一般方針 Q&A
一般方針 Q&A
ILO本部HP(英語)は、 》 こちらより
Q1:ILO条約の批准国において、ILOの基準と条約の遵守状況はどのように報告されますか。批准した条約と、すべての加盟国が守る基準の一覧表はありますか。もしあれば、どのようにして入手できますか。加盟国で事業を行う可能性がある各種組織による違反や不遵守は、どのようにして知ることができますか。
Q2:国内労働法に関する情報はどこで入手できますか。
Q3:実際に多国籍企業とは何かを定義するILOの決定、法的拘束力のある文書又は勧告はありますか。企業が多国籍企業として取り扱われるために満たさねばならない条件は何ですか。
Q4:ILO条約の規定への支持を表明する署名はできますか。こうした規定の遵守が入札の条件になっている場合に役立てたいと思っています。
Q5:私は自分の会社で初の行動規範の策定を担当することになりました。他社の行動規範をいくつか読みましたが、その中にはILOに言及しているものがありました。これは問題ないのでしょうか。それとも、最初にILOへの加盟が必要なのでしょうか。
Q6:地方公共団体の入札規定で、落札企業は中核的労働基準を遵守すべきであることが定められている場合、ほとんどの応札企業はこれを遵守していると主張していますが、これはどのようにして検証できますか。
Q7:ある企業は、ILO条約を批准していない国で事業を行っています。同社は現地の法律を守っているため、関連するILO条約、たとえば結社の自由(中国など)又は女性に対する差別(オマーン国など)を遵守していません。同社が政府との対話に関与できないとすれば、どの程度においてILO条約に違反しているとみなされますか。この企業はどうすべきでしょうか。
Q8:ILOの規定にできるだけ忠実で、最も信頼性の高い(認証)基準を選ぼうと思っていますが、何か推奨できるものはありますか。もしなければ、この件について誰に問い合わせたらよいか教えていただけますか。
Q9:ある顧客から、当社は国際労働基準の尊重を約束しているのか、という問い合わせがありました。当社はこれまで、国内の労働法を守っていますが、ILOの条約と勧告はすべて批准され、国内法に取り込まれているのでしょうか。もしそうでなければ、どれが批准されていないのでしょうか。
Q10:労働者を保護する国際基準と、使用者がその履行にどのように参加しているか、これらのルールが全面的に適用されない場合にどのような罰則があるのかについて知りたいと思っています。情報を送っていただくか、参考となる本を紹介してください。
Q11:労働分野における電子情報の管理を規制する国際労働規範はありますか。
A1:ILOの監視機構は、条約勧告適用専門家委員会と基準の適用に関する総会委員会から構成されています。両委員会は現在、優先条約(労働と雇用における基本的原則及び権利に関するもの)につき2年ごと、その他すべての条約につき5年ごとに、批准済み条約の適用状況に関する各国政府の報告書を審査しています。しかし、特に基本条約に関しては、諸般の理由により、政府はより頻繁な報告を要請されることがあります。
批准済み条約の遵守を怠った国は、ILO憲章第24条及び25条に基づく申立や、同第26~29条及び第31~34条に基づく苦情申立手続の対象となることもあります。
特別手続として、加盟国が該当する条約を批准しているか否かにかかわらず、結社の自由侵害に関する苦情申立を審査する結社の自由委員会(CFA)があります。
ご質問に関し、ILOは各国内の関連団体による遵守状況を直接監視することは行っていません。個別の条約を批准している加盟国が、国内法令又は労働協約、及び、労働監督署と裁判所をはじめとする国内労働行政機関を通じ、当該条約の規定を実施するために必要なメカニズムを設けているかどうかに関する報告を行い、これが監視手続の基礎となります。
例えば、1928年の最低賃金決定制度条約(第26号)を批准している加盟国は、三者協議機関を設置しているか否か、最低賃金を設定する際にどのような要因を考慮しているか、最低賃金はどのような頻度で調整されていて、物価上昇率に比例しているか、企業が最低賃金以上の賃金を支払う義務はどの法律で定められているか、労働力のどれだけの割合が最低賃金以上の賃金支払を受けているかについて報告することになります。加盟国は、特定の団体が定められた最低賃金を守っているかどうかに関する報告は行いません。
CFAが受け取る苦情申立には、結社の自由に関する具体的な企業の慣行に関連する申立が含まれることもあります。しかし、このメカニズムは個別の申立に基づいているため、いずれの場合にも、使用者ではなく、政府に対する苦情申立の提出があって初めて審査されることにご注意ください。このことは、ILOの監視機構において、基準と原則の実際の適用を確保する責任を負う当事者が政府であることを示しています。
ILOは、条約別・国別の批准情報データベースと、結社の自由に関する決定のデータベースを運営しています。「ユニバーサル検索フォーム」を使えば、具体的な加盟国の批准済み条約の遵守状況に関する専門家委員会の発言内容をさらに詳しく知ることができます。
国内の関連労働行政機関から、国内労働法違反に関する情報を入手できることもあります。しかし、当該国が関連の国際労働基準を批准していなかったり、遵守していなかったりする場合、これは国際労働基準の遵守状況を必ずしも反映するものではありません。
企業は、その所在地国の現地の使用者団体を通じ、使用者として国内政策決定プロセスへの参加を奨励されることがあるほか、こうした団体を通じ、国内レベルでの労働基準違反に関する懸念を表明することもあります。こうした懸念が国際使用者団体を通じ、国際レベルで取り上げられることもあります。
「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」(多国籍企業宣言)も、ご参照ください。多国籍企業宣言は、企業がILOの条約と勧告に由来する原則をどのように適用すべきかに関する提言を盛り込んだ文書で、拘束力はありません。多国籍企業宣言の目的は、多国籍企業による経済と社会の発展に対する貢献を奨励するとともに、そのさまざまな事業活動によって生じかねない諸困難を最低限に抑え、解決することにあります。多国籍企業宣言は、企業が雇用、訓練、労働条件、生活条件及び労使関係に関する国際労働基準に由来する原則をいかに適用すべきかに関する指針を提供しています。多国籍企業宣言の原則には、本国、受入国の双方で、多国籍企業(公的、半官半民、民間の形態を問わず)、政府及び労使団体に活動の指針を提供する意図があります。
A2:ILOは、国内法データベース「NATLEX」を運営しています。国別・主題別の検索が可能です。
A3:「多国籍企業には、その所有形態が国有であれ、国、民間の両方であれ、また民間であれ、本国外において、生産、流通、サービスその他の施設を所有するか、支配している企業が含まれる。多国籍企業内の他の構成体との関係 におけるそれぞれの構成体の自主性の程度は、当該構成体間の結びつきの性質及び活動分野によって、また、その所有形態、規模並びに当該企業の活動の性質及び立地場所の広範な多様性に関係して企業ごとに大きく異なっている」と規定されています。ILO「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」第6項をご参照ください。
A4:国際労働機関(ILO)に加盟し、その条約を批准できるのは国家だけです。しかし、協同組合のような事業者は、その行動規範や類似の社会的責任への取り組みを含む社会政策で、ILOの文書に言及することができます。ILOは、経済と社会の発展に対する企業の貢献を奨励し、そのさまざまな事業活動により生じかねない諸困難を最低限に抑え、解決することをねらいとする国際文書を採択しました。この「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」(多国籍企業宣言)は雇用、訓練、労働条件、生活条件及び労使関係の分野で、政府や労使団体、企業が自主的に遵守することを推奨される原則を定めています。
A5:国際労働機関(ILO)に加盟できるのは国家だけです。ILOにおいては、各加盟国は三者構成(政府と代表的な国内労使団体)を通じて行動します。個別の企業はILOに加盟することができず、使用者団体を通じて代表されます。企業は、行動規範などの企業の社会的責任(CSR)への取り組みを含む責任ある企業行動に関する方針、あるいは「グローバル枠組み協定」を含む労働組合との二者間協定において、ILOの文書に言及することがあります。
A6:調達実務で労働者の権利尊重の促進を図ろうとする取り組みを歓迎します。同時に、ILOは、雇用の大半が市町村外又は国外で行われているために、労働における基本的原則及び権利(FPRW、中核的労働基準と呼ばれることも多い)が、応札多国籍企業の事業活動でどのように履行されているのかに関する情報を、他の情報源に頼らねばならない場合の課題も認識しています。
いくつか提案できる方法があります。まず、それぞれの地方公共団体でFPRWに対する理解の共有を図る措置を講じることができるでしょう。また、FPRWを確実に尊重するために講じられた措置に関する報告を入札規定に盛り込むこともできます。こうした規定を策定する際には、地方、全国レベルの関連労使団体や、関連の産業別国際労働組合との間で社会対話を行い、FPRWを遵守していると主張する企業に対する監督を強化するために何ができるかに関する見解を求めるという方法もあるでしょう。
また、調達プロセスへのFPRWの適用を約束している他の地方公共団体と連絡を取り、その経験について学ぶこともできるでしょう。さらに、以下のサイトは、地方自治体レベルでの責任ある公共調達に関し、極めて活発に情報を提供しているため、これを参考にすることもできます。
しかし、国内法令が国際労働基準に盛り込まれた原則を尊重するうえで、実質的な障壁となることもあります。法令又はその施行が実質上、国際的な行動規範に反する場合、企業は関連する組織や当局に影響力を行使し、この違反の是正を図ることを検討できます。国内の使用者団体も助けになることがあります。国内使用者団体連盟の一覧は、以下をご覧ください。
企業が変化を促す影響力を行使できず、かつ、国内規範に従わないことで重大な影響が生じる場合には、実際的に可能かつ適切な範囲で、当該国又は地域内での事業活動の方法を見直すという手もあります。
A8:ILOは認証制度を取り扱っていません。しかし、いくつか一般的な指針は提供できます。参考にしていただければ幸いです。
1. 幅広い労働基準に取り組むこと。ILO多国籍企業宣言は、企業が利用できるよう、国際労働基準の根底をなす原則を明らかにしています。参考までに、要約のリンクはこちらです。全文はこちらのリンクからご覧になれます。
2. 国内法を尊重し、労働協約を遵守すること。
3. 社会対話を促進、活用すること。社会対話により、問題と解決策に対する理解を深めることができます。社会対話は、労働者の利益を推進、保護し、持続可能な企業開発を促進する重要な手段となりえます。対話は透明性を高め、労働者の権利の意味と重要性に対する共通の理解を構築することに役立ちます。社会対話には独立した当事者が必要です。つまり、労働者の代表は法律に基づき、又は、当該労働者を代表する労働組合により、干渉なく選ばれなければなりません。
サプライヤーのニーズと制約に対する理解を深めるためには、バイヤーとサプライヤーとの間の協議も重要です。サプライヤーは短い納期や頻繁な、又は土壇場の発注変更、品質向上と納期短縮の一方で、費用削減も求めるバイヤーの期待などによって、圧力に晒されているからです。
4. 発見された問題の是正を支援すること。多国籍企業はサプライヤーの経営陣と労働者の双方に対し、労働者の権利を保護するために必要な是正措置に関する指針と支援を提供する方法を検討すべきです。
5. 公的労働監督制度との調和を図り、その発展を支援すること。企業の社会的責任(CSR)は、有用な貢献となりえますが、ILOには、民間の取り組みが公的労働監督制度に代わることのないようにするという課題があります。民間の取り組みは、労働行政と調和すべきであり、これを損なうようなことはすべきではありません。また、公的機関や国内の労使団体とも協力すべきです。民間の監督制度を作る場合には、公的労働監督制度の管理下に置くべきです。
6. 労働者への影響とサプライヤーにとっての費用を考慮すること。少なくとも現在のやり方では、労働者の権利保護という点での民間の取り組みの効果と効率は疑問であるとする研究結果が増えてきています。労働者にとって大きな持続的便益を見出し難いことも多くあります。
また、費用負担や操業の中断という点で、サプライヤーの負担に関する懸念も高まっています。こうした資源は、労働条件を改善したり、公的労働監督を強化したりするために用いるほうが賢明とも言えるからです。
また、本国と商品製造国の双方で、関連の国内労使団体と協議し、どのような手法や取り組みが最も効果的かに関する見解を話し合うという手もあるでしょう。
最後に、ILOは労働監督に関し、国際レベルの交渉で成立した一連のガイドラインを定めています。このガイドラインは林業部門を対象としていますが、労働者の権利保護についてILOが重要と考える分野がよくわかるだけでなく、公的監督と民間の手法の双方を含め、遵守状況の点検に関する好事例もいくつか示されています。
A9:国際労働基準の適用状況は、ILOの監視機構である条約勧告適用専門家委員会とILO基準の適用に関する総会委員会によって定期的に審査されています。
ある条約を批准した加盟国は、国内法、労働協約又は労働監督署をはじめとする国内労働行政機関を通じ、当該条約の規定を実施するために導入された措置につき、定期的な報告を要求されています。条約別・国別の批准状況一覧表も閲覧できます。
具体的な批准済み協定の規定に対する国内法の整合状況に関する専門家パネルの発言内容についてさらに詳しく知りたい方は、ユニバーサル検索フォームをご利用ください。
「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」も参考にできます。この宣言は、企業がILOの条約と勧告に由来する原則をどのように適用すべきかに関する提言を盛り込んだ文書で、拘束力はありません。宣言の目的は、多国籍企業による経済と社会の発展に対する貢献を奨励するとともに、そのさまざまな事業活動によって生じかねない諸困難を最低限に抑え、解決することにあります。宣言は、企業が雇用、訓練、労働条件、生活条件及び労使関係に関する国際労働基準に由来する原則をいかに適用すべきかに関する指針を提供しています。宣言の原則は、多国籍企業(公的、半官半民、民間の形態を問わず)、本国のほか、受入国の政府と労使団体の指針となります。
A10:国際労働基準は、以下の主題を取り扱っています。
A11:労働分野における電子情報の管理について網羅的に律する国際労働規範はありません。
とはいえ、具体的な事項を規制する国際労働規範の中には、少なくとも間接的に、この問題を取り上げているものがあります。ILO条約勧告適用専門家委員会は「2003年賃金保護に関する総合調査」で、銀行口座への直接的な電子送金又は郵便為替による賃金の支払いは、1949年の賃金保護条約(第95号)と整合するものの、その第5条の遵守が条件となると述べています。
また、1997年の民間職業仲介事業所勧告(第188号)には、以下の勧告が盛り込まれています。
11. 民間職業事業所は、選考の対象となっている又はなり得る求職者の職務への適性を判断するために必要でない個人の情報を書類又は登録簿に記録することを禁止されるべきである。
12(1) 民間職業事業所は、労働者の個人の情報がその収集における目的によって正当化される限りにおいて又は労働者が職を与えられる潜在的な候補者として引き続き登録されることを希望する限りにおいて、労働者の個人の情報を保管すべきである。
(2) 労働者が自動化された若しくは電子化されたシステムにより処理された自己に関するすべての個人の情報又は書類に保存されている自己に関するすべての個人の情報を見ることができるようにすることを確保するための措置をとるべきである。これらの措置には、当該情報の写しを入手し及び調べることについての労働者の権利並びに不正確な又は不完全な情報を削除し又は訂正するよう要求する権利を含むべきである。
(3) 民間職業事業所は、特定の職業に必要とされる事項に直接関連を有しかつ関係のある労働者による明示的な許可を有する場合を除くほか、労働者の健康状態に関する情報を要求し、維持し又は使用すべきではなく、また、職務に対する労働者の適格性を決定するためにそのような情報を使用すべきではない。
2003年の船員の身分証明書条約(改正)(第185号)も、加盟国に対し、一定の情報を電子的に保存するよう要求しています。一例として、同条約第4条第1項には「加盟国は、発給し、停止し又は取り消した船員身分証明書の記録が、電子的なデータベースに保管されることを確保する。妨害又は不正利用から当該データベースを保護するため、必要な措置をとる」旨の規定があります。
ILO本部HP(英語)は、 》 こちらより
Q1:ILO条約の批准国において、ILOの基準と条約の遵守状況はどのように報告されますか。批准した条約と、すべての加盟国が守る基準の一覧表はありますか。もしあれば、どのようにして入手できますか。加盟国で事業を行う可能性がある各種組織による違反や不遵守は、どのようにして知ることができますか。
Q2:国内労働法に関する情報はどこで入手できますか。
Q3:実際に多国籍企業とは何かを定義するILOの決定、法的拘束力のある文書又は勧告はありますか。企業が多国籍企業として取り扱われるために満たさねばならない条件は何ですか。
Q4:ILO条約の規定への支持を表明する署名はできますか。こうした規定の遵守が入札の条件になっている場合に役立てたいと思っています。
Q5:私は自分の会社で初の行動規範の策定を担当することになりました。他社の行動規範をいくつか読みましたが、その中にはILOに言及しているものがありました。これは問題ないのでしょうか。それとも、最初にILOへの加盟が必要なのでしょうか。
Q6:地方公共団体の入札規定で、落札企業は中核的労働基準を遵守すべきであることが定められている場合、ほとんどの応札企業はこれを遵守していると主張していますが、これはどのようにして検証できますか。
Q7:ある企業は、ILO条約を批准していない国で事業を行っています。同社は現地の法律を守っているため、関連するILO条約、たとえば結社の自由(中国など)又は女性に対する差別(オマーン国など)を遵守していません。同社が政府との対話に関与できないとすれば、どの程度においてILO条約に違反しているとみなされますか。この企業はどうすべきでしょうか。
Q8:ILOの規定にできるだけ忠実で、最も信頼性の高い(認証)基準を選ぼうと思っていますが、何か推奨できるものはありますか。もしなければ、この件について誰に問い合わせたらよいか教えていただけますか。
Q9:ある顧客から、当社は国際労働基準の尊重を約束しているのか、という問い合わせがありました。当社はこれまで、国内の労働法を守っていますが、ILOの条約と勧告はすべて批准され、国内法に取り込まれているのでしょうか。もしそうでなければ、どれが批准されていないのでしょうか。
Q10:労働者を保護する国際基準と、使用者がその履行にどのように参加しているか、これらのルールが全面的に適用されない場合にどのような罰則があるのかについて知りたいと思っています。情報を送っていただくか、参考となる本を紹介してください。
Q11:労働分野における電子情報の管理を規制する国際労働規範はありますか。
Q1:ILO条約の批准国において、ILOの基準と条約の遵守状況はどのように報告されますか。批准した条約と、すべての加盟国が守る基準の一覧表はありますか。もしあれば、どのようにして入手できますか。加盟国で事業を行う可能性がある各種組織による違反や不遵守は、どのようにして知ることができますか。
A1:ILOの監視機構は、条約勧告適用専門家委員会と基準の適用に関する総会委員会から構成されています。両委員会は現在、優先条約(労働と雇用における基本的原則及び権利に関するもの)につき2年ごと、その他すべての条約につき5年ごとに、批准済み条約の適用状況に関する各国政府の報告書を審査しています。しかし、特に基本条約に関しては、諸般の理由により、政府はより頻繁な報告を要請されることがあります。
批准済み条約の遵守を怠った国は、ILO憲章第24条及び25条に基づく申立や、同第26~29条及び第31~34条に基づく苦情申立手続の対象となることもあります。
特別手続として、加盟国が該当する条約を批准しているか否かにかかわらず、結社の自由侵害に関する苦情申立を審査する結社の自由委員会(CFA)があります。
ご質問に関し、ILOは各国内の関連団体による遵守状況を直接監視することは行っていません。個別の条約を批准している加盟国が、国内法令又は労働協約、及び、労働監督署と裁判所をはじめとする国内労働行政機関を通じ、当該条約の規定を実施するために必要なメカニズムを設けているかどうかに関する報告を行い、これが監視手続の基礎となります。
例えば、1928年の最低賃金決定制度条約(第26号)を批准している加盟国は、三者協議機関を設置しているか否か、最低賃金を設定する際にどのような要因を考慮しているか、最低賃金はどのような頻度で調整されていて、物価上昇率に比例しているか、企業が最低賃金以上の賃金を支払う義務はどの法律で定められているか、労働力のどれだけの割合が最低賃金以上の賃金支払を受けているかについて報告することになります。加盟国は、特定の団体が定められた最低賃金を守っているかどうかに関する報告は行いません。
CFAが受け取る苦情申立には、結社の自由に関する具体的な企業の慣行に関連する申立が含まれることもあります。しかし、このメカニズムは個別の申立に基づいているため、いずれの場合にも、使用者ではなく、政府に対する苦情申立の提出があって初めて審査されることにご注意ください。このことは、ILOの監視機構において、基準と原則の実際の適用を確保する責任を負う当事者が政府であることを示しています。
ILOは、条約別・国別の批准情報データベースと、結社の自由に関する決定のデータベースを運営しています。「ユニバーサル検索フォーム」を使えば、具体的な加盟国の批准済み条約の遵守状況に関する専門家委員会の発言内容をさらに詳しく知ることができます。
国内の関連労働行政機関から、国内労働法違反に関する情報を入手できることもあります。しかし、当該国が関連の国際労働基準を批准していなかったり、遵守していなかったりする場合、これは国際労働基準の遵守状況を必ずしも反映するものではありません。
企業は、その所在地国の現地の使用者団体を通じ、使用者として国内政策決定プロセスへの参加を奨励されることがあるほか、こうした団体を通じ、国内レベルでの労働基準違反に関する懸念を表明することもあります。こうした懸念が国際使用者団体を通じ、国際レベルで取り上げられることもあります。
「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」(多国籍企業宣言)も、ご参照ください。多国籍企業宣言は、企業がILOの条約と勧告に由来する原則をどのように適用すべきかに関する提言を盛り込んだ文書で、拘束力はありません。多国籍企業宣言の目的は、多国籍企業による経済と社会の発展に対する貢献を奨励するとともに、そのさまざまな事業活動によって生じかねない諸困難を最低限に抑え、解決することにあります。多国籍企業宣言は、企業が雇用、訓練、労働条件、生活条件及び労使関係に関する国際労働基準に由来する原則をいかに適用すべきかに関する指針を提供しています。多国籍企業宣言の原則には、本国、受入国の双方で、多国籍企業(公的、半官半民、民間の形態を問わず)、政府及び労使団体に活動の指針を提供する意図があります。
Q2:国内労働法に関する情報はどこで入手できますか。
A2:ILOは、国内法データベース「NATLEX」を運営しています。国別・主題別の検索が可能です。
Q3:実際に多国籍企業とは何かを定義するILOの決定、法的拘束力のある文書又は勧告はありますか。企業が多国籍企業として取り扱われるために満たさねばならない条件は何ですか。
A3:「多国籍企業には、その所有形態が国有であれ、国、民間の両方であれ、また民間であれ、本国外において、生産、流通、サービスその他の施設を所有するか、支配している企業が含まれる。多国籍企業内の他の構成体との関係 におけるそれぞれの構成体の自主性の程度は、当該構成体間の結びつきの性質及び活動分野によって、また、その所有形態、規模並びに当該企業の活動の性質及び立地場所の広範な多様性に関係して企業ごとに大きく異なっている」と規定されています。ILO「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」第6項をご参照ください。
Q4:ILO条約の規定への支持を表明する署名はできますか。こうした規定の遵守が入札の条件になっている場合に役立てたいと思っています。
A4:国際労働機関(ILO)に加盟し、その条約を批准できるのは国家だけです。しかし、協同組合のような事業者は、その行動規範や類似の社会的責任への取り組みを含む社会政策で、ILOの文書に言及することができます。ILOは、経済と社会の発展に対する企業の貢献を奨励し、そのさまざまな事業活動により生じかねない諸困難を最低限に抑え、解決することをねらいとする国際文書を採択しました。この「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」(多国籍企業宣言)は雇用、訓練、労働条件、生活条件及び労使関係の分野で、政府や労使団体、企業が自主的に遵守することを推奨される原則を定めています。
Q5:私は自分の会社で初の行動規範の策定を担当することになりました。他社の行動規範をいくつか読みましたが、その中にはILOに言及しているものがありました。これは問題ないのでしょうか。それとも、最初にILOへの加盟が必要なのでしょうか。
A5:国際労働機関(ILO)に加盟できるのは国家だけです。ILOにおいては、各加盟国は三者構成(政府と代表的な国内労使団体)を通じて行動します。個別の企業はILOに加盟することができず、使用者団体を通じて代表されます。企業は、行動規範などの企業の社会的責任(CSR)への取り組みを含む責任ある企業行動に関する方針、あるいは「グローバル枠組み協定」を含む労働組合との二者間協定において、ILOの文書に言及することがあります。
Q6:地方公共団体の入札規定で、落札企業は中核的労働基準を遵守すべきであることが定められている場合、ほとんどの応札企業はこれを遵守していると主張していますが、これはどのようにして検証できますか。
A6:調達実務で労働者の権利尊重の促進を図ろうとする取り組みを歓迎します。同時に、ILOは、雇用の大半が市町村外又は国外で行われているために、労働における基本的原則及び権利(FPRW、中核的労働基準と呼ばれることも多い)が、応札多国籍企業の事業活動でどのように履行されているのかに関する情報を、他の情報源に頼らねばならない場合の課題も認識しています。
いくつか提案できる方法があります。まず、それぞれの地方公共団体でFPRWに対する理解の共有を図る措置を講じることができるでしょう。また、FPRWを確実に尊重するために講じられた措置に関する報告を入札規定に盛り込むこともできます。こうした規定を策定する際には、地方、全国レベルの関連労使団体や、関連の産業別国際労働組合との間で社会対話を行い、FPRWを遵守していると主張する企業に対する監督を強化するために何ができるかに関する見解を求めるという方法もあるでしょう。
また、調達プロセスへのFPRWの適用を約束している他の地方公共団体と連絡を取り、その経験について学ぶこともできるでしょう。さらに、以下のサイトは、地方自治体レベルでの責任ある公共調達に関し、極めて活発に情報を提供しているため、これを参考にすることもできます。
Q7:ある企業は、ILO条約を批准していない国で事業を行っています。同社は現地の法律を守っているため、関連するILO条約、たとえば結社の自由(中国など)又は女性に対する差別(オマーン国など)を遵守していません。同社が政府との対話に関与できないとすれば、どの程度においてILO条約に違反しているとみなされますか。この企業はどうすべきでしょうか。
A7:ILO多国籍企業宣言第8項によると、企業は「国家の法令に従い、 地域の慣行を十分考慮し、関係のある国際基準を尊重すべき」です。多くの場合、国内法自体は、国際労働基準と合致していなくとも、実際に企業が国際労働基準と多国籍企業宣言に盛り込まれた原則を守ることを禁じてはいません。例えば、法律で12歳の子どもの雇用を認めていても、企業がその内部方針で、15歳未満の者を雇用しないことを定めることが禁じられるわけではありません。しかし、国内法令が国際労働基準に盛り込まれた原則を尊重するうえで、実質的な障壁となることもあります。法令又はその施行が実質上、国際的な行動規範に反する場合、企業は関連する組織や当局に影響力を行使し、この違反の是正を図ることを検討できます。国内の使用者団体も助けになることがあります。国内使用者団体連盟の一覧は、以下をご覧ください。
企業が変化を促す影響力を行使できず、かつ、国内規範に従わないことで重大な影響が生じる場合には、実際的に可能かつ適切な範囲で、当該国又は地域内での事業活動の方法を見直すという手もあります。
Q8:ILOの規定にできるだけ忠実で、最も信頼性の高い(認証)基準を選ぼうと思っていますが、何か推奨できるものはありますか。もしなければ、この件について誰に問い合わせたらよいか教えていただけますか。
A8:ILOは認証制度を取り扱っていません。しかし、いくつか一般的な指針は提供できます。参考にしていただければ幸いです。
1. 幅広い労働基準に取り組むこと。ILO多国籍企業宣言は、企業が利用できるよう、国際労働基準の根底をなす原則を明らかにしています。参考までに、要約のリンクはこちらです。全文はこちらのリンクからご覧になれます。
2. 国内法を尊重し、労働協約を遵守すること。
3. 社会対話を促進、活用すること。社会対話により、問題と解決策に対する理解を深めることができます。社会対話は、労働者の利益を推進、保護し、持続可能な企業開発を促進する重要な手段となりえます。対話は透明性を高め、労働者の権利の意味と重要性に対する共通の理解を構築することに役立ちます。社会対話には独立した当事者が必要です。つまり、労働者の代表は法律に基づき、又は、当該労働者を代表する労働組合により、干渉なく選ばれなければなりません。
サプライヤーのニーズと制約に対する理解を深めるためには、バイヤーとサプライヤーとの間の協議も重要です。サプライヤーは短い納期や頻繁な、又は土壇場の発注変更、品質向上と納期短縮の一方で、費用削減も求めるバイヤーの期待などによって、圧力に晒されているからです。
4. 発見された問題の是正を支援すること。多国籍企業はサプライヤーの経営陣と労働者の双方に対し、労働者の権利を保護するために必要な是正措置に関する指針と支援を提供する方法を検討すべきです。
5. 公的労働監督制度との調和を図り、その発展を支援すること。企業の社会的責任(CSR)は、有用な貢献となりえますが、ILOには、民間の取り組みが公的労働監督制度に代わることのないようにするという課題があります。民間の取り組みは、労働行政と調和すべきであり、これを損なうようなことはすべきではありません。また、公的機関や国内の労使団体とも協力すべきです。民間の監督制度を作る場合には、公的労働監督制度の管理下に置くべきです。
6. 労働者への影響とサプライヤーにとっての費用を考慮すること。少なくとも現在のやり方では、労働者の権利保護という点での民間の取り組みの効果と効率は疑問であるとする研究結果が増えてきています。労働者にとって大きな持続的便益を見出し難いことも多くあります。
また、費用負担や操業の中断という点で、サプライヤーの負担に関する懸念も高まっています。こうした資源は、労働条件を改善したり、公的労働監督を強化したりするために用いるほうが賢明とも言えるからです。
また、本国と商品製造国の双方で、関連の国内労使団体と協議し、どのような手法や取り組みが最も効果的かに関する見解を話し合うという手もあるでしょう。
最後に、ILOは労働監督に関し、国際レベルの交渉で成立した一連のガイドラインを定めています。このガイドラインは林業部門を対象としていますが、労働者の権利保護についてILOが重要と考える分野がよくわかるだけでなく、公的監督と民間の手法の双方を含め、遵守状況の点検に関する好事例もいくつか示されています。
Q9:ある顧客から、当社は国際労働基準の尊重を約束しているのか、という問い合わせがありました。当社はこれまで、国内の労働法を守っていますが、ILOの条約と勧告はすべて批准され、国内法に取り込まれているのでしょうか。もしそうでなければ、どれが批准されていないのでしょうか。
A9:国際労働基準の適用状況は、ILOの監視機構である条約勧告適用専門家委員会とILO基準の適用に関する総会委員会によって定期的に審査されています。
ある条約を批准した加盟国は、国内法、労働協約又は労働監督署をはじめとする国内労働行政機関を通じ、当該条約の規定を実施するために導入された措置につき、定期的な報告を要求されています。条約別・国別の批准状況一覧表も閲覧できます。
具体的な批准済み協定の規定に対する国内法の整合状況に関する専門家パネルの発言内容についてさらに詳しく知りたい方は、ユニバーサル検索フォームをご利用ください。
「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」も参考にできます。この宣言は、企業がILOの条約と勧告に由来する原則をどのように適用すべきかに関する提言を盛り込んだ文書で、拘束力はありません。宣言の目的は、多国籍企業による経済と社会の発展に対する貢献を奨励するとともに、そのさまざまな事業活動によって生じかねない諸困難を最低限に抑え、解決することにあります。宣言は、企業が雇用、訓練、労働条件、生活条件及び労使関係に関する国際労働基準に由来する原則をいかに適用すべきかに関する指針を提供しています。宣言の原則は、多国籍企業(公的、半官半民、民間の形態を問わず)、本国のほか、受入国の政府と労使団体の指針となります。
Q10:労働者を保護する国際基準と、使用者がその履行にどのように参加しているか、これらのルールが全面的に適用されない場合にどのような罰則があるのかについて知りたいと思っています。情報を送っていただくか、参考となる本を紹介してください。
A10:国際労働基準は、以下の主題を取り扱っています。
- 結社の自由
- 団体交渉
- 強制労働
- 児童労働
- 機会及び待遇の均等
- 三者協議
- 労働行政
- 労働監督
- 雇用政策
- 雇用促進
- オリエンテーションと職業訓練
- 雇用の安定
- 社会政策
- 賃金
- 労働時間
- 労働安全衛生
- 社会保障
- 母性保護
- 移民労働者
- 船員
- 漁業労働者
- 港湾労働者
- 先住民・種族民
- その他特殊な類型の労働者
Q11:労働分野における電子情報の管理を規制する国際労働規範はありますか。
A11:労働分野における電子情報の管理について網羅的に律する国際労働規範はありません。
とはいえ、具体的な事項を規制する国際労働規範の中には、少なくとも間接的に、この問題を取り上げているものがあります。ILO条約勧告適用専門家委員会は「2003年賃金保護に関する総合調査」で、銀行口座への直接的な電子送金又は郵便為替による賃金の支払いは、1949年の賃金保護条約(第95号)と整合するものの、その第5条の遵守が条件となると述べています。
また、1997年の民間職業仲介事業所勧告(第188号)には、以下の勧告が盛り込まれています。
11. 民間職業事業所は、選考の対象となっている又はなり得る求職者の職務への適性を判断するために必要でない個人の情報を書類又は登録簿に記録することを禁止されるべきである。
12(1) 民間職業事業所は、労働者の個人の情報がその収集における目的によって正当化される限りにおいて又は労働者が職を与えられる潜在的な候補者として引き続き登録されることを希望する限りにおいて、労働者の個人の情報を保管すべきである。
(2) 労働者が自動化された若しくは電子化されたシステムにより処理された自己に関するすべての個人の情報又は書類に保存されている自己に関するすべての個人の情報を見ることができるようにすることを確保するための措置をとるべきである。これらの措置には、当該情報の写しを入手し及び調べることについての労働者の権利並びに不正確な又は不完全な情報を削除し又は訂正するよう要求する権利を含むべきである。
(3) 民間職業事業所は、特定の職業に必要とされる事項に直接関連を有しかつ関係のある労働者による明示的な許可を有する場合を除くほか、労働者の健康状態に関する情報を要求し、維持し又は使用すべきではなく、また、職務に対する労働者の適格性を決定するためにそのような情報を使用すべきではない。
2003年の船員の身分証明書条約(改正)(第185号)も、加盟国に対し、一定の情報を電子的に保存するよう要求しています。一例として、同条約第4条第1項には「加盟国は、発給し、停止し又は取り消した船員身分証明書の記録が、電子的なデータベースに保管されることを確保する。妨害又は不正利用から当該データベースを保護するため、必要な措置をとる」旨の規定があります。