バングラデシュの衣料産業

バングラデシュで達成された成果を振り返る会合で、労働者の権利と工場の安全性について進展を認めつつもさらなる改善を求めるILO

記者発表 | 2014/10/20

 昨年4月に発生したラナプラザ工場倒壊の悲劇を受けて、ILO、欧州委員会(EC)、バングラデシュ政府、米国政府は、バングラデシュの既製服産業における健康、安全、労働者の権利、責任ある企業行動の改善を目指し、2013年7月に「バングラデシュの既製服・ニットウエア産業における労働者の権利及び工場の安全性の継続的改善のための持続可能性協定」を締結しました。悲劇から1年半が経過した2014年10月20日にブリュッセルで開かれた「バングラデシュの既製服・ニットウエア産業における労働者の権利及び工場の安全性の継続的改善に向けて関与を続ける」と題するハイレベル会合において、協定当事者は、既製服・ニットウエア産業における労働者の権利の適用と工場の安全性確保に向けてバングラデシュ政府が達成した重要な進展を認めつつも、まだ多くの作業が残されていると結論づけました。会合は持続可能性協定に列挙されている活動を点検し、急を要するものを含み、なおも改善が必要な分野を特定しました。

 サンドラ・ポラスキーILO政策担当副事務局長、欧州委員会のラースロー・アンドル雇用・社会問題・社会的包摂担当委員などが基調講演を行い、協定の実行に関してこれまでに達成された進展状況を振り返った今回の会合には、国際労働組合組織や現地労働組合等が20カ国180社以上のアパレル企業と締結した「火災と建物の安全性に関する協定」や主に米国のブランド26社が参加する「バングラデシュの労働者の安全のための同盟」といった他のイニシアチブの代表に加え、労働者、使用者、製造業者、小売業者、市民団体にも広く参加が呼びかけられました。

 ポラスキー副事務局長は、バングラデシュ労働法の改正による結社の自由、団体交渉、労働安全衛生の強化、多数の労働組合の新規登録、輸出向け衣料工場における安全検査の実施、工場を監督する公的機関に割り当てられる資金・資源の増大、国家労働安全衛生政策の策定、安全検査基準の設定、危険な工場を閉鎖する検査委員会の設立など、2013年7月以降に達成されたバングラデシュ政府及びその他の協定当事者の重要な前進を認めつつ、まだ重要な改善が必要な分野が多いとして、◇バングラデシュ労働法の効果的な執行・実施に向けて法の前進を現実のものとする規則規程の公布、◇法律面でも実務面でも労働組合の設立・登録手続きをより容易なものとすること、◇スト権の保護、◇結社の自由や団体交渉などの国際労働基準の擁護を確保する取り組み、◇結社の自由と団体交渉に関するものを中心に、労働法及び輸出加工区に適用される法律を国際労働基準に即したものとすること、◇法の執行に携わる職員その他の関連する職員を対象とした労働者の権利に関する教育研修計画の継続、◇ラナプラザビル倒壊被害者に対する技能訓練・リハビリテーションの提供、◇工場の公開データベースをグレードアップし、下請け業者も含むこと、などの必要事項を示しました。副事務局長はまた、「持続可能な業務災害保険制度の創設ほど被害者に捧げるのにふさわしいものはない」と指摘して、その整備を求めました。

 ポラスキー副事務局長は、「今日、そして将来的に、公正で持続可能なビジネスの場としての評判を確立する努力の過程で、この産業は、過去の手落ちに適正に対処したことを示さなくてはならない」と訴えて、バングラデシュの国家及びその産業が成功を収め、その労働者及び市民が生活水準の向上、権利の完全な享受、楽観的で明るい未来を享受することを望むこれほど多くのパートナーに支えられている持続可能性協定はそのための理想的な場を提供すると唱えました。さらに、この悲劇が数百万人のバングラデシュの労働者にとって、そしてバングラデシュ経済全体にとって決定的に重要な産業における労働条件に世界中の人々の注目を集める転換点になったことに注意を喚起した上で、人命の喪失と業務上の負傷を回避し、労働者の中核的労働権を今もそして今後も確保するためにあらゆる手立てを尽くすことを政府、協定当事者、開発パートナー、衣料産業に呼びかけ、ILOは政府がその公約を育み実行することを支援し続ける用意があると説きました。

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 以上はILO欧州連合・ベネルクス諸国事務所による次の二つのブリュッセル発英文記者発表の抄訳です。