ILO/MPI共同刊行物:欧州移民の労働市場統合

ILO/MPI共同刊行物:低技能職から抜け出すのに苦労している欧州の多くの移民/上方移動を確保する政策を優先させる機会を有する欧州諸国政府

記者発表 | 2014/11/18

 ILOは欧州委員会の資金協力を得てワシントンの独立系シンクタンクである移住政策研究所(MPI)と共に、欧州に新たに到着する移民の労働市場への統合に関する研究プロジェクトを実施していますが、このたび発表されたその成果文書『Aiming higher: Policies to get immigrants into middle-skilled work in Europe(より高くを目指す:移民の中技能職就労に向けた欧州の政策・英語)』は、欧州では人口の高齢化と長引く低経済成長を背景に、移民の労働市場への統合に近年相当の投資を行った国もあるものの、低技能の不安定な仕事からディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)への移行を支援する十分な策を講じている国はほとんどないことを明らかにしています。

 欧州6カ国(チェコ、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン、英国)の最近到着した移民の労働市場における動きを追い、公共職業安定業務と語学・職業訓練を中心に統合・人材開発関連政策を分析した報告書は、外国生まれの労働者は到着後最初の10年間は労働市場に安定した足がかりを得るのに苦労しており、多くが長い失業、非労働力または低技能職定着期間を経験していることを示しています。自国民労働者と外国生まれの労働者の雇用格差は解消されていないだけでなく世界経済危機の勃発後拡大しており、影響は特に女性、就労ビザ以外で入国した外国人、欧州連合(EU)圏外からの移住者に大きくなっています。欧州は過去25年間で相当数の移民を受け入れていますが、大半が人道的な経路や家族呼び寄せによるもので技能を理由として選考されているわけではありません。必要とされている技能を保有する人の多くが2000年代半ばの好景気の時代には特に、容易に仕事を見つけることができましたが、新たな移住者の多くは、時には相当の資格や経験を保有していても最低技能水準の仕事から安定した中技能の職に進むのに苦労しています。

 移民労働者の労働市場統合支援策については、オリエンテーションや進路指導といった到着したばかりの人々の特定のニーズに合わせた事業計画はしばしば規模が小さく、難民や移民の家族といった特定の集団を対象としており、他の多くを排除する危険があります。そこで幾つかの国は公共職業安定機関や訓練機関などの本流の機関に頼って、より包摂的なサービスをより大きな規模で提供しています。公共職業安定機関は到着したばかりの労働者を雇用主と結びつけ、キャリア開発や再訓練の助言を提供する機関となる潜在力を秘めていますが、就労アドバイザーはしばしば手一杯で移民の特定のニーズに対応するために必要な特別の訓練も資源も与えられていないといったように、調査対象国ではこの潜在力が発揮されていないことが明らかになりました。幾つかの国は最低技能水準の仕事に張り付いている移民に在職者支援や長期的なキャリア開発を提供できる能力を欠いています。移民の技能ニーズに対処した職業・語学戦略の設計は難しいものの必要な作業であり、新たな技能を獲得した人を雇用主が必ずしも昇進させるわけではないので訓練は万能薬とは言えませんが、語学力や基礎技能、専門知識のギャップを埋めるだけでなくソフトスキルを獲得するにも訓練は大いに有望と報告書は結論づけています。

 報告書は政策策定者に対して以下のような策の検討を提案しています。

  • 公共職業安定機関が移民のニーズに対処するインセンティブの改善や、迅速な就労支援だけに重点を置くのではなく、短期とより長期の両方のキャリアアドバイスを提供できるよう、アドバイザーの訓練向上またはより専門的な人員の育成
  • 雇用主と訓練機関のパートナーシップに資金を提供することによる語学指導の円滑化を希望する雇用主の支援または見習い研修・就労体験プログラムの支援
  • 連邦、州、地元の各レベルで存在する政策のより良い調整、統合成果に対する相互説明責任、共通目標、情報共有の促進
  • 革新的な労働市場統合プログラムのより効果的な評価とその影響力の長期モニタリング

 著者の一人であるデメトリオス・S・パパデメトリオウMPI名誉所長は、労働市場統合政策ほどには仕事の質に注意が払われておらず、移民の中・高技能職への進出が大きく遅れていることを指摘して、人口動勢の展望を考慮すれば、欧州諸国は「出身地にかかわらず住民の潜在力を浪費している余裕はない」と語っています。同じく著者の一人であるILO労働力移動部のクリスチアネ・クプチ移住政策上級専門官は、「移民の低技能職固着・失業問題を即時に解決する方法がないことは研究から明らか」としつつも、雇用と移住政策の整合性強化によって移民労働者、使用者、労働市場に相当の利益が生まれる可能性を指摘しています。

 本書は国別報告その他の研究書で構成される14冊のシリーズ報告書の一つです。シリーズ全書はMPIのホームページでご覧になれます。

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 以上はワシントン及びジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。