グリーン経済

気候変動は仕事の世界に係わる問題

記者発表 | 2015/10/09

 2013年の第102回ILO総会で行われた、持続可能な開発、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、グリーン・ジョブに関する一般討議を経て、環境面から見て持続可能な経済とすべての人のための社会に向かう公正な移行を達成するためのビジョンと指導原則を示す結論が採択されました。これをフォローアップするものとして、事務局が準備した公正な移行のための政策指針案を検討し、必要な修正を加えた上で採択することを目指して、政府、使用者、労働者各側の専門家が参加して、ジュネーブのILO本部において2015年10月5~9日に専門家会議が開かれました。

 この「持続可能な開発、ディーセント・ワーク、グリーン・ジョブ専門家会議」は、今年12月にパリで開かれる国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の予想される成果の実施に、仕事の世界の関係者が適切な政策手段及び文書を伴って十分に関与できるための一連の提案を採択して閉幕しました。会議では、世界経済及び仕事の世界に見られる変化がもたらしている次の三つの主な課題が取り上げられました。

  1. 変貌しつつある世界経済内の諸産業部門における雇用喪失
  2. 気候変動の悪影響を受けている産業、地域、国々の適応コスト・戦略
  3. エネルギーコストの増加につながる政策の社会的に逆行する影響

 会議の議長を務めたバルバドスのエスター・バイアー=サックー労働大臣は、世界経済を環境面で持続可能な足場に移行することは激動の経験になるであろうことを認めつつ、「それは正しく管理された場合、地球の未来にとってもディーセント・ワークをすべての人に達成するという政策課題にとっても極めて大きなプラスの意味を持つものとなろう」と説いています。そして、小島嶼国であるバルバドスの大臣として、気候変動が環境に与える損害を直接目にしてきた自身の経験を紹介し、「私たちは選択の余地などなく、変わることを迫られている」として、炭素基盤型の旧経済から移行する必要が差し迫っていることを指摘しています。さらに、環境面での持続可能性の達成と十分なディーセント・ワークの機会の創出は二者択一の命題ではなく、連携して取り組むべき課題であることを強調しています。

 議長はまた、一つの種類の経済から別の種類の経済に変わる際には、ある種の活動、それに関連したある種の仕事は失われるものの、新しいものが登場することに注意を喚起して、新たな技能の開発、新たに登場する仕事に向けた訓練の必要性を指摘しています。そして、ILOでは技能、企業政策、マクロ経済政策といったすべての政策においてディーセント・ワークの概念が横断的なテーマとなることの確保に努めていること、変化を加えるに際し、そして投資を行うに際し、その投資がディーセント・ワークの政策課題に確実に沿ったものとなるよう努めているとして、ディーセント・ワークを移行の鍵を握る要素とすべきことを訴えています。

 12月に開かれるパリ気候会議では、持続可能な経済への移行や仕事に対する影響を最もうまく管理する方法が中心的な議題の一つになります。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。