第42回アラブ労働総会

ALO第42回アラブ労働総会(クウェート・2015年4月18~25日)にライダーILO事務局長も出席

アラブ地域安定のカギは仕事の創出と開会演説/ILOとアラブ首長国連邦が労働市場の統治、労働条件モニタリングのための能力構築計画について合意

記者発表 | 2015/04/20
第42回アラブ労働総会の開会式(クウェート・2015年4月19日)で演説するライダーILO事務局長

 21のアラブ諸国の政府、労働者、使用者の代表が出席し、アラブ労働機構(ALO)の年次総会である第42回アラブ労働総会が4月18~25日の日程でクウェートで開かれています。19日に開かれた開会式で演説したガイ・ライダーILO事務局長は、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会が提供されないことは「社会の安定を脅かす強い脅威」になると指摘し、深刻な失業危機に対応することを出席者に呼びかけました。

 中東で11%、北アフリカで12%を上回るアラブ諸国の失業率は世界で最も高く、とりわけ若者は4人に1人が無業であると見られ、女性の労働力率はわずか19%に過ぎません。極度に高い若者の失業率は、近年地域を席捲している民衆暴動の背景にある主要な推進力の一つになっていると見られます。

 2013年にアルジェで開かれた第40回総会に続く2度目の総会出席となる事務局長はまた、前代未聞の規模とスピードで変化をもたらし、技術革新とあいまって「知識」を経済成功のカギと化しつつある「グローバル化」の課題に留意する必要性を強調し、「変化に適応して革新できない者、将来のための技能を構築できない者は、取り残されてしまうだろう」と警鐘を発しました。そして、この対策として、民間部門を強化する必要性を説き、過去20年間にこの地域ではなおも低生産性部門と拡大するインフォーマル経済に雇用創出が集中しており、もはや国営・公共部門だけでは雇用創出の全責任を果たせないにもかかわらず、市場促進的な改革が大体において、仕事を豊かに生む民間部門の成長促進に失敗してきたことを指摘しました。

 「開発と雇用のための連帯の具現化」をテーマに掲げる今年のアラブ労働総会は社会対話に焦点を当てています。ライダー事務局長は、政府、使用者、労働者の間の真に実効性のある社会対話とは、「必要な変化を生み出し、管理する上で決定的に重要な仕組み」であるとして、「本物の社会対話は、代表的で独立した労使団体の存在とこれらの団体が自分たちの権利を十分に行使できる自由を基礎として初めて成り立つことを理解することが重要」と説き、そのような対話はバランスの取れた実用的かつ公正な解決策の達成を許し、それに参加することは当事者意識と受容を生み、したがって安定性も醸成すると説明しました。ILOはアラブ地域における社会対話の仕組みの改善を、労働分野の課題に取り組み、就労に係わる基本的な原則と権利をすべての人々に実現し、働きがいのある人間らしい仕事を創出し、社会的保護を拡大するための要件であり、重要な手段であると見ています。事務局長は、社会対話の目的は、単なる部門毎の利益ではなく、社会全体に利益をもたらす結果を生み出すことであると説明し、したがって、公正な人の移動を目指すILOの行動課題に沿って、移民労働者や女性の声にも耳を傾けることを訴えました。

 ILOはアラブ諸国において各国の労働法制近代化、労働行政能力の向上、労使団体の強化、男女平等の促進などの活動を支援することによって社会対話を促進しています。事務局長はまた、イスラエル占領地で展開している多数の技術協力プロジェクトやシリア難民危機が地域に与えている影響に対する開発に根ざした取り組みなどといった、ILOがこの地域で実施している活動に対するアラブ諸国の支援を求めました。

 今年で創立50周年を迎えるALOとILOはアラブ地域における約40年に及ぶ長い協力の歴史を有し、2007年には覚書を締結しています。2010年には自由で実効性のある社会対話を通じて合意された政策を基盤として生産的かつ包摂的な経済成長を達成するための新たな国の枠組みの構築、既存の枠組みの底上げを目指し、アラブ地域初の社会対話会議を共催しました。

 今総会ではまた、2期8年の任期を務めたアハマド・ルクマン現ALO事務局長の後任が選出されます。

◎ILOとアラブ首長国連邦が2年間の技術協力プロジェクトに合意

ILOとアラブ首長国連邦の代表。合意書調印式にて(クウェート・2015年4月19日)。

 第42回アラブ労働総会の機会を活用し、ILOとアラブ首長国連邦は4月19日にクウェートで、移民労働者を含む労働者の利益のために国内労働市場を管理・監視する労働省の能力構築を目指す2年間の新しいプロジェクトの開始に向けた合意書を締結しました。

 ILOがアラブ首長国連邦と共同で策定し、アラブ首長国連邦が資金を拠出するこのプロジェクトは、労働市場政策を方向付け、進捗状況を監視する情報及び手段を政策策定に携わる人々に提供することに加え、労働条件を監視し、紛争予防・解決の仕組みを構築し、移民労働者が正義を得る機会が改善されるよう労働監督機関の能力を高めることを目指します。労働災害及び職業病の予防文化の促進を目標とする労働安全衛生国家政策の策定も予定されています。プロジェクトはアラブ首長国連邦のビジョン2021年、政府戦略に基づく開発優先事項、同国と国連国別チームの共通戦略枠組み(2012~16年)に直接寄与することが期待されます。

 ライダーILO事務局長は、「アラブ首長国連邦の労働市場の統治の改善と労働法の執行改善に向けた期待の印」を示すものとして、この合意を歓迎しました。合意書に署名したフランク・ハゲマンILOアラブ総局長代行は、このプロジェクトを通じて、ILOとアラブ首長国連邦は労働市場の統治に関する同国の技術能力の伸長を図り、その政策を国際的な最善事例に沿ったものとし、労働者の権利保護に向けて協力し合うことになると説明しています。

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 以上はILOアラブ総局による次の三つの英文記者発表の抄訳です。