第71回国連総会

保健医療部門雇用・経済成長ハイレベル国連委員会最終報告発表:世界の保健医療労働力への新たな投資は仕事を創出し、経済成長を推進すると結論

記者発表 | 2016/09/20

 2016年9月20日、保健医療及びソーシャルワーク部門における仕事の創出を刺激し、導く行動を提案することを任務として潘基文国連事務総長が2016年3月に設置した「保健医療部門の雇用と経済成長に関する国連委員会」の最終報告が発表になりました。フランソワ・オランド仏大統領とジェイコブ・ズマ南アフリカ大統領を共同議長とし、ILO、世界保健機関(WHO)、経済協力開発機構(OECD)を共同副議長とする委員会の最終報告は、持続可能な開発目標に向けて前進するためには保健医療労働力への投資が必要と結論づけ、そのために10項目の提案を行っています。

 委員会は緊急の行動を要請し、投資加速化に向けた公約と説明責任を確保するために2018年3月までに即時に行動を取ることを呼びかけています。委員会の要請に従い、共同副議長は2016年中に関係者を招集し、提案を実行するための5年間の計画を策定する予定です。

 すべての人に保健医療の機会が保障されるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成は、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のターゲットの一つですが、人口の高齢化と非感染性疾患罹患率の上昇により、今後2030年までに世界全体で新たに4,000万人の保健医療労働者が求められ、現在の就業者数を倍増させる必要があると見られます。しかし、このほとんどが最も裕福な国における雇用の創出であり、何らかの行動なしには、低・下位中所得国を中心に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成・維持に必要な保健医療労働者が1,800万人不足すると予想されます。保健医療部門は既に雇用の大きな受け皿であるにもかかわらず、依然として成長を続けており、工業・農業労働者が減少した2000~14年の期間にもOECD諸国全体で保健医療及びソーシャルワーク部門では就業者数が48%増を記録しています。

 保健医療部門への投資が配当を豊かに生むことを示す証拠は多数存在し、その投資収益率は9倍と見積もられ、低・中所得国における2000~11年の経済成長の4分の1あまりが保健改善の結果と推定されています。保健医療部門の技能に対する投資と雇用の拡大は女性や若者の経済力の向上にも寄与すると考えられます。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、保健経済への投資とユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向けた歩みが経済成長を強め、幅広い職業に人間らしく働きがいのある仕事を創出することによって、より包摂的な経済を導く可能性があるとの堅固な証拠を提示するこの報告書は、「2030アジェンダの実行、とりわけあらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活と福祉を目指す持続可能な開発目標3と包摂的な成長及びディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を目指す目標8の実行のための実践的な提案」と評価しています。女性の経済参加の最大化、変革をもたらすような質の高い教育及び生涯学習の規模拡大、病院医療偏重から予防及び一次・外来診療に重点を置く方向に向けたサービスモデルの改革、保健医療労働者の資格の国際認定における前進、保健医療労働市場に関する調査研究・分析の実施などを含む10項目の提案は、保健医療部門の雇用に対する適切な投資を通じて保健医療、地球規模の安全保障、包摂的な経済成長における進展の実現を目指しています。

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 以上はILO国連事務所によるニューヨーク発英文記者発表の抄訳です。