ILO新刊:学校から仕事への移行

ILO新刊:不安定性と脆弱性に直面しているアジアの若年労働者

記者発表 | 2014/08/27

 このたび発表されたILOの新刊書『Labour market transitions of young women and men in Asia and the Pacific(アジア太平洋における若者男女の労働市場への移行・英語)』は、アジア太平洋地域の若者労働者(15~29歳)の半分近くが雇われておらず、さらに賃金労働者の3人中2人が契約文書のないインフォーマルな雇用形態で働いていることを示しています。

 ILOがマスターカード財団の資金協力を得て実行している「若者のための仕事(Work4Youth-W4Y)プロジェクト」の一環として、2012~13年に実施されたアジア太平洋5カ国(バングラデシュ、カンボジア、ネパール、サモア、ベトナム)の学校から仕事への移行調査結果をまとめた報告書は、地域の若者の大多数がインフォーマル性と脆弱な就業形態の現実に直面していることを明らかにしています。5カ国の若者の平均失業率は14.2%で、下はカンボジアの3.8%から上はネパールの28.9%といった範囲にあり、依然として重要な懸念事項ではあるものの、それよりもはるかに大きな問題は仕事の質の低さであり、有給疾病休暇などの中核的な給付・手当や社会保障の適用がないインフォーマルな就業形態にある若者が若者就業者に占める割合は下がサモアの67.7%から上はカンボジアの98.3%にまで及んでいます。5カ国すべてで男性の方が女性よりも失業率が低く、安定した正規雇用を見つけ、より高い賃金を得る傾向があります。

 報告書は教育と雇用の間には密接なつながりがあることを示しています。最近の進展にかかわらず、バングラデシュ、カンボジア、ネパールでは最終学歴が初等教育以下の若者が全体の半分以上を占めるといったように、依然として他の地域より教育達成度が低いことが懸念されます。カンボジアとネパールでは女性の方が早くに中退する可能性が高く、経済的な理由がこの説明に挙げられる場合が多いことは、次世代へと受け継がれている世帯貧困の永続化を推測させます。教育の不足は仕事を見つける障害にはならないものの(実際、教育水準に比例して失業率も上昇)、賃金とより良い仕事の機会の点で教育投資にはプラスの見返りがあることは明確に示されています。しかしながら、5カ国すべてで、取得している資格と仕事で求められている資格の間のミスマッチが激しく、バングラデシュ、カンボジア、ネパールでは若者の半分以上が現在就いている仕事で求められるものを下回る資格しか保有していないのに対し、ベトナムでは若者の4分の1近く、サモアでは半分以上が就いている仕事で求められるよりも高い教育水準を有するという問題もあります。

 報告書を執筆したILOのセーラ・エルダー若年者就業専門官は、安定した雇用の展望が小さいことは、教育水準の向上、近代技術の入手可能性、先進国経済の利点と見なされているものへの暴露とあいまって、若者の間に欲求不満を生み、これが最悪の場合には政治不安や人材の国外流出にまで発展する可能性があることに注意を喚起しています。

 政府が若者の就業を政策課題の中心に据えることを助け、実効性のある政策対応の設計及びモニタリングのための情報提供を行うことを意図して作成されたこの報告書は、より多くの若者が質の高い仕事を見つける助けを提供するために、雇用成長を促進するマクロ経済政策の設計、すべての人の教育機会の確保、若者が早期に教育から離れることの防止、インフォーマル企業への支援強化などといった一連の活動を政府に提案しています。

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 以上はILOアジア太平洋総局によるバンコク発英文記者発表の抄訳です。

トークショー:アジア太平洋の若者のための仕事と技能(英語)

2014年5月に開かれたWork4Youthアジア太平洋会議において、政府、使用者団体、労働者団体の代表が参加し、地域の若者が教育から労働市場へ移行する際に直面している課題に関する討議が行われました。