第103回ILO総会

「本当に重要な政策課題が承認された」と総会の議論を結ぶライダーILO事務局長

記者発表 | 2014/06/12

 185のILO加盟国のほとんどから4,700人を超える政府、労働者、使用者の代表などが出席して5月28日から2週間余りにわたってジュネーブで開かれた第103回ILO総会が6月12日に閉幕しました。

 総会は強制労働の防止、保護、補償措置を前進させると共に現代の形態の奴隷制を撤廃する努力を強化することを目指し、1930年の強制労働条約(第29号)を補足する新たな議定書と勧告を採択しました。ガイ・ライダーILO事務局長は、総会の閉会挨拶において、とりわけ、「いまだに私たちの仕事の世界を悩ましているこの忌むべき行為に終止符を打ち、2,100万人に上るその被害者を解放することに向けた私たちの集団的な決意の果実」であるこの議定書が圧倒的多数の賛成を得て採択されたことを理由として、この総会が「長く記憶に留まるもの」になることへの期待を述べました。

 世界の労働力の約4割がインフォーマル経済で働いていると見られますが、総会はまた、インフォーマルな仕事からフォーマルな仕事に移行する道を開くという課題に取り組み、勧告の採択を目指して来年の総会でこの問題に関する第2次討議を行うという結論に達しました。ライダー事務局長は、「この移行は私たち皆に関係する」として、11日に行われた総会本会議におけるこの議題を巡る発言を聞いて、「今年植えられた種が来年の総会で大いに必要とされる貴重な勧告の収穫を可能にするであろうことに確信を持った」と語っています。

 現在国連で検討が進められている2015年以降の世界の開発課題の明確な目標としてディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進していくことに加え、全地球規模及び各国レベルにおける先行対策的で雇用を中心に据えた包摂的な成長戦略と包括的な雇用政策の枠組みの必要性に関して総会で達成された合意について、ライダー事務局長は、この合意は、私たちの時代を特徴付ける難問であるところの「大量失業の危機」を克服するためにILOが行う貢献の枠組みを示すものと評価しました。

 総会の基準適用委員会は最低賃金の設定に関する総合調査に加え、個別国の条約適用における様々な問題を25件取り上げましたが、結論に達せなかった案件がうち19件と多いことに対する懸念が多数表明されたことに関連して、事務局長は「政労使三者の全面的な支援を享受する強く権威ある基準体系」の必要性を説き、加盟国政労使に対し、その目標に対して表明された公約の遂行に向けた行動を要請しました。

 今年の事務局長報告のテーマであった労働力移動の問題については、本会議において政労使の代表演説で幅広く取り上げられましたが、事務局長はこれに関し、「移住の疑いようのない経済的潜在力の実現は、それを公正にすることに大いにかかっている」として、それはいまだに実際に適用されるよりも語られることの方が多い「権利を基盤とした手法」の採用を意味すると説いています。

 総会ではまた、遺棄された船員の保護並びに死亡及び長期的な障害発生時における補償のための金銭的保証の提供を目指して「2006年の海上の労働に関する条約」の改正が承認されました。6月9日に開かれた「仕事の世界サミット」の枠内で行われたヨルダンモンゴルの首相による特別演説ではディーセント・ワークをすべての人に実現することを目指すディーセント・ワーク課題の中心的な重要性が強調されました。総会にはローマ・カトリック教会の教皇フランシスコからもメッセージが届けられました。教皇は若者の失業問題や、多数の人々が人身取引や強制労働などを伴う可能性もある移住をせざるを得ない状況にあることに懸念を示し、人間の尊厳と人間労働の崇高さを推進しようと目指すILOの取り組みに対する支持を表明しました。事務局長は12日が児童労働反対世界デーであることに注意を喚起して、「教皇フランシスコと共に児童労働反対の意思を示すレッドカードを掲げよう」と呼びかけ、仕事の世界の領域からの児童労働の完全追放を訴えました。

 ライダー事務局長は最後に、第103回総会の議長を務めたダニエル・フネス・デ・リオハ・アルゼンチン使用者代表の38年間にわたる総会出席とILOの活動に対する際立った貢献に触れて感謝の意を表明しました。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。