南南・三角協力

ディーセント・ワークが変える木綿生産

記者発表 | 2017/11/03
ブラジル国マット・グロッソ州カツチ市における綿花生産

 世界で最も幅広く栽培されている作物の一つである綿花は世界全体で約2億5,000万人の収入源となっています。しかし、多くの小規模農家にとっては、これは生き残るために十分な収入をほとんどもたらさない背中の痛くなるような労働を伴い、児童労働と強制労働がなおも大きな問題である国もあります。近年の木綿価格の停滞は生産コストの上昇を抑制する圧力として働き、これは労働条件のさらなる悪化と権利侵害事例の増加を引き起こす原因となる可能性があります。
 そこで、このような問題に取り組むことを目指して、近年この部門で大きな躍進を遂げているブラジルとILOの経験に依拠した独特の南南三角協力事業として「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を伴う木綿プロジェクト」が誕生しました。例えば、ブラジルでは主として労働監督と木綿証明手続きの発達の結果、木綿生産における児童労働はほぼ根絶されましたが、残念ながら他の国にはまだこの問題が残っています。

 ディーセント・ワークを伴う木綿プロジェクトはアフリカ3カ国(マリ、モザンビーク、タンザニア)と中南米2カ国(パラグアイ、ペルー)の木綿生産国を対象に、ILOがブラジル国際協力庁(ABC)及びブラジル綿研究所(IBA)と連携して実施しています。具体的には、貧困と差別の撲滅、児童労働・強制労働の根絶、そして包摂、社会対話、若者の就労、男女平等、仕事の公式(フォーマル)化の促進を目指しています。

 2017年8月29日~9月1日にマセイオ市で開かれた第11回ブラジル綿会議にILOはタンザニアを除くプロジェクト対象国の代表と共に参加し、プロジェクトの活動を紹介すると共に、南南協力プロジェクトを通じた中南米・アフリカの木綿産業の持続可能な開発を目指し、共通の課題と解決策の特定に向けた経験交流を促進する対話をABC及び国連食糧農業機関(FAO)と共催しました。

 アフリカ、アジア、中南米の多数の共同体で木綿産業は決定的に重要です。プロジェクトのフェルナンダ・バヘット調整官は、木綿は例えば、輸出製品として収入を生むことによって、小規模農家とその家族の食糧、住宅、その他数多くの商品やサービスの入手に寄与し、加えて、経済と農業生産が木綿に依存している途上国の場合は特に、全体的な経済成長にも貢献することを指摘しています。

 プロジェクト・チームは参加国の政府及び労使の代表と共にプロジェクトの活動を確定するためにそれぞれの国を訪れました。ILOは各国で2018年の初めから具体的な活動計画の実施が始まることを期待しています。例えば、木綿生産の9割までが家族経営の小規模事業で行われており、150万人以上が収入源として木綿に頼っているモザンビークでは、職業訓練の欠如、児童労働、非公式性、社会的保護の機会の欠如、労働安全衛生基準の不遵守といった問題が主なものとして指摘されました。

第11回ブラジル綿会議において実施された中南米、アフリカの綿生産国との対話イベントで話すILOプロジェクトのフェルナンダ・バヘット調整官

 高いインフォーマル性、低生産性、劣悪な労働条件、社会的保護や職業訓練を受ける機会の欠如を特徴とする繊維産業を擁するペルーでは、木綿生産の99.5%が、高い貧困率、低所得、社会的保護の機会の欠如、そして収穫期を中心とした児童労働の活用を特徴とする小規模家族生産単位に集中していることが判明しており、プロジェクトの重点は職業訓練、労働安全衛生、児童労働の撤廃に置かれます。同国のアルフォンソ・グラドス労働・雇用促進大臣は、準備会合において、労働者の大半に労働基本権が確保されていない高度に非公式な労働市場の存在と、とりわけ農村地帯の供給・生産連鎖がより大きな困難を提示していることを指摘した上で、このプロジェクトが現在設計が進められている主な政策を構築する土台となる基準線を提供することへの期待を表明しました。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。