社会的保護をすべての人へ

普遍的社会的保護に向けた新たな一押しをILOと世界銀行が発表

記者発表 | 2016/09/21
パートナーシップ立ち上げイベントにおけるジム・ヨン・キム世界銀行グループ総裁(写真左)とガイ・ライダーILO事務局長

 ILOと世界銀行グループは世界の指導者と共に社会的保護を全ての人に達成するために力を結集します。国連総会が開かれているニューヨークで2016年9月21日に新たに発表された「普遍的社会的保護のためのグローバル・パートナーシップ」は、誰もが必要な時に主要な支援を得る機会が確保されるよう、各国が様々な手段を用いて全ての貧困層及び脆弱な集団に手を差し伸べるのを手助けすることを目的としています。

 普遍的社会的保護は2030年までにこの世界から極度の貧困をなくし、繁栄の分かち合いを後押しするという世界銀行グループの二重の目標に沿ったものであると同時に、2012年に採択された「社会的な保護の土台勧告(第202号)」などの基準を指針とするILOの任務の中核に位置するものでもあります。両機関が支えるこの新しいパートナーシップの下には、ベルギー、フィンランド、フランス、ドイツからの技術協力に加え、アフリカ連合や国連食糧農業機関(FAO)、欧州委員会、ヘルプエイジ、米州開発銀行(IDB)、経済協力開発機構(OECD)、セーブ・ザ・チルドレン、国連開発計画(UNDP)の包摂的成長のための国際政策センター(IPC)、国連児童基金(UNICEF)などの開発パートナーが参集しています。

 世界銀行グループのジム・ヨン・キム総裁がパートナーシップ立ち上げイベントで指摘したように、貧困削減、より高い男女公平の達成、経済的不平等の縮小、良い仕事の促進に向けた手段の一つである社会的保護ですが、最低所得国では今でも何らかの形態の社会的保護が適用されているのは貧困層では5人に1人に過ぎません。しかし、発表されたデータによれば、普遍的またはほぼ普遍的な社会的保護を達成した低・中所得国は中国、ナミビア、タイなど23カ国以上に達し、ほかにも100カ国以上が社会的保護の拡充を図り、新たな人口集団への給付の拡大を加速化させています。普遍的社会的保護が最も多く達成されているのは老齢年金についてです。これらの例は低・中所得国でも普遍的社会的保護は実現可能なことを示しています。ILOでは、児童や母親から高齢者に至る全ての脆弱な集団を完全にカバーした社会的保護の土台の整備に要する費用は中所得国の多くで国内総生産(GDP)の1~5%程度に留まると見ています。

 2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、17の持続可能な開発目標とその具体的な達成目標である169のターゲットで構成され、2030年までに経済、社会、環境の持続可能性を達成してこの世界を変えるための道筋を示しています。この目標1は貧困根絶ですが、その達成目標の一つであるターゲット1.3として「社会的保護の土台を含み、すべての人のために各国が自国にとって適切な社会的保護制度及び措置を実行し、2030年までに貧困層と脆弱な人々の相当割合を適用対象に含むこと」が目指されています。

 普遍的社会的保護には、給付を必要とする全ての人、とりわけ子どもに対する十分な現金支給、生産年齢にある人々に出産、障害、業務災害、失業といった事態に際して与えられる給付と支援、全ての高齢者に対する年金が含まれ、この保護を提供する形態としては、社会保険、税を財源とする社会的な給付、社会的援助サービス、公共事業計画、その他の基本収入を保障する制度が考えられます。ガイ・ライダーILO事務局長は、「各国が持続可能で普遍的な社会的保護制度を設計・実行するのを支援して普遍的社会的保護が提供される国の数を増やすこと」を我々共通の目標としています。

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 以上はニューヨーク発英文記者発表の抄訳です。