ILO総会

ILO総会討議資料:パレスチナの民の雇用展望は厳しく、ガザは「紛争の火種」

記者発表 | 2014/05/23

 総会の討議資料の一つとして、1980年の総会決議に従い、1981年から毎年、アラブ被占領地(パレスチナ及びシリアのゴラン高原)の労働者の状況に関する報告書『The situation of workers of the occupied Arab territories(アラブ被占領地の労働者の状況・英語)』が事務局長報告付録として提出されています。今年3月にアラブ被占領地とイスラエルを訪れた現地視察団が見出した事項を中心にしてまとめられた今年の報告書は、この1年でパレスチナの成長率はさらに低下し、失業者は増え続けており、イスラエルの占領に基づく経済活動に対する様々な制限が除去されない限り、パレスチナの労働者及び企業家の状況の持続可能な改善は望めないと記しています。

 報告書はイスラエル経済圏で働くパレスチナ人の数が2013年に前年比19.6%の増加を示し、発行された就労許可の数を明らかに超えていることから、正規の許可制度の枠外で就労し、虐待的な雇用慣行に対する保護が不十分なパレスチナ人が大幅に増えている可能性を指摘してイスラエル及び入植地の悪辣な使用者や人材斡旋業者による労働者搾取の危険性が増していることを記しています。西岸及びガザの失業者は2012年の25万6,000人から2013年には27万人へと5.6%の伸びを記録し、とりわけ若者(15~24歳)の状況は一層深刻で失業率は男性が36.9%、女性が64.7%に達しています。ガザの状況はさらに厳しく、援助依存度は8割に達し、2013年に労働者のほぼ3人に1人が失業し(失業率32.5%)、特に若者の失業率は男性が51.8%、女性が86.3%に達しています。報告書はまた、パレスチナで労働力や意思決定機関に参加する女性が少ないことに引き続き懸念を示しています。

 報告書はガザの状況について、わずかな火花でも鎮火が極めて難しい火災が発生する恐れのある「紛争の火種」と表現し、「住民の5分の4が人道支援に頼らざるを得ず、経済活動が麻痺し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の達成がますます遠い夢となっている」この地域の状況緩和に向けて人と物品の移動を許す緊急の措置を求めています。さらに最近の和平プロセスが成果をもたらさないことから悲観的な感情が広がりつつあるとして、パレスチナとイスラエルの対話が始まって以来、イスラエルの入植活動が活発化し、入植者関連の暴力が増え、経済進歩の約束が無に帰している状況を記しています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、報告書序文で実効的な社会的側面を備えたパレスチナ主権国家の構築に向けたILOの一層強い公約を記しています。しかし、報告書は、パレスチナの民が土地や水を含む資源を得られない状況下では成長はもたらされず、その上、商品及びサービスの自由な移動と民間投資に対する大きな障害が状況をさらに悪化させているとして、「占領が続くだけでなく、実際には入植地全体にわたって拡大するとすれば、経済活動や雇用・社会政策、そして市民の最も基本的な権利に対する完全な支配権を備えたパレスチナ主権国家の展望が大きく損なわれる」可能性を指摘しています。

 2014年の第103回ILO総会は5月28日に開幕します。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。

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