家事労働

ILO新刊:中南米家事労働者1,800万人の約8割がインフォーマル就労

記者発表 | 2016/07/11

 リマにあるILO中南米・カリブ総局からこのたび発表された新刊書は、中南米では就業者全体の7%に当たる1,800万人が一般世帯に家事労働者として雇われているものの、その約8割がインフォーマル(非公式)就労であり、したがって社会保障による保護を欠き、賃金は非常に低く、一日の労働時間は疲れてぐったりするような長さであることを示しています。『Políticas de formalización del trabajo doméstico remunerado en América Latina y El Caribe(中南米・カリブにおける有償家事労働のフォーマル化政策・西語)』と題する報告書は、このインフォーマル率は2009年より2ポイント以上減ったものの、依然としてこの地域の農業外労働者の平均インフォーマル就労率である47%を30ポイントも上回る77.5%に上ると記しています。

 中南米・カリブの家事労働者は世界全体の37%とアジアに次いで多く、地域の女性就業者の7人に1人に当たる14.3%が家事労働者として働いています。報告書は、インフォーマル就労者のほとんどがこの地域の家事労働者の93%に当たる約1,650万人に上る女性労働者である事実に光を当て、女性家事労働者の労働条件改善が性差に基づく不平等を縮小する上でのカギを握るとしています。

 ホセ・マヌエル・サラサールILO中南米・カリブ総局長は、家事労働は中南米・カリブでもインフォーマル就労率が最も高い職業の一つであり、家事労働者の10人中8人がインフォーマル就労者であることは、地域のインフォーマル就労者の1割に当たることを意味するとして、「これは、女性や先住民、アフリカ系子孫、移民の仕事を目に見えないものとする態度と体系的な隷属社会の歴史に根付いた複雑な差別的状況」と指摘し、「この地域における不平等、性差に基づく差別、貧困の根絶に向けて質的飛躍を達成することを望むならば、女性家事労働者の労働条件改善は歴史的な負債であり、必要事項」と説いています。

 2011年に採択されたILOの家事労働者条約(第189号)の批准国は22カ国に上りますが、うち12カ国がこの地域の国々です。近年、家事労働者に他の労働者と同じ権利を与える新しい法を制定するなどしてこの分野では域内の多くの国で重要な進展が見られますが、総局長は法制改革だけでは不十分で、「その履行を促進する補足的な措置を伴う必要がある」と指摘しています。

 報告書はインフォーマル家事労働者のフォーマル(公式)化に最も成功した国では多面的な戦略が適用されていることを示しています。これは、権利を付与する法制改革に加え、◇社会保障の権利を保障する措置、◇最低賃金の適用、同等資格水準の産業部門と同等の水準までの引き上げ、◇労働省における雇用契約の登録と労働監督、◇租税・経済的インセンティブ、◇組織化を促進し、社会対話を可能にする措置、◇啓発・広報キャンペーン、などの具体的な措置が必要なことを意味しています。

 社会保障に拠出している人は就労者全体では47%ですが、家事労働者では28%に過ぎません。一方で家事労働には最低賃金が適用されない国や家事労働の最低賃金水準が低い国もあり、家事労働者の働く貧困層化を招いています。ILOのマリア・ホセ・チャモロ・ジェンダー専門官は、家事労働が低く評価されているのは、歴史的に家庭内の女性が無償で行ってきた仕事であることに関連していること、さらにまた、地域のほとんどの国で国民全体を対象とする公的ケア政策がないために、十分に規制されず、報酬も悪いこの仕事がケアの主たる担い手であり続けていることを指摘して、「地域の持続可能な開発のためには、社会におけるケアの再分配に関するより幅広い視点に立って家事労働者の労働条件改善を達成することが重要」と指摘しています。

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 以上はILO中南米・カリブ総局によるリマ発英文記者発表の抄訳です。