2016年第105回ILO総会

第105回ILO総会特別演説:仕事の未来に係わる課題への対応をILOに呼びかけるスイス大統領

記者発表 | 2016/05/30
ヨハン・シュナイダー=アマン・スイス大統領

 ジュネーブで開かれている第105回ILO総会において5月30日の開幕日に賓客として特別演説を行ったヨハン・シュナイダー=アマン・スイス大統領は、仕事の未来を熱心に検討し、進行中の変化に備えるために必要な措置に関する議論の中で中心的な位置を占められるよう確保することをILO加盟国政労使に呼びかけました。そして、スイスは2019年に創立100周年を迎えるILOの祝賀活動及びそれに関連した仕事の未来イニシアチブに全面的に関与するつもりであることを発表した上で、ILOが自らに付託されている社会正義の任務を21世紀に完全に遂行できるようにするために、「基準監視の仕組みを明日の世界の現実に合わせること」を提案しました。

 大統領はまた、ILOの創立以来スイスが果たしてきた役割に触れ、人間を生産の要素と捕らえる見方を変える手助けができたことを誇りとし、ILOがディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をもって、連帯精神に則り、個人を経済活動の中心に据えるに至ったことを評価しました。さらに、経済・労働事項を担当する大臣としての発言でもあるとして、マクロ経済と制度の安定性、実効性ある社会対話、経済的自由、訓練と革新、包摂的な社会的保護、そしてすべての要になる要素としての仕事の世界の利害関係者間の社会的パートナーシップという、人間らしく働きがいのある仕事の創出に必要な経済成長を促進する可能性がある複数の価値を、とりわけ社会正義に関してILOとスイスが共有することを強調しました。

 また、「仕事の未来とは若者のための仕事」を意味するとして、良質かつ生産的な長期雇用に至る道を円滑化する職業訓練と基礎教育に投資する必要性を強調し、若者の労働市場への迅速な統合が可能になるよう積極的な役割を演じることを企業に呼びかけました。大統領はさらに、仕事の未来に関連する戦略的な事項、とりわけ、重みを増しつつあるデジタル経済に対して十分に備えることをILOに求め、勇気と革新精神をもって行動することを加盟国政労使に呼びかけ、この点で、2009年のILO総会で採択されたグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)の更新を提案しました。

 ガイ・ライダーILO事務局長は大統領の歓迎演説において、「スイスとILOは疑いなく、多くの共通点がある」として、「外に対して開かれていること、対話、人間の尊厳」といった原則を共有していることを紹介し、ILOに対するスイスの強い影響力を評価しました。

 シュナイダー=アマン大統領の総会出席の機会を捉え、ILOとスイスは、ILOにおいて貧困削減、平和に資するディーセント・ワーク、社会的パートナーシップを促進するスイスの役割を強める覚書を調印しました。これによってスイスは経済生産性の促進、移民が途上国及び新興経済諸国でディーセント・ワークの状態にあるよう保障することを目指すILOのプロジェクトに資金協力を行います。この資金はまた、国際競争に立ち向かう用意がある持続可能な中小企業の支援にも用いられ、労働力移動及び公平な募集慣行に関わるILOの事業計画の促進、移民労働者による持続可能な開発に対する貢献の強化を積極的に目指すことが計画されています。

* * *

 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。

シュナイダー=アマン・スイス大統領のILO訪問(英語字幕付)