ILOヘルプデスク 団体交渉に関するQ&A

質問

  1. ビジネスにとって、なぜ団体交渉は大切なのでしょうか?
  2. 会社はどのようにして団体交渉権を保護できるのでしょうか?
  3. 団体交渉の推進の原則に関して、会社は団体交渉を尊重する責任を負いますか?また、会社はそのサプライチェーンにおける団体交渉を推進しなければならないのですか?
  4. より成熟した労使関係構築のための指針はありますか?
  5. 団体交渉における誠実交渉義務とはどのようなものですか?
  6. 使用者は、自社の労働者をその構成員とする各労働組合を、団体交渉の相手として認め、交渉しなければならないのでしょうか?
  7. どの主体レベルで団体交渉は行われるべきなのでしょうか?
  8. 賃金は団体交渉の対象になりますか?この問題において多国籍企業の指針となるものは存在しますか。
  9. 会社のリストラや売却に対する労働者代表の関与も団体交渉の対象になりますか?
  10. 団体交渉の対象には、どのようなものがなり得ますか?
  11. 団体交渉においてどのような情報が労働者の代表と共有されるべきですか?
  12. 国際労働基準は、争議権を含んでいますか?
  13. 自分の会社が「不可欠な業務」をしているか否かはどうやって知ればよいのですか?「不可欠な業務」に該当するとすれば、争議権はどうなるのですか?
  14. 会社が解散したり、売却されたり、私有化された場合においても、団体協約に基づく労働組合の諸権利が一定期間有効であるか否かについて規定したILOの条約は存在しますか?

 

 

Q1 ビジネスにとって、なぜ団体交渉は大切なのでしょうか?

A1 団体交渉は、労働条件及び雇用条件、労使関係又は労使団体に関する事柄を改善する建設的な議論の場です。団体交渉は、法規制と比較してより効果的かつ柔軟な手段であり、衝突ではなく対話と双方の合意を通じて物事を解決するため、広く労働者、会社、利害関係者、社会全体にとって有益な結果をもたらします。

 

Q2 会社はどのようにして団体交渉権を保護できるのでしょうか?

A2 会社は様々な段階で以下の行動をとることができます。

 

職場において、

(1)実効的な団体交渉による合意形成を支援するために、給与の減少を伴うことなく組合活動のために業務を離れることを許可するなど、労働者の代表に適切な便宜を与えること

(2)団体交渉を目的として代表的な労働組合を認めること

(3)当該企業の正しい現状が把握できるよう、団体交渉において有用な情報を提供すること

 

団体交渉の場において、

(1)労働組合の代表に対し、団体交渉における実際の意思決定権者へ働きかける機会を与えること

(2)誠実交渉義務の遵守

(3)労働者や使用者の利害にかかわるあらゆる問題をその対象とすること

  

事業所のあるコミュニティーにおいて

(1)特に労働組合の承認及び団体交渉のための適切な制度的及び法律的枠組みのない国においては、労使関係における風土を改善するための対策を講じる。

 

Q3 団体交渉の推進の原則に関して、会社は団体交渉を尊重する責任を負いますか?また、会社はそのサプライチェーンにおける団体交渉を推進しなければならないのですか?

A3 会社は団体交渉権を尊重すべきです(多国籍企業宣言8項、1998年の労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップ)。また、サプライチェーンにおいて団体交渉の権利を認めることは1998年の宣言の実現に寄与します。

 

Q4 より成熟した労使関係構築のための指針はありますか?

A4 多国籍企業宣言は、あらゆる企業にとって成熟した労使関係の発展のための大変有用な枠組みを提供しています。

多国籍企業宣言の労使関係に関する部分は、成熟した労使関係システムの5要素を設定しています。その5要素とは以下のとおりです。

(1)結社の自由等の承認の重要性

(2)団体交渉の推進

(3)協議と意思疎通

(4)苦情を審査し、解決する手続

(5)労使の争いを解決する手続

 

Q5 団体交渉における誠実交渉義務とはどのようなものですか?

A5 誠実交渉義務は、当事者が合意に達するためあらゆる努力を尽くし、実質的で建設的な交渉を行い、不当な遅滞を回避し、結論として得られた合意を尊重し、団体争議について議論を行い解決するための十分な時間を確保することを意味します。

 

Q6 使用者は、自社の労働者をその構成員とする各労働組合を、団体交渉の相手として認め、交渉しなければならないのでしょうか?

A6 確かに、労働者は各企業において複数の労働組合を組織する権利を有します。ただ、この組合結成の自由は直ちに団体交渉主体としての組合の適格性を認めるものではありません。特に複数組合が並存している状況下では、いつ、どのようにして団体交渉主体としての組合の適格性を認めるべきか判断するための、労使関係システムの中で適切に機能する、あらかじめ定められた客観的な基準が必要となります。いくつかの制度では、この適格性は当該会社の従業員たる組合員の比率が一定程度を超えているか否かにより決まります。また、別の制度では、事業場での直接投票や外部の認証機関による認証で決定されます。

 

Q7 どの主体レベルで団体交渉は行われるべきなのでしょうか?

A7 どの主体レベルで団体交渉を行うかは当事者に任されており、企業、部門、産業、国など様々なレベルにおける交渉があります。

 

Q8 賃金は団体交渉の対象になりますか?この問題において多国籍企業の指針となるものは存在しますか。

A8 賃金は対象となり得ます。多国籍企業の指針となるものとしては、多国籍企業宣言があります。

 

Q9 会社のリストラや売却に対する労働者代表の関与も団体交渉の対象になりますか?

A9 団体交渉は、リストラを含め、労働に関する事項や条件を設定するために行うものです。労働者、その雇用条件、その雇用に関する一般事項に影響を及ぼすであろう変化は対象に含まれます。

 

Q10 団体交渉の対象には、どのようなものがなり得ますか?

A10 労働と雇用に関するあらゆる事項と条件が対象となり得、労使団体の間の関係、労使関係も対象となります。何を具体的交渉事項にするかは基本的に交渉当事者間で決定されますが、例外的に政府の経済安定化政策による制限を受けることがあります。

 

Q11 団体交渉においてどのような情報が労働者の代表と共有されるべきですか?

A11 例としては以下のようなものがあります。

 

  • 採用、異動及び退職を含む、一般的雇用条件
  • 当該会社組織における職務内容の記載や各仕事の勤務場所
  • 研修の可能性や昇進の見込み
  • 一般的労働条件
  • 労働安全衛生規制や労働災害予防のための指導
  • 苦情処理や救済のための手続、規則、慣行
  • 健康保険、社員食堂及び住宅などの福利厚生
  • 社会保障等
  • 労働者が従うべき国の社会保障政策に関する規制
  • 労働者に対して直接的又は間接的に影響を及ぼす可能性のある決定に関する説明
  • 労使間協議、議論及び協力の方法

Q12 国際労働基準は、争議権を含んでいますか?

A12 第87号「結社の自由及び団結権の保護に関する条約」上は明文で規定されていませんが、ILO の監視機構は争議権を労働者の基本的権利であるとしばしば述べています。

ただ、法制により、争議実施を問う投票や事前警告、先立つ交渉が必要となるなどの制限や、時期・職種等に関する制限が課されることがあります。

 

Q13 自分の会社が「不可欠な業務」をしているか否かはどうやって知ればよいのですか?「不可欠な業務」に該当するとすれば、争議権はどうなるのですか?

A13 ILOの法体系は、当該業務の休止が全体又は一部の住民の生命又は安全を害する可能性のある業務を「不可欠な業務」と定義しています。病院、電気・水道・電話事業、警察・国防・消防・矯正関係、学校に対する給食・清掃関係事業、航空機の管制業務はこの「不可欠な業務」に該当する可能性があります。何が「不可欠な業務」に当たるのかは当該国の事情や状況に左右されます。

各国政府は「不可欠な業務」について争議を禁止することができます。

 

Q14 会社が解散したり、売却されたり、私有化された場合においても、団体協約に基づく労働組合の諸権利が一定期間有効であるか否かについて規定したILOの条約は存在しますか?

A14 質問の事態について直接規定した国際労働基準は存在しません。しかし、結社の自由や団体交渉に関する法体系は、企業が解散したとしても、特に解散の場合における補償について、団体交渉の結果として生じた義務から企業を解放するものではないと規定しています。また、各国の大半の法制や規制は上記の質問のような場合において労働者の保護を図っています。

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