ILOヘルプデスク 強制労働に関するQ&A

質問

  1. 強制労働とは何ですか?
  2. 強制労働を防止するため会社は何ができますか?
  3. 囚人を使用する労働はどのような場合に許されますか?
  4. 盗難を防止するため夜間に労働者を構内に閉じ込めることは許されますか?
  5. 会社が移民労働者の旅券を工場内で預かることは許されますか?
  6. 移民当局により移民労働者の旅券が差し押さえられた場合、当社のサプライヤーがすべきことは何ですか?
  7. 自由貿易圏内で使用者が労働者の旅券を集め、労働者は会社の幹部職員の同伴がないと旅券にアクセスできない状態です。使用者の許しがないと当該国を離れることもできません。このような慣行は国際労働基準に適合していますか?
  8. 労働者が宿舎及び食事の提供を受けるのみであり、現金による報酬をもらっていない場合は強制労働に当たりますか?
  9. 義務的な時間外労働は強制労働に該当しますか?
  10. ILOにおける搾取の定義はどのようなものですか?
  11. 署名のある契約書を持たないで働いている労働者や契約書を持っていてもそこに記載されている言語が読めないために内容を理解できない労働者がいる場合、強制労働に関するILO条約に違反しますか?違反しないように会社は労働者が理解可能な言語に翻訳する義務を負いますか?
  12. 油田採掘足場のような洋上で勤務している労働者についての質問です。

 

 

Q1 強制労働とは何ですか?

A1 強制労働とは、ある者が処罰の脅威の下に強要され、かつ、右の者が自ら任意に申し出たものではない一切の労務ことです(第29号条約2条 参照)。処罰の脅威、自発意思のない状況下で提供される一切の労務、という二つの要件によって特徴付けられています。

Q2 強制労働を防止するため会社は何ができますか?

A2 会社は強制労働撤廃のため以下のような重要な役割を果たすことができます。

  • 旅券、身分証明書及び旅行関係文書を含む関係書類への労働者の自由なアクセスの確保
  • 強制労働防止のための会社の方針を明確かつ透明な形で打ち出すこと
  • 契約労働者を供給する機関を注意深く監視すること

Q3 囚人を使用する労働はどのような場合に許されますか?

A3 第29号条約は囚人を使用する労働にも対処しており、自発意思の要件はこのような労働にも適用されます。囚人を使用する会社は、もし囚人が仕事を拒否しても、権利を喪失させたり、減刑するか否かの素行判断においてこれを不利益に評価するなどの処罰の脅威が働かないよう保障すべきです。自由な労働関係に近い労働条件であるか否かが、囚人に自由意思に基づく同意があるか否かを判断するためのよき指標となります。

Q4 盗難を防止するため夜間に労働者を構内に閉じ込めることは許されますか?

A4 このような行為は労働者の弱い立場につけこみ、移動の自由を制限するものです。脅しや有形力の行使など他の強制手段を伴う場合、このような状況は明らかに労働者の自発的意思や同意を喪失させていると解釈できます。このような他の強制手段を伴わない場合でも労働者を構内に閉じ込めるべきではありません。

Q5 会社が移民労働者の旅券を工場内で預かることは許されますか?

A5 強制労働の定義についてはA1で説明したとおりですが、旅券や身分証明書を預かることは移民労働者に対し強制の要素を生じるさせるおそれがあります。紛失防止のため又は労働者からの要望や同意があるために、労働者の旅券をはじめとする身分証明書を預かることが許される場合もありますが、そのような場合には常に労働者による当該文書へのアクセスが確保されていなければなりません。労働者の当該企業を離れる自由に対する制限にならないようにすべきです。

Q6 移民当局により移民労働者の旅券が差し押さえられた場合、当社のサプライヤーがすべきことは何ですか?

A6 政府による旅券や他の身分証明書の没収も強制の要件を構成します。このため、サプライヤーに対しては、労働者のために当局に対して旅券の返還を求めるよう促すことが考えられ、もし当局がこれを拒否する場合は当該国の労使団体の支援を要請することが考えられます。

Q7 自由貿易圏内で使用者が労働者の旅券を集め、労働者は会社の幹部職員の同伴がないと旅券にアクセスできない状態です。使用者の許しがないと当該国を離れることもできません。このような慣行は国際労働基準に適合していますか?

A7 移民労働者は使用者の許可なくして当該国を離れる権利を有しています(第143 号「劣悪な条件の下にある移住並びに移民労働者の機会及び待遇の均等の促進に関する条約」(参照)前文)。

A4で前記したとおり、労働者の旅券を預かることが許される場合でも常に労働者による当該旅券へのアクセスが確保されていなければなりません。幹部職員の同伴がなければ旅券にアクセスできないという状況は、このアクセスの確保の要件充足に疑問を投げかけています。

ILOは良き慣行として移民労働者のみがアクセスできるプライベートロッカーの設置を推進しています。


Q8 労働者が宿舎及び食事の提供を受けるのみであり、現金による報酬をもらっていない場合は強制労働に当たりますか?

A8 質問の場合がそれ自体で強制労働を構成するわけではありませんが、現物支給方式は労働者の使用者に対する依存を強め、労働者をより弱体化させて、強制労働に陥る危険性をはらんでいます。

Q9 義務的な時間外労働は強制労働に該当しますか?

A9 各国の法制や団体協約によって認められている枠内にある限りは強制労働に該当しません。この枠内を超えた場合は、時間外労働義務の要請と強制労働に対する保護の要請双方を考慮した上で、当該状況を評価することが適切です。

Q10 ILOにおける搾取の定義はどのようなものですか?

A10 ILOは限られた状況下でのみ搾取という用語を用いており、そのような状況とは、潜在的な犠牲者が、違法売買や営利目的の性的利用などの犯罪行為を原因として、又は先住民や移民など多数者とは異なる場所から来たものであることを原因として、特に弱い立場に立たされている場合を意味します。

Q11 署名のある契約書を持たないで働いている労働者や契約書を持っていてもそこに記載されている言語が読めないために内容を理解できない労働者がいる場合、強制労働に関するILO条約に違反しますか?違反しないように会社は労働者が理解可能な言語に翻訳する義務を負いますか?

A11 すべての労働者は自分が容易に理解することができる言語で書かれた契約書を持つべきであり、当該契約書には賃金の支払、時間外労働、身分関係文書の保持及び強制労働防止に関連するその他の事項についての諸権利が明記されている必要があります。

Q12 油田採掘足場のような洋上で勤務している労働者についての質問です。

労働契約は労働期間満了前の職場離脱について何ら規定せずに、洋上に滞在して労働を提供する期間を定めています。当該労働者は労働期間満了前に労働から離脱したいのですが、洋上にいるため物理的に離脱できない状態です。処罰の脅威はなく、当該労働者も自発的にその契約を受け入れている状況ですが、明らかな移動の自由の制約があります。どの範囲でこのような状態はILOの強制労働に関する条約に違反するのでしょうか?

A12 移動の自由の制約の存在は当該労働者の自発的意思について疑問を生じさせることがあります。ただ、このような洋上勤務の場合は合理的な期間について移動を制限する正当事由があります。大切なのは、あらかじめ労働者に契約条件を十分伝え、洋上滞在期間の定めが合理的であることを説明することです。

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