仕事の未来世界委員会

人間らしく働きがいのある仕事の未来のために人を中心に据えた政策課題が必要

記者発表 | 2019/01/22
報告書の内容を仕事の未来世界委員会の委員らが2分半で紹介(英語)

 2019年1月22日に発表された仕事の未来世界委員会の報告書は、新技術や気候変動、人口動勢によって仕事の世界にもたらされているかつてない規模の変化が引き起こしている課題を概説した上で、この混乱に地球全体で集団的に対応することを呼びかけています。例えば、人工知能や自動化、ロボット工学は技能の陳腐化をもたらすために雇用喪失につながりますが、新しい機会を捉えられたとしたら、この同じ技術進歩が経済のグリーン化と共に数百万人分の雇用を創出することにもなります。

 報告書は人々の能力、就労に係わる機構、持続可能なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)への投資を基盤とし、人間を中心に据えた政策課題の理念を示しています。そして、◇労働者の基本的な権利を守り、十分な生活賃金を提供し、労働時間を制限し、安全で健康的な職場を提供するようなすべての人に対する労働保障、◇ライフサイクルを通じて人々のニーズを支える、誕生時から老齢期までに至る社会的保護の保障、◇技能習得、再技能習得、技能向上を可能にする、すべての人に開かれた生涯学習資格、◇デジタル労働プラットフォームの国際的な統治の仕組みなどを含むディーセント・ワークを後押しする形での技術変革の管理、◇介護・育児といったケア経済、環境に優しいグリーン経済、農山漁村経済への投資の増大、◇計測可能で変革を起こすような男女平等目標、◇長期投資を奨励する方向に向けた事業奨励措置の再形成などを含む、10項目の提案を行っています。

 スウェーデンのステファン・ロヴェーン首相と南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領が共同委員長を務め、世界各地のビジネスや労働、シンクタンク、学界、政府、非政府組織の第一人者27人で構成された委員会の15カ月間に及ぶ活動の成果物である報告書は、私たちの前途には、勤労生活の質の向上、選択肢の拡大、男女格差の縮小、世界的な不平等によって引き起こされた損害の逆転をもたらす無数の機会が存在するものの、そのどれ一つとして自然に起こるわけではないことを指摘し、「決然とした行動なしには、私たちは今ある不平等と不確実性を拡大するような世界へと夢中歩行してしまうことになろう」と強調しています。委員会には、日本からは慶應義塾の清家篤前塾長が参加しています。

 報告書を発表したラマポーザ大統領は、本書について、「仕事の世界で起こりつつあり、今後も展開し続けるであろう変化についての世界的な理解に対する貴重な貢献」と評し、より公平、公正、包摂的な世界経済と国際社会の確保に向けて、国内外及び地域圏内外における連携と取り組みを刺激すると同時に、人類が歴史の過程で自らに課した課題の抑制または解消に向けた世界的な行動を触発することへの期待を述べました。ロヴェーン首相は、大きな変化が進行中の仕事の世界は、より多くのより良い仕事のための多くの機会を創出することを指摘した上で、より包摂的な経済及び労働市場の形成に向けて、政府、労働組合、使用者が協働する必要性を唱え、そのような社会対話こそが「誰のためにもなるようなグローバル化をもたらす助けになり得る」と説いています。

 報告書はまた、国際的な仕組みの中で「人間を中心に据えた経済」という政策課題の育成・提供において、ILOが果たすべき「唯一無二の役割」に光を当て、早急に報告書が示す提案の実施に注意を払うよう呼びかけています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、報告書が光を当てた論点は「すべての人々、そしてこの地球にとって重要」として、「その実施は困難かもしれないものの、それを無視することは自らを危険にさらすこと」と指摘し、世界中の政府、使用者、労働者の結集を図るというILOに付託された任務は、「この組織が将来的な勤労世代に新たな展望を開く助けになるためのコンパス及び案内人として行動するのにとても適していること」を意味する点に注意を喚起しています。委員会の報告書は事務局長報告として6月に開かれる創立100周年記念第108回ILO総会に提出されます。ライダー事務局長は総会での討議に資するよう国内で十分に討議することを加盟国に呼びかけています。これに応えるものとして、日本では2月1日に報告書の事務局責任者であるデボラ・グリーンフィールドILO政策担当副事務局長及び世界委員会の清家委員が報告書の内容を紹介し、日本の政労使などがパネル討議を行うシンポジウムが開かれます。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。