『仕事の世界報告書』2014年版

ILO新刊:質の高い仕事に投資する国は飛躍的な経済成長を達成できる

記者発表 | 2014/05/27

 「仕事を伴った発展」を副題にこのたび発表されたILOの年次刊行物『World of work report(仕事の世界報告書・英語)』2014年版は、140の途上国・新興経済諸国を詳しく分析し、良質の仕事への投資、脆弱な雇用の削減、働く貧困層問題への取り組みがより高い経済成長につながることを初めて示しています。また、質の高い仕事への投資が所得不平等の縮小と関連する傾向があることも見出されました。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、「輸出や外国直接投資などだけでは発展は起こらない」として、良質の仕事の創出には「社会的保護、中核的労働基準の尊重、フォーマル雇用を促進する政策」も決定的に重要であることを指摘すると共にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会が発展の引き金となり、貧困を削減する助けになると説いています。

 報告書は良質の仕事に焦点を当てた結果、成長が増した国として、セネガル(1991年から2013年の期間に就業者に占める賃金労働者の比率が約14ポイント増えて、働く貧困層は34ポイント減、生産性は年平均0.5%増)やペルー(同期間に賃金労働者比率は推定15ポイント増、働く貧困層は23ポイント減、生産性は年平均1.8%増)、ベトナム(同期間に賃金労働者比率は22ポイント増、働く貧困層は3分の1に減り、生産性は急上昇)などの例を挙げ、2000年代初めから良質の仕事に重点的に投資した国々が2007年以降、他の途上国・新興経済諸国より毎年1ポイント近く高い経済成長を示したことを明らかにし、これは2008年に起こった世界危機の影響を緩和する助けになったと記しています。ILO調査研究局のレイモン・トレス局長は、「多くの新興経済諸国・途上国で大きな経済問題となっている不完全就業の問題に取り組むにも仕事の質の改善は必要不可欠」と唱え、ディーセント・ワークを2015年以降の開発課題の中心的な目標とすることの必要性を訴えています。

 報告書はまた、行政手続き簡素化などの企業の開業と拡大を円滑化できる環境を提供するガバナンス(統治)措置といった、農業生産性の向上及び石油その他の天然資源から得られた収入を経済の他の部分に投資する戦略とうまく設計された社会的保護とを組み合わせることの重要性も強調しています。報告書の中心的な執筆者であるモアザム・マームード調査研究局次長は、不平等問題に取り組み、仕事の質と同時に社会的保護の改善に向けて努力している中南米やアジアの途上国とそれに逆行するように見える欧州を中心とした幾つかの先進国の動きといった、同時に進行している正反対の二つの現象の存在が明らかになったことを報告しています。

 報告書は今年1月に出した『Global employment trends(世界の雇用情勢)』2014年版で示した数値を下方修正し、2013年の世界の失業者数を2億人弱に訂正した上で2014年の増加予測を320万人とし、失業率は2017年までほぼ6%が維持されるものの、現在の傾向と政策が続くとすれば、失業者数は2019年に2億1,300万人に達すると予測しています。今後5年間に創出される仕事の9割が新興経済諸国・途上国で生み出されると見られますが、これは移民の流れに大きな影響を与えることが予想され、依然として移民全体の51%が暮らす欧州連合(EU)その他先進国が中心的な渡航先であるものの世界金融危機の発生以降、南南移住が増えると共に危機の影響を受けた先進国から新興経済諸国へと向かう高学歴の若者の流れも多く報告されており、マームード次長は、途上国・新興経済諸国で仕事の質がさらに改善されれば、移住のパターンが変わる可能性を指摘しています。ILOは現在、国際機関で構成されるグローバル移住問題グループ(GMG)の議長機関を務めていますが、報告書は国際的な人の移動と開発に1章をさき、このような最近の傾向を示した上で、移住が開発に与える影響を最大化する政策措置として、◇合法的な移住の増加を許すような移民の経済統合の促進、◇外国人嫌いや差別、虐待対策の実行、◇出国前に移民に与えられる情報を改善する措置の導入、◇すべての国における仕事の質の改善を通じた、より秩序だった移住の流れの確保を提案しています。5月28日に開幕する第103回ILO総会でも移住をテーマとする事務局長報告に基づく討議が行われます。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。

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