ILO理事会

第329回ILO理事会閉幕

ILO理事会議場

 ジュネーブのILO本部において2017年3月9日から開かれていた第329回ILO理事会は、雇用及び社会に関する主な世界的課題に係わる様々な進捗状況を検討して24日に閉幕しました。理事会の書記を務めるフアン・リョベラILO渉外・会議業務局長は、コミュニケーション・広報局のインタビューに答えて、今理事会の主な出来事を次のように紹介しました。

 今理事会では、ILOが最近焦点を当てている重要事項が複数取り上げられました。2016年の第105回ILO総会で採択されたディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を通じた社会正義の前進に関する決議に関しては、実施のための作業計画が採択されました。理事会の手引きに従ってまとめられた行動指向型のこの包括的な事業計画は、基準体系、反復討議、ディーセント・ワーク国別計画と成果主義枠組みの強化、組織内能力開発、調査研究及び情報の収集と共有、ディーセント・ワークのためのパートナーシップと政策整合の六つの主な分野について、総合的な政策手法を通じて加盟国政労使によるディーセント・ワークの諸目標達成を支援する事務局の活動内容を記しています。

 理事会はまた、強制労働を撲滅する必要性について強い合意に至り、2014年の第103回ILO総会で採択された「1930年の強制労働条約の議定書」と「強制労働(補足的な措置)勧告(第203号)」の実施と促進のために引き続き予算外資金の獲得に努めるよう事務局長に求めることを決定しました。1930年の強制労働条約(第29号)の批准国は現在178カ国に達するのに対し、議定書の批准国は13カ国に過ぎませんが、強制労働、現代の奴隷制、人身取引に関する法規や命令を近年、制定した国は30カ国を超えています。

 2019年のILO創立100周年に向けて進められている七つの特別事業の一つである企業イニシアチブとILOの民間セクターとの関わりについても進展状況が検討されました。中小企業と起業家の分野に関しては、、ILOの開業・事業改善(SIYB)計画の過去10年間の参加者が約1,500万人に達し、推定900万人分の新規雇用の創出に寄与したとの報告が行われました。2016年11月の理事会前会期から継続された、2016年の総会で採択されたグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)におけるディーセント・ワークに関する決議のフォローアップ討議では、この分野におけるILOの2021年までの活動行程表が採択されました。

 貧困終焉という世界的な課題は本質的に農村の貧困に終止符を打ち、経済をフォーマル(公式)化する問題であることを認め、理事会は農村経済におけるディーセント・ワーク促進措置及びインフォーマル(非公式)経済フォーマル化に関する討議を行いました。ディーセント・ワークと全ての人の公正な移行に重点を置いて進められている気候変動パリ協定の実施を支援するILOの活動についても最新の動きが報告されました。

 理事会はまた、1977年に採択された「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」の本文及び序文の改正を承認し、ILO加盟国政労使に向けた改定版の周知と広報活動の立案を事務局長に求めました。さらに、今年11月から始まる多国籍企業宣言採択40周年の記念行事として、三者構成イベントの開催や適切な外部開催イベントの後援を事務局に指示しました。今回の改正によって、とりわけ、社会保障や強制労働、インフォーマルからフォーマル経済への移行、強制労働被害者の補償と救済を得る機会の諸分野に係わるディーセント・ワーク関連原則が追加され、全ての人のディーセント・ワークの達成に向けた多国籍企業の貢献を育む指針としての意義が高められました。

 100周年記念事業の目玉である「仕事の未来イニシアチブ」は、指定されたテーマについての加盟諸国における国内対話、ハイレベル世界委員会の設置、加盟国による100周年記念イベントの開催及び委員会報告書の検討並びに総会における討議の三段構成になっていますが、165カ国が積極的な参加を約した第1段階はほぼ終了し、5月に予定されている日本や4月初めにジュネーブで開かれるグローバル対話のように、2017年前半に予定されているイベントも幾つかありますが、既に93カ国が国内対話を開催するか、小地域・地域レベルの対話に参加しています。理事会は事務局長が世界委員会の構成に関する最終的な作業に進むことを承認しました。今年夏から活動を開始できるよう近い将来設立される予定の世界委員会には、全ての国内・地域対話の結果のまとめが提出されます。

 今理事会ではハイレベル部会を設けて持続可能な開発のためのディーセント・ワークのテーマを取り上げ、持続可能な開発のための2030アジェンダの実施に関するILOの活動が持続可能な開発目標の実現をどのように支援するかについて話し合いが行われました。7月に開かれる国連のハイレベル政治フォーラムにおける議論に対するILOの貢献を準備する目的ももって行われたこの討議では、とりわけ、今年の政治フォーラムで検討される目標に関するものを中心に、ディーセント・ワークを全ての人に実現することを目指すILOの取り組みが2030アジェンダの実施にどう貢献しているかに絞って検討が行われました。

 今理事会では、2017年のILO総会に提出される2018/19年度の事業計画・予算案の検討も行われました。実質ゼロ成長で提案されている予算案は、不変ドル建てで7億9,739万ドルとなりますが、コスト減が予想されるため、名目ドル建てで今年度予算より0.5%低い405万8,526ドルの減額が見込まれています。

 基準分野では、法及び実際上の国際労働基準の遵守確保に向けた様々な憲章上の仕組み及び手続きで構成されるILOの基準適用監視システムの改善・強化を継続するための作業計画について合意に達しました。強制労働条約(第29号)適用の問題で各種の活動制限などが課されていたミャンマーについては、2013年の第102回ILO総会で、残されたすべての措置を解除した上で強制労働撤廃に向けた公約の維持を求める決議が採択されていますが、理事会は決議のフォローアップ討議を行い、引き続き協力し合うことなどを求める決定を行いました。また、結社の自由に関する申立を審議した結社の自由委員会の報告書を承認し、チリ(結社の自由等)グアテマラ(結社の自由)カタール(強制労働等)ベネズエラ(結社の自由等)について提起されているILO条約の適用に係わる申立を審議しました。

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 以上は2017年3月24日付のジュネーブ発英文論評記事の抄訳です。