地域会議は、◇アジア太平洋における女性と仕事の未来の大枠図:既知の課題と現実、◇仕事の未来についての女性の声の拡大、◇仕事の未来のための女性と少女の技能開発:理系学科の促進、◇職場及び社会における女性の発言力、代表性、リーダーシップの拡大、◇ケア経済における人間らしく働きがいのある仕事の創出と、仕事と家庭の両立を支えることの重要性、◇包摂的な成長とより持続可能な企業を牽引するビジネス及び管理職における女性、◇実際に効果的な賃金格差の縮小法、といったテーマ毎に、アジア太平洋地域の女性に対して仕事の未来が提示している機会と課題について幅広い話し合いが行われました。討議の参考文献として、◇オーストラリア女性の働く未来、◇南アジアの地域保健労働者のディーセント・ワーク、◇性における多様性と企業業績の改善:インドから得られた証拠、◇アジア太平洋のビジネスと管理職における性別分離の克服、◇タイにおける女性の起業家精神を促進する上での認識の重要性、◇ネパールにおける人材の多様性と採用枠政策、◇ベトナムの労働法改革における文化的価値と国際基準との隔たりの探求などといった研究文書も作成されています。討議模様は録画動画でご覧になれます。


 以上はILOアジア太平洋総局によるバンコク発英文記者発表の抄訳です。