第103回ILO総会

現代の形態の強制労働に取り組む新たな議定書を総会で採択

記者発表 | 2014/06/11

 185のILO加盟国のほとんどから4,700人を超える政府、労働者、使用者の代表などが出席してジュネーブで開催されている第103回ILO総会は、6月11日に、強制労働の撤廃に向けた世界規模の取り組みの強化を目指し、1930年に採択された強制労働条約(第29号)が人身取引などの現代の問題に対応できるようにするために、勧告に補足された同条約の議定書を賛成437票、反対8票、棄権27票の圧倒的多数で採択しました(日本は議定書、勧告どちらについても政労使共に賛成)。

 この「1930年の強制労働条約(第29号)の2014年の議定書」は、強制労働の防止、被害者保護、そして物的・身体的損傷に対する補償などの救済を得る機会を提供する義務を新たに創設することによって国際法枠組みの強化を図っています。議定書は政府に対し、労働者、とりわけ移民労働者を不正かつ詐欺的な就職斡旋行為からより良く保護する措置を講じることを求め、強制労働に対する闘いにおける労使の役割を強調しています。賛成459票、反対3票、棄権12票で同時に採択された「強制労働の実効的な抑止のための補足的な措置に関する勧告(第203号)」は、防止、保護、補償や司法アクセスなどの救済策、執行、国際協力の五つの分野に関し、第29号条約と2014年の議定書を補足してその実施における技術的な手引きを提供しています。

 強制労働の被害者は現在でも世界全体で2,100万人に達し、賃金不払いなどを通じて民間経済が違法に得ている利益は年間1,500億ドルに上るとILOでは推定しています。この問題を審議した総会の強制労働委員会は、強制労働に関する既存の二つの条約(第29号と第105号)が果たしている重要な役割を強調しつつも、実施面におけるギャップの存在は追加的な措置を要請するとの結論に達し、強制労働の撤廃に向けて前進するための共通の枠組みを設ける法的拘束力のある文書が必要との点で合意に達しました。

議定書採択模様と総会参加者の声(英語)

 ガイ・ライダーILO事務局長は、強制労働が数百万人の男女・少年少女の人権と尊厳を侵害し、貧困の永続化に寄与し、すべての人にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現するという目標の達成を阻む障害であることを指摘して、現代の形態の奴隷制の根絶に向けた政府及び労使団体の強い公約を表すこの議定書と勧告は「強制労働との闘いにおける大きな前進」を刻むものと歓迎しました。強制労働委員会の委員長を務めたデービッド・ガーナー・オーストラリア政府代表は、新文書は国連の国際組織犯罪防止条約の人身取引議定書をはじめとした「今ある国際法を補足・強化する」として、その将来に向けた期待を表明しました。使用者側副委員長を務めたエドワード・ポッター米国使用者代表は、「人権尊重」という国際企業社会が掲げる主張を表すこの議定書と勧告は、紙上の文字に留まらない「行動の呼びかけ」を表すことに注意を喚起しています。労働者側副委員長を務めたイブ・ベイリエ・フランス労働者代表は、議定書の採択によって、「私たちは強制労働被害者に対する公約という明確な信号を発信しただけでなく、最も象徴的な条約の一つを今日の現実に適応させ、近代化を図ることができるというILOの能力を示すことができた」と喜びを表明しました。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。また、討議の事務局員を務めたベアテ・アンドレエスILO強制労働撲滅特別行動計画部長は9月25日付でILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」に「強制労働に関する画期的な条約が成立した経緯」と題する記事を投稿し、基準の成立に至った経緯を説明すると共に今後の変化に向けた期待を表明しています。

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