広報記事:労働力移動と送金

出稼ぎ労働者が自分の稼いだ金を最大限活用できるよう手助け

 出稼ぎ労働者が母国の家族に送る仕送り額は膨らみ続けています。世界銀行は、2014年に4,360億ドル、2016年には5,400億ドルに達すると見ています。出稼ぎ労働者から届く仕送り額が多い国にはインド、中国、フィリピン、メキシコ、ナイジェリア、エジプトなどが含まれます。出稼ぎ労働者とその家族及び出身地との連帯の表れである仕送りは、国境を越える自律的な個人の資金源として労働力移動の利益を開発に転化する上で必要不可欠なものでもあります。

 ILOは支出や貯蓄、借入、投資などの、責任ある資金計画立案のために必要な知識と技能を育成するプログラム及び金融教育訓練ツールを開発し、既にベナン、カンボジア、モルドバなどの移民送出国に加え、シンガポール、スペインなどの受入国でも地元自治体や社会的パートナー、移民団体との密接な協力の下で訓練を提供しています。

 先般フランスで開かれた研修で講師を務めたムセ・バオ氏(35歳)は、在仏9年のセネガル人です。故郷の妻と母親に毎月送っている、月給の相当割合に当たる約500ユーロの送金額は、兄弟姉妹を含む拡大家族全体を養っています。同じく講師を務めたカメルーン出身のエレーヌ・エッガートさんはフランスに住んで30年以上になりますが、出稼ぎ労働者だけでなく仕送り額が最大限活用されるように故郷の家族にも金融教育が必要と唱え、自分自身も年に2回は実家に戻って欧州の親戚にあまり多くを期待し過ぎないよう忠告していると説明しています。エッガートさんは、固定月給制に基づいて家計を賄った経験もなく、欧州での生活にどれだけ費用がかかるかについて必ずしも明るくない、やって来たばかりの出稼ぎ労働者の多くは、家族からのプレッシャーに耐えかねて可能な額を上回る仕送りを行ってしまい、クレジット会社や他の出稼ぎ労働者から借金するという事態に陥りやすいことを指摘して、多くの場合、最も良い送金方法を教える前に自分自身の予算を管理する方法について訓練する必要があると語っています。バオ氏も、ヨーロッパに出て仕事を見つけられた人は、欧州の生活費がアフリカよりどれだけ高いか必ずしも認識していない家族から、自分たちを困難から救えるヒーローのように見られているため、休暇の季節や祝祭日が近くなると普段より多くの送金を求める家族に抵抗するのが難しいと語っています。

 ほとんどの出稼ぎ労働者が金融機関の迅速送金サービスを用いていますが、そのコストは世界平均で送金額の約9%になります。最近はインターネットで食品を購入して故郷の家族に配達してもらうとか、まだ少ないものの、故郷の家族に社会的保護の給付を提供できる小規模保険などといった新しい送金方法も生まれてきています。金融教育は故郷に戻って開業を志している出稼ぎ労働者の助けにもなると思われます。ILOは出稼ぎ労働者の送金額の一部を用いて小規模健康保険商品を開発する実現可能性調査をマリやセネガルなどの送出国で実施しているほか、移民の送金や小規模金融に関する調査研究も行っています。

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 以上はジュネーブ発英文広報記事の抄訳です。