COP21

国々に公正な移行とディーセント・ワーク創出の義務を課す新たな気候変動協定の採択をILO歓迎

記者発表 | 2015/12/15
COP21会場
© Dominique Faget / AFP

 2015年11月30日から12月11日までパリで開かれた国連気候変動条約第21回締約国会議(COP21)において、195の締約国が、気候変動と戦い、低炭素で持続可能な未来への道を敷設する公約を示したことをILOは歓迎します。

 会議で採択されたパリ協定は、その前文に記されているように、「各国が定める開発優先事項に従ったディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)及び良質の仕事の創出並びに労働力の公正な移行という至上命題」を考慮に入れています。気候変動に取り組む活動と雇用及び社会的包摂は連結しているという事実の重要な認識を反映するパリ協定は、仕事の世界の関係者に各々の役割を演じることを呼びかけています。

 自身も会議に参加したガイ・ライダーILO事務局長は、「気候変動対策と雇用創出及び社会的包摂の促進は相互に絡み合った21世紀の課題であり、社会正義の願望を叶えるつもりがあるならば一緒に取り組まなくてはならないものであることに、世界は長い道のりを経てようやく気がついた」と評価した上で、ILOで最近採択された、よりグリーンな経済への移行のための指針は、この世界的な合意を、環境を保護するだけでなく、人間らしく働きがいのある仕事を創出し、社会的保護を広げる国内政策に転化する強力な手段となり得ることを指摘しています。事務局長はまた、ILO創立100周年を記念する活動の一つとして、低炭素の持続可能な開発路線への移行においてディーセント・ワークの側面を実際的に適用し、それに対する政労使の貢献を促進する「グリーン・イニシアチブ」が、パリ協定の実行に対する仕事の世界の貢献を導く重要な通路となるであろうことを強調しています。

 環境保護、経済開発、社会的包摂といった地球規模の課題に対する対応は、ディーセント・ワークと持続可能な開発への公平な移行を基礎とすべきとILOでは考えています。企業、職場慣行、そしてより幅広い労働市場のグリーン化は、企業、労働者、地域社会にとって公平で包摂的な気候変動緩和・適応策の必要不可欠な要素です。環境面から見て持続可能な経済及び社会に向けた、すべての人にとって公正な移行を集団で追求するに当たり、ILOは加盟国政労使と協働する用意があると事務局長は語っています。

サイドイベント「気候の変革者:グローバルな若者世代に力を付ける(12月8日)」でライダー事務局長が演説

 ライダー事務局長は、ILOを含む複数の国連機関が共催して12月8日に開いた、気候変動を防止できる最後の世代としての18億人の若者世代に焦点を当てたサイドイベントに参加して、1)気候と若者の失業はどちらも非常に切迫した関連する危機であり、調整を図った取り組みが必要なこと、2)若者に気候変動に対応できる力を付けるには、何よりもまず、教育、訓練、技能構築の分野における政策が求められること、という二つのメッセージに絞った演説を行いました。

 今日の若者の多くが十分な雇用機会の欠如という現実に直面しており、その未来は気候変動の脅威にさらされています。若者が失業する可能性は他の世代の3倍に達しており、これは基本的に世代間公正と社会正義の問題であると言えます。緊急に決然とした行動が取られない限り、若者は今日のみならず、将来の負担のほとんどをも担うことになります。したがって、この切迫した関連する課題に対する総合的な対応策を見つける必要があります。そのためには、若者が自らの才能、創造力、力強さ、革新の精神と起業家精神を活用して、求められる対応策を生み出す力と能力を備える必要があるため、これを効果的に行うには、政府及び労使団体が結集して、各々の役割と責任の範囲内における政策、戦略、行動を一緒になって考えることが求められるでしょう。

 低炭素社会に向けた持続可能で公正な移行を確保するには、技能ギャップを乗り越えられるように教育訓練制度の強化を図ることが絶対的な優先事項であるように見えます。再生エネルギーや廃棄物管理などの気候変動に対する適応とその影響緩和において特に重要な産業部門における起業家精神の育成を通じてケニア、タンザニア、ウガンダで若者の雇用機会の創出を支援した若者起業家精神ファシリティー、環境に優しいグリーン職業に向けた学習基準・履修課程の誕生を助けた技術職業教育機関地域ネットワークに技術支援を提供した中米及びドミニカ共和国におけるプロジェクト、若者に就労と収入の機会を提供することになったバングラデシュにおける太陽エネルギー技術者養成など、ILO自体の活動からも適切な支援の提供は才能ある若者が自分のディーセント・ワークを見つけるだけでなく、起業を通じて他者にディーセント・ワークを創出できる事実が示されています。また、教育、専門技能、事業開発サービスが備われば、数百万人の若者がクリーン・エネルギー革命を推進し、農業を変革し、産業部門にグリーン・イノベーションをもたらすリーダーになる可能性があります。

 将来に目を向けると、私たちの地域社会、そしてこの地球のニーズに最も合った創造性、イノベーション、起業家精神の潜在力が発揮されるよう政労使が結集して教育訓練の分野を構築することが至上命題です。そして、こういったすべての活動の政策設計や意思決定への参画の道を若者に開くことが決定的に重要に見えると事務局長は結んでいます。

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 以上はパリ発英文記者発表とサイドイベント「気候の変革者:グローバルな若者世代に力を付ける(12月8日)」におけるライダー事務局長演説内容の抄訳です。