パートナー

ILO政労使理事



  • 伊原純一 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部 特命全権大使 
  • 郷野晶子 連合 国際顧問
  • 松井博志 経団連 労働法制本部 参事
 

ILO技術協力への日本の支援

1951年のILOへの再加盟以降、日本はしばらくの間、研修参加などを通じてILO技術協力の受益国でした。その後、比較的早い時期から労働省を中心に援助国として技術支援を行ってきました。例を挙げると、専門家派遣、研修生受け入れ、セミナーやワークショップの開催などです。現在、この協力内容は一層充実し、厚生労働省や外務省等の政府機関、労使団体、民間部門、研究機関などが、資金的・人的側面でILOの活動に対して積極的な支援を行っています。

1. 日本政府
 

アジアへの支援


a. ILO / 日本マルチ・バイ事業

1974年にアジア16カ国の女性労働担当官が参加して東京で開催された「アジア地域婦人労働行政セミナー」を皮切りに、日本政府はILOの特定プロジェクトに任意拠出という形で、労働分野(雇用・労使・安全衛生・女性と子ども・人材育成等)における様々な協力を行っています。黎明期である1977年~1986年には安全衛生や労働基準の分野を中心に日本国内でも1~2年のプロジェクトを行っていました。そして1987年以降、海外の地域プロジェクトへの出資が開始され、日本の協力内容は飛躍的に拡大・充実しました。これらの技術協力活動は「ILO /日本マルチ・バイプログラム」と呼ばれ、アジア・太平洋地域の労働分野における諸問題の解決に貢献しています。

2014年度の「ILO /日本マルチ・バイプログラム」では、1) アジアで展開する日系企業のための現地の労働法、規制、慣行等のビジネス基盤の整備、2) モンゴルの若年雇用対策の強化、3) 南アジアで大多数を占める自営業、零細企業などで働くインフォーマルセクターの労働者の適切な労働者保護 が確保された雇用への移行促進、などの事業が実施されます。

b.アジア地域における社会セーフティネット基盤整備支援基金 (SSN Fund)

SSNは総額400万米ドルを超える基金で、アジア地域における社会セーフティネット構築の基盤となる、政府系調査研究機関の能力向上・ネットワーク化支援、労使関係団体の活動支援、民間援助団体の評価・指導・ネットワーク化、災害復旧への支援など、被援助国のニーズに応じた様々な支援を行っています。2013年11月には、フィリピンに襲来して甚大な被害を及ぼしたハイエン台風 (フィリピン名:ヨランダ) 被災地の支援のため50万ドル (約5,000万円) が配分されました。

c.アジア太平洋技能就業能力地域計画(SKILLS-AP) 旧:APSDEP

日本が参加するこのILOの地域プログラムは、アジア太平洋地域における職業訓練に関する専門知識、経験、資材、施設等を相互に活用した職業訓練分野での技術協力を推進し、これらの諸国の職業訓練および技能水準の向上、雇用の拡大、ひいては経済・社会開発の促進を目的とします。元々APSDEP (アジア太平洋技能開発計画) という名で1978年に設立され、セミナーやワークショップ等、様々な形で職業訓練の向上に貢献しており、ILO加盟国から高い評価を得てきました。

d.震災復興/雇用労働分野における教訓発信プロジェクト

「東日本大震災からの復興における雇用労働対策の国際公共財としての発信」技術協力プロジェクトを2012年8月に開始しました。この雇用労働教訓発信プロジェクトは、再建過程で得られた雇用・労働対策に係わる好事例と教訓を収集し、得られた知識を自然災害に対して脆弱な国と共有することを目的としています。2014年2月には日本でシンポジウムが開かれ、プロジェクトの成果である調査レポート「東日本大震災後の復興過程における雇用と生計回復のための取り組み」が報告され、様々な政策、民間企業や団体による復興における取り組みが報告されました。加えて、2013年11月にハイエン台風に襲われたフィリピンから、雇用創出を中心とした復興の取り組みについての発表も行われました。
  • 2014年2月18日のシンポジウム&トークイベント概要についてはこちら
  • 「WORK & LIFE 世界の労働」2014年第2号掲載記事の報告についてはこちら

e. フィリピン/ハイエン台風被災地の統合的な生計回復

2013年11月のハイエン台風により被災したコミュニティをILOは支援しています。日本政府の資金援助による本プロジェクトでは、緊急対応から長期的で持続可能な生計の回復へと移行する復興期に焦点を当て、被災地に新しい仕事を生み出します。既にILOの活動拠点があるタクロバン、オルモック・レイテ州、北部セブ・ネグロスオクシデンタル州、バホール、コロン、パラワンなどの地域で、2万人近くの労働者を支援することを目指しています。被災地の生計回復のために、労働集約型の公共インフラ修復、代替生計手段獲得のための職業技能開発、そして零細・中小企業の再建などの活動を組み合わせた統合的アプローチを用いています。
  • 「日本政府がハイエン台風被災者の生活再建に300万ドルを拠出」(2014年3月13日) 詳しくはこちら
  • 「日本政府代表団 ハイヤン台風被害支援ILOプロジェクトサイトを視察」(2015年5月9日) 詳しくはこちら

アフリカへの支援


f.  ケニアにおける持続可能な開発のための若年雇用&ソマリア帰還難民への着実な支援と持続可能な生計の推進

「ケニアにおける持続可能な開発のための若年雇用」プロジェクトは2012年に日本のNPO道普請人(英語名:CORE、土のうを使った道作りに特化したNPO)と干ばつの被害地域やスラムにおいて実施されました。主な活動内容は、生活道路の整備と実用ビジネス訓練の青年男女への提供、零細・小規模事業の立ち上げによる雇用創出です。このプロジェクトの成功を受け、ケニア道路省ROADS 2000プログラムに土のう・敷石技術が組み込まれるとともに、国内3ヵ所の職業訓練校でも教えられることになりました。
2014年は「ケニアにおける持続可能な開発のための若年雇用」の継続プロジェクト、「ソマリア帰還難民への着実な支援と持続可能な生計の推進」が実施されています。

道普請人(CORE)ケニア事務所のブログはこちら

am 


g. ナイジェリア女子学生集団拉致への対応

2014年4月に発生したイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」による女子学生集団拉致によって直接・間接的に被害を受けたナイジェリア国ボルノ州チボク地区のコミュニティーへの心理社会的ケア支援を行います。日本の緊急無償資金協力を受けて実施される活動では、脱出した少女たちをはじめ、家族、教師たちに心理社会的カウンセリング、HIVカウンセリング・テストを、他の国連機関と連携して提供します。少女たちが再び学校に戻れるようにすることで、コミュニティーにおける児童労働や虐待をなくし、ジェンダー平等を推進します。

外務省の記者発表はこちら

グローバルな支援


h. ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)の派遣


外務省が実施する国際協力の一つで、将来の国際公務員として働くことを目指す日本人の若者を、国連をはじめとするILO等の国際機関に派遣する制度です。派遣費用は日本政府が負担し、ILOに派遣される場合は、ジュネーブ本部や各地のILO事務所で各人の専門に合った業務を担当します。派遣期間は原則2年間です。

i.ILO国際研修センターにおける研修プログラムの開発と実施

2013年よりイタリア・トリノにあるILO国際研修センターにおいて、雇用・社会保障政策に関する日本の知見・経験を活用した研修プログラムを策定・実施しています。開発された研修プログラムはアジア太平洋地域を中心に、各国の雇用・社会保障制度の整備に貢献しています。



2. 国連基金を通じた協力
 


人間の安全保障基金

1998年12月、小渕総理(当時)のハノイにおける政策演説の中で人間の安全保障基金の設立が発表されました。1999年に日本政府が71億円を拠出したのを初めに、2013年までに累計428億円が拠出されました。この基金の目的は、現在の国際社会が直面する貧困・環境破壊・紛争・地雷・難民問題・麻薬・HIV/エイズを含む感染症など、多様な脅威に取り組む国連・国際機関の活動の中に人間の安全保障の考え方を反映させ、実際に人間の生存・生活・尊厳を確保していくことです。
ILOは人身取引防止、児童労働撲滅、紛争防止・平和構築のための生計確保などの分野で基金の拠出を受けています。 
詳しくは -人間の安全保障基金


3. 労使団体による協力
 



 
政労使の三者構成をとるILOでは、技術協力活動においても日本の労働組合と使用者団体から協力を受けています。近年の例を挙げると、日本労働組合総連合会(連合)の資金援助により、1998年から2000年まで児童労働撲滅国際計画(IPEC) への資金協力を受けました。また2004年からは連合とILOによる協働プログラムとして「教育・芸術・メディアを通じた児童の権利支援プロジェクト(SCREAM)」も実施され、2007年までは教育、芸術メディアを通じたこどもの権利支援事業教材のネパール、カンボジア、インドネシア語等への翻訳が行われました。また2008年から2011年までは、インドネシア教員組合の能力強化のプログラムが実施されました。

NTT労働組合もILOの児童労働に関する取り組みに対し、支援を行っています。例として、ILO-IPECプロジェクトの現場へのスタディーツアーや、日本で行われた「児童労働反対世界デー」のイベントに対しての資金協力を行いました。


 


4. 民間による協力 (public-private partnership)
 


ILOは日本の企業や団体からも協力を受けています。


  • アフリカ協同組合リーダー視察研修支援
日本生活協同組合連合会(日本生協連)とILOは2010年より現在まで毎年アフリカの協同組合組織から5名前後のリーダーを日本に招聘し、日本の協同組合運動について学ぶ視察研修事業を実施しています。10日間ほどの滞在の間、リーダーたちは首都圏を中心に生協、農協、労働者協同組合、労働金庫、全労済、大学生協、医療生協など様々な協同組合の現場を視察します。これまでに、エチオピア、ケニア、ルワンダ、南アフリカ、タンザニア、ウガンダの協同組合リーダーが研修に参加しました。帰国後、リーダーたちはそれぞれの国で報告会を開き、日本での経験を活かして新しい協同組合組織の設立、役員や組合員たちの能力強化などに携わっています。


  • 人的支援
日本生活協同組合連合会(日本生協連)は2014年度から2年間の予定で、ILOとの人事交流を行っています。日本生協連本部職員1名がILO本部にある協同組合ユニットで主に協同組合に関する調査研究を行っています。このような日本の民間組織からILOへの人的支援は珍しい取り組みです。



  • 児童労働プロジェクトへの資金援助
2013年のILO報告「児童労働に対する取り組みの進展」の発表と第3回世界児童労働会議の結果を受けて、ILOでは2016年までに最悪の形態の児童労働を撲滅するためのキャンペーン「児童労働にレッドカード」を開始しました。日本でも東京、大阪でイベントが開催され、ILO活動推進日本協議会が「児童労働にレッドカード」ILO活動支援募金を行っています。

2007年にはILOが児童労働撤廃国際計画(IPEC)の一環としてタイ北部で実施していた活動に対し、イオン株式会社(千葉県)から寄付を受けました。この寄付金は、チェンライにおける学校、地域社会での児童労働及び人身取引の危険に関する啓もう活動、児童・若者が地元労働市場に参入することを目的とした教育、訓練、キャリア開発に活用されました。


  • ジャワ島中部地震復興プロジェクトへの寄付
2006年5月にインドネシアのジャワ島中部で発生した地震の復興支援に対して日本生活協同組合連合会医療部会(現在の日本医療福祉生活協同組合連合会)より、会員組織である医療生協を通じて義捐金が集められました。この義捐金をもとに、ILOはシドムリョ村の被災者に対して建築基準に適合した建築関係の技能訓練を提供するとともに、倒壊した医療クリニックを再建しました。