労働安全衛生世界デー

労働安全衛生世界デー:職場内ストレスが集団的な課題である理由とその取り組み方

記者発表 | 2016/04/27
バレンチナ・フォラスティエリILO労働安全衛生専門家

 ILOは4月28日を労働安全衛生世界デーと定め、職業病や労働災害の予防の大切さに注意を喚起しています。今年の世界デーのテーマである「職場内ストレス:集団的な課題」についてまとめた報告書は、メンタルヘルス問題との関係性が十分に確立されている職場内ストレスについて、日本を含む世界中の最新の研究を調査して得られた世界的な趨勢と影響を記し、様々な国内・国際的な取り組みを紹介しています。

 労働衛生、健康促進、福祉を専門とするILOのバレンチナ・フォラスティエリ上級専門官は、人間が支払っている、苦痛や悲嘆、そして時には自殺などの代価に加え、世界全体で毎年、社会が多額の直接・間接的な費用を支払っている職場関連ストレスの現状を紹介しています。

 グローバル化による競争の熾烈化は作業組織や労働関係、雇用形態の変貌をもたらし、仕事に関連したストレスとそれに関連した不調の増加に寄与しています。仕事のペースは瞬時のコミュニケーションとグローバルな競争水準の高さに支配され、仕事と私生活を隔てる線がますます見えにくくなり、適切なワーク・ライフ・バランスの達成が困難になってきています。

 この現象の影響は正に地球規模で、例えばある日本の研究では、労働者の32.4%が前年の仕事に基づく強い不安、心配、ストレスが感じていると報告しており、チリの2011年のデータでは労働者の27.9%、使用者の13.8%が社内におけるストレスと抑うつ症状の存在を報告していますが、同じような数字は報告書が検討対象に取り上げたほとんどどの国でも見られます。

 さらに、事業の再構築、規模縮小、合併、業務外注、不安定労働、大量解雇や失業、貧困、社会的排除の可能性の増加などといった、多くの企業が競争力を保つために経済活動の縮小を強いられた、最近の世界的な経済危機と景気後退の名残も見られます。いわゆる心理社会的危害の源となるこういった労働慣行は、職場内における競争の激化、業務成績に対する期待値の上昇、ペースが速く集約的な労働、不規則な長労働時間、仕事に対する要求度の上昇や不安定性の増加、仕事の組織や内容を自己管理できる余地の不足、労働機会の縮減に寄与しています。加えて、仕事を失う不安や労働者のモチベーション、満足度や創造性、金銭的安定性の低下は労働者の精神衛生や福祉に深刻な影響を与え、相当の金銭的な損失をもたらします。

 こういった状況に関連した直接・間接的費用の数量化は始まったばかりですが、職場関連ストレス、関連する行動様式やメンタルヘルス問題の経済的な影響を評価した先進国は幾つかあり、例えば、従業員の欠勤や生産性低下、保健医療費、障害給付支払いの形での社会福祉費などの使用者が負担する費用を含む欧州の労働関連抑うつ症状コストは年間推計6,170億ユーロに達しています。

 社会や企業が支払う職場内ストレスの代償を減らすのに大きな影響力があると思われるものとして、フォラスティエリ上級専門官は、1)この問題に引き続き焦点を当てること、2)予防戦略に重点を置くこと、3)職場内意思決定に労働者を参加させる包摂策、4)包括的な労働安全衛生マネジメントシステムの導入、5)信頼、誠実、パートナーシップを基礎とした労働関係を確保する組織文化の醸成を挙げ、職場内ストレスの影響削減に向けて引き続き共に取り組み続けることを提唱しています。

今年の世界デーのテーマである職場内ストレスについて説明するフォラスティエリ上級専門官(英語)

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。